私の守護霊さん

Masa&G

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第24話 学園祭・お化け屋敷編③

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薄暗い入口の前で、スタッフがぼそりと呟いた。

「けっして走らないでください。」

「ウイルス感染者は音に敏感ですから……」

「は……はい……」

「では……生還を祈ります。くれぐれも、彼らの仲間にならないように……」

その言葉を最後に、背後の扉が閉められる。

バタン!

「ひっ!?」

通路に残されたのは、重たい沈黙と、薄く漂う消毒液の匂いだけだった。

「……」

「しゅ、守護霊さん……私から離れないでね……」

こくり。

静かにうなづく守護霊さん。

二人は息を殺し、ゆっくりと通路を進んでいく。
足音がやけに大きく響く気がして、彩音は無意識に肩をすくめた。

少し先――

壁際に、うずくまっている女性の姿が見える。

(普通の格好だ……)

(もしかして、こわくて動けなくなっちゃったのかな……)

恐る恐る近づく。

「あの……大丈夫ですか?」

座り込んだ女性が、かすれた声で呟く。

「顔が……」

「顔?」

「……てるの……」

「え……?」

女性が、ゆっくりと立ち上がる。

「顔が……崩れてるのぉぉ!!」

バッと振り返った瞬間――

半分溶けた顔。血にまみれ、歪んだ口元。

「!?」

「ぎゃあぁぁぁ!」

彩音の悲鳴が、通路に反響する。

「!!?」

その声に、守護霊さんもびくっと肩を跳ねさせた。

「その顔ちょうだい……私に……ちょうだいぃぃ!」

感染者が、ずるずると迫ってくる。

壁際まで追い詰められ、互いの顔の距離は、わずか三十センチ。

「むりむりむりむり!!」

「近い近いぃぃ!」

その瞬間――
ぐちゅり、と嫌な音がした。

「ひっ……!」

感染者の顔から、片方の目がぽろりと落ちる。
床に転がったそれが、薄暗い照明に照らされて光った。

「目が……」

感染者は自分の顔に手を当てる。

「私の目がぁぁぁ……!」

顔を押さえ、その場に崩れ落ち、再びうずくまる感染者。

その隙に、守護霊さんが奥へ手招きをする。
彩音はその脇をすり抜け、必死に通路の奥へ逃げた。

「はぁ……はぁ……これは……無理だ……」

「守護霊さんはこわくないの?」

こくり。

「すごいね……」

歩き出した先に、扉が見えてくる。

(……絶対、開けたら出てくるんだ……)

警戒しながら進む二人。

――うぉぉ……

「え……? 何?」

振り返ると、背後に二体の感染者。

「ひぃぃぃ……!」

彩音たちは扉に飛びつく。

ガチャガチャ!

「な、なんで閉まってんのこれ!」

扉にはダイヤル式のロック。

ぐぉぉ……

う……が……がが……

感染者たちが、じりじりと距離を詰めてくる。

「くるくるくるー!」

力任せに回すが、開かない。

そのとき――

守護霊さんが、扉の脇の張り紙に気づいた。

「三桁の数字でロック解除」

部屋番号は301。

必死に彩音へ伝えようとするが、彩音は完全にパニック状態。

守護霊さんは彩音の前に回り込み、指で数字を作る。

「3」
「0」
「1」

「な、何してんの!? 来るよ!」

そして――

守護霊さんが、感染者の前へ立ち出た。

両手を広げ、間に立つ。
身をていして、彩音を守るように。

「守護霊さん……」

(冷静になるんだ……彩音……考えろ……)

守護霊さんの目の前まで、感染者が迫る。
目を閉じ、覚悟をした――その瞬間。

するり。

感染者たちは、守護霊さんの身体をすり抜けていった。

「……」

「!? むりむりむりむり!」

ガチャン! ガチャン!

守護霊さんは走って彩音のもとへ戻り、再び指で数字を示す。

「3」「0」「1」

「うぇぇ……くるよぉ……しんじゃうよぉ……」

何度も、何度も指で伝える。

「……? さん、ぜろ、いち?」

こくこく!

「あ!」

彩音がダイヤルを合わせる。

カチッ。

鍵が外れた。

同時に、感染者たちがスピードを上げる。

「やばいやばいやばい!」

扉を開け、飛び込み、勢いよく閉めた。

ドン!……ドンドン!

扉の向こうで、感染者が叩き続ける音。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

彩音はその場にへたり込んだ。

「何これ……これ……学祭だよね……」
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