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後日談【一般的とはほど遠い享楽的な休日】
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しおりを挟むとある、土曜日。
松葉瀬陸真のもとに、メッセージが送られてきた。
一通のメッセージに対し、一度だけ『ブーッ』と震えるスマートフォン。
松葉瀬はベッドの上で寝返りを打ち、その音を無視した。
……しかし。
──突如として、スマートフォンが『ブブブッ!』と何度も震え始めた。
「……クソ、が……ッ」
依然として震え続けるスマートフォンに、松葉瀬は手探り状態で手を伸ばす。
そのままスマートフォンを掴み、画面を見た。
するとまるで『待っていました』と言わんばかりに、振動が治まる。
断続的に送られてきた、大量のメッセージ。
松葉瀬は眉を寄せたまま、不愉快そうにスマートフォンの画面を睨み付けた。
……差出人はお察しの通り、一人の後輩だ。
『センパイ!』
『センパイ、もしかして寝ているんですか?』
『もうお昼なのにまだ寝てるとか、バブちゃんですか?』
『まぁバブちゃんの方が早起きですよね』
『よっ、バブちゃん未満の成人男子~!』
『ちなみに今なら、ボクという可愛い恋人がオギャらせてあげなくもないですよ?』
『あっ、想像するだけで鳥肌ものなのでヤッパリ今のはナシで』
『ナシナシのナシです』
『ところで、センパイ』
『寝ているのでしたら、家にいるということですよね』
『スーパーあまあま恋人出張サービスしましょうか』
『センパイがどうしてもって泣いて縋るなら、考えてあげなくもないですよ?』
『仕方なく、あくまでも仕方なく』
『おうちに行ってあげてもいいですけど?』
『あ~あ、ボクって健気で可愛い後輩系恋人だな~!』
「──アイツ、暇なのか?」
メッセージを一通り読むと同時に、松葉瀬は思わず感想を呟いた。
差出人──矢車菊臣からのメッセージによる通知音で、松葉瀬は不愉快な寝覚めを遂げたばかり。
休日は昼を過ぎるまで起きないというスタンスの松葉瀬からすると、この状況は不愉快以外のなにものでもないのだ。
松葉瀬はスマートフォンを睨んだまま、毛布の中で身じろぐ。
しかし、メッセージに既読をつけると同時に、矢車からの通知攻撃はピタリと止んだ。
はた迷惑な奴だと思いつつ、松葉瀬はメッセージを無視しようとした。なぜならまだ、松葉瀬の起床時間より一時間以上早いのだ。
……だが。
「……可愛くねェ」
メッセージの内容と、突然止まった通知。
それらを総合すると、松葉瀬は矢車の考えが薄らぼんやりと分かってしまった。
序盤の茶化しは、メッセージを突然送ったことに対する違和感と勘繰りを避けるためのジャブ。
本題に入った途端、文章の系統が若干変わったのは気恥ずかしさから。
後半の締め方は、照れくささを誤魔化すための揶揄い。
既読をつけた途端にメッセージがこなくなったのは、松葉瀬が『見た』という事実に対する逃げ。
……それら全てが分かってしまったことにより、矢車のメッセージはとても恥ずかしい恋文に変わった。
松葉瀬はスマートフォンをタシタシと叩き、返信をする。
『素直に会いたいって言ったら、来させてやる』
すると、思いのほか返事は早かった。
『別にセンパイなんかに会いたいなんて微塵も思ってないです!』
『勘違いもそこまでいくと滑稽ですよ!』
『センパイ、すっごく恥ずかしい~!』
『その自意識過剰精神、ちょっとは夢の国に置いてきた方がいいんじゃないですか~?』
「──ウゼェ……ッ」
こうなると、矢車は意地でも本心を語らない。
松葉瀬は最悪な寝覚めと面倒な応酬に、不愉快さを多大に募らせた。
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