朝から晩まで癒して

マール

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始まりは神殿と神様と

横たわること

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 気がつけば、暗い世界にいた。

 息苦しくて浅く息をする。


 周囲がゴトゴトうるさくて、音に合わせて身体も跳ねる。生臭くて柔らかかったり硬かったりする凸凹がある場所に横たわっているようだ。

 (どこだろ。神官様はどこ?)
 正確じゃない言葉を思い浮かべてボクは反射的に首を竦めた。叱られる。ぎゅっと目を瞑る。

 次に来る小さな衝撃はなかった。代わりに全身を叩きつけられる。
 
 辛うじて吸っていた息が止まった。



 いつの間にかうるさい音がなくなり、ボクはボクの入っている布袋を上から見詰めていた。



(どう言うことなの?)
ぬしは死んだのよ』

 聞いたことのないとろりとした声が耳元でした。

『まさか、こんなに早く返品ころされるとは思わなんだよ』


 ボクは声の方へ顔を向けた。そこには浅葱色した人型の光が浮いていた。くつくつと笑う気配を感じる。


(誰っ)
『私はカイムと言う。お前の国の守護神だった神霊モノだよ。して、お前の名は?』
(ボクはミコサマ)
 浅黄色の光が明滅する。不機嫌なようだった。

『名も貰えなかったとみえる……』
 浅葱色の光は丸まって、ふわんと揺れてボクの周りを一、二周した。

『お前を人形のままにしておきたくはないのよ。このままでは創った意味がないでな。これからお前はどうしたいんだい?』
(ボクは温まりたい。寒いんだ。ずっと……)
 無意識に自分の体を抱きしめる。いつもの冷たい指の感触にふるりと体が震えた。


『他に欲はないのかい?』
(分からない。だって、ボクは自分で決めたことないもの)

 浅黄色の光は明滅して、ボクの顔を覗き込んだようだった。
『そいつは難儀だね』




 どうにも長い時間が過ぎたような気がした。
 浅黄色の光は沈黙している。
 ボクは辺りを見回す余裕が出てきた。
 ここは鬱蒼とした森の中で、大きな穴が開いている。穴の中には、ぐちゃぐちゃした生臭いものや堅いもので溢れている。崩れた沢山のものの中でボクの入っている布袋だけがほの白く光っているように存在を主張していた。



 木に縄を掛け、穴に入る人影がある。穴の中で何かを探しては背負い籠の中へ入れていく。なんだろう。



『荒治療といくかな。不本意だが、あれに世界を見せてもらっておいでよ。行った先でお前が温められることを祈っているよ』
 浅黄色の光はそう言いながら、ボクを布袋に押し込めた。





 再び感じる生臭さと息苦しさに身動ぎした。
 ボクの喉からボクじゃないような言葉が出た。

「たすけて……」







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