朝から晩まで癒して

マール

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事の起こりは冒険者と

手にする

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 男は焦っていた。冒険者ギルドの看板を前に唾を飲み込むと子供くらいの大きさの荷物を肩に担ぎ直した。
 急ぎカウンターへ向かう。

「見てもらいたいもんがあるんだが」
 ちらりと荷物を見せる。受付係が悲鳴を上げかけ、慌てた男は相手の口を叩くように手のひらを押しつけた。
「人攫いじゃねぇ。愛玩人形ゴーレムだ」
「本当ですか?」
「これの事でギルド長に相談してぇんだ」
「分かりました」
 勢い2人とも小声になった。

 そこに気配もなく肩を叩かれる。2人の体が小さく跳ねた。

「何やらお困り事ですか」
 現れたのは、ギルドマスター補佐の長身の優男だった。

「驚かせてすまない。私はギルド長補佐ルトッテ・モコマーだ。生憎ギルドマスターは留守だ。代わりに話を聞こう」

 ルトッテが男を小部屋に案内した。

 
「C級のアニィークだ」
 挨拶代わりに互いの右手の甲を2回打ち合わせるも、早々に男はルトッテに頭を下げた。

「こいつを引き取ってくれ。ゴミ溜めで拾ったんだ」

 ソファに横たえた人形もどきを指差した。ルトッテは一瞬見開いた目を眇めて観察する。
「触っても?」
「好きにしてくれ」



 ルトッテが愛玩人形もどきを調べ始めた。体の特徴や傷はないか、髪の毛を掻き分け登録番号の有無をみる。口を開けさせ舌を確認し、最後に瞳孔を確かめる。

「生きているのか……」

 注意深く観察すると微かに上下する胸に気付く。体は冷たく人形のようになすがままだった。

「この事を知っているのは」
「俺だけだ」
 相手の鋭い問い掛けに男が青褪めた。

 ルトッテは落ち着かせるように穏やかに笑むと男の肩に手を置いた。

「私が引き取ろう。君は心配しなくていい。人形の情報料は50万Gでいいか」

 ルトッテが机から出した紙に何やら書いて男に手渡す。50万Gと書かれた紙にがやけに重く感じた。3ヶ月分の稼ぎだ。男は素直に得したと口笛を吹きたくなったがお偉いさんの前に自重した。

「じゃあよ。置いてくな」
 そう男は荷物を置いてさっさと逃げ出した。引き取ると言ったルトッテの目を思い返して身震いする。口止め料が暴力にならない内に男は酒場に繰り出したのだった。







 乱暴な音を立てて戸を閉められた。
 室内には、ソファに少年型人形とギルド長補佐のルトッテが残された。

 ルトッテは下位冒険者の人形を衝動的に欲しいと思った。しかし、その事を表にしないよう必要以上に事務的に処理したのだった。






「呪われた人間か、禁呪人形ホムンクルスか」

 ルトッテは静かに眠る人形のような少年の頬をゆるりと撫でた。

 
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