先ずは好きだと言ってくれ

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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4章【先ずはハッキリさせてくれ】

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 先輩との、初対面。
 俺は確かに、先輩の顔を『カッコいい』と思った。

 しかし俺はこの二ヶ月、セクハラパレードの強制常連客となっていたせいで、忘れていたのだ。

 ──先輩の顔は、やはりカッコいい。そう、俺は最近になって再認識したのだ。

 先輩の研究をしようというつもりではないが、俺は俺なりに考えていた。先輩のことをもう少し理解して、うまく対処できるようになろうと考えて。
 ずっと眺め続けていたら悪いところも沢山見えてきたが、それと同じくらい男としていいところも見えてきてしまったのだ。

 さすが、営業部で高業績をたたき出していただけはある。トークスキルも持っていて、気遣いもできて、顔も良くて、仕事もできて……。こんなステータスを並べられると、相対的にカッコいい。

 俺はいざというとき先輩から逃げられるようにと思い、先輩のことを見ていたはずなのに。……なぜか、気付けばいいところも見つけてしまっていた。

 俺がいくら先輩を苦手だと思っていても、レイプ未遂とセクハラさえ除けば、先輩が魅力的な人なのは事実だ。……まぁだからと言って、それで全てが許されるわけでもないが。

 きっといつか、俺以外にも先輩を好きにならない──先輩にとって【安心できる人】が見つかるはずだ。

 人生は、長い。世界は、広い。俺だけが先輩にとっての【優しい人】じゃないのは、当然だ。
 それでも、先輩にとって今いる【優しい人】は、俺だけで。


「子日君っていつも、なんだか僕に素っ気ないよね? 勿論、そういうところも可愛いけど」


 アラサー男に言うセリフじゃないだろうが。……なんて冷たい言葉も、一日に一回くらいは我慢しようと思った。
 俺は先輩に、言ってしまったのだから。先輩にとっての【優しい奴】でいてやる、と。

 しかし俺は、先輩に対してグッドなのかバッドなのか分からないステータスを付けてしまった。それこそが、さっきから俺が言っている【先輩の顔がいい】という事実だ。

 先輩に笑顔を向けられたり、なんてことない雑談を振られたり、なにかにつけて構われたりすると、俺は……。
 ……腹が、立つ? ように、なった気がする。

 先輩になにかされると、それら全部に腹が立つから話しかけないでほしいと思う。モヤモヤして、ムカムカして、あまり長く話しかけられると頭の中が爆発しそうだ。

 先輩と出会い、なんだかんだと観察し続けて、二ヶ月。俺は自分自身に起こっている変化にも、気付いてしまった。

 他人に深い関心を持てなかったはずの俺は、先輩に対して今まで出会ってきた人とは少しだけ違う関心を、微弱ながら持ってしまったらしい。

 ……自分で言うのもなんだが、俺は結構冷静な男だ。自分自身のことを分析するのは、わりと得意だったりする。
 そして俺は、わりと素直なつもりだ。薄いにしても、先輩に関心を抱いていることを認めている。これこそ、俺が素直だという証拠だ。ご査収しろください。

 とどのつまり……そういう変化に俺は気付いているし、きちんと受け止めてもいるのだ。
 まぁこの変化は、自分でも驚愕だが。




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