朝から晩まで癒して

マール

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指名クエスト: to マジェンタ

ことの始まり

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 事はルトッテが少年を預かる7日前に遡る。

 その日、ヨンシヨンの冒険者ギルドは慌ただしかった。ヨンシヨンの西側のゴミ捨て穴から凶暴な魔物が現れたからだ。そこは王都の城壁に近い。


 瓦礫や汚物に塗れた遮蔽物の影で、ヨンシヨンのギルド長マスターマジェンタとその補佐サブルトッテは頭を寄せていた。足元で逃げてきたスライムがブルブル震えている。殺傷能力のないゴミ漁りスライムだ。食べた物の属性で薄ら色に染まっている。

「ルトッテ君、状況は?」
「ジェンか。今はタンクが頑張っている。種族は不明。物理攻撃は奴の体毛に弾かれる。脇の可動部が柔らかく弱点になるだろう。私も整ったらタンクに入る」

 マジェンタが腰から小瓶を出すとルトッテが中身を確認せずに飲み込む。体力回復のポーションだ。説明もなく立て続けに2本飲む。

「ルトッテ君。鑑定するよ。


 ジャッジ鑑定

 種族: 闇属モザイク
 ランク: A+
 物理攻撃無効
 状態: 遊びたい」

「遊びたい? ふざけてる。なんです、それは」

「……たちが悪い」

 苛立つルトッテにマジェンタが嫌そうにボソリと呟くと足元のスライムを掬い上げた。なにを遊んでいるんだと、ルトッテはマジェンタの手元に胡乱な目を向ける。彼は両手でスライムを掴んでいる。掌に防護魔法を掛けているのか、スライムに融かされることなく潰したり伸ばしたりしている。

「スライムなんかで遊ぶな。そんなもの捨て置きなさい」
「ルトッテ君、魔石の採り方を知っているかい」

 マジェンタはスライムの体に手を入れて、細胞核のような物を掴んだ。

「核をね。素手で直接引き剥がすんだよ。ちょっとグロいけどね」

 そして、そのままスライムから引っこ抜く。核を抜かれたスライムは形を保てずにドロリとした水になった。

「タンクよろしく」
「任されました」

 二人はランクA+の魔物に向き合った。

「全員下がれーー。マスターと私が出る」

 ルトッテの号令と共に冒険者達は魔物から離れた。

     


 マジェンタは深呼吸しながら闇属モザイクを睨みつける。スゥっと血の気が引いて、体中の魔力がさざなみあって落ち着かない。

「物理攻撃が無理なら魔力を引っこ抜く。
 ルトッテ君、魔力は濃い場所から薄い場所へ流れる。シールドしない限り、法則は崩れない。そして、魔力のない生き物はいない」

 だからね、とマジェンタは手の中の細胞核を振りかぶって闇属モザイクに投げつけた。すかさずルトッテが魔物とマジェンタの間に体を滑らせる。剛毛の腕を大剣で弾く。マジェンタがスライムを いじり、抜いた細胞核を投げつける。弱い魔物の核へ強い魔物の魔力が注がれる。魔力を失うほどに闇属モザイクが吠え、体を震わせ身を捩る。腕を振り回しぶつけられる細胞核を払いのける。

「ガード:アクセレイション:パワアプ:トゥルトッテ」

 マジェンタがルトッテに防御加速威力倍増の魔法をかける。


 ルトッテが雄叫びをあげて魔物の気を引き、マジェンタが容赦なく細胞核で魔力を吸い取る。


 やがて、闇属モザイクの魔物は沈黙した。

 残ったのは50を超える魔石の山だった。










 ギルドの馬車が王宮の門を潜った。
 
 何度来ても慣れないな、と。マジェンタはため息をついた。王都に近いゴミ捨て穴に発生した魔物について報告しに王都に上がったのだった。



「報告書に相違はないか」

 王宮内にある接見室に静謐な雰囲気の騎士が王都近郊のゴミ穴の始末をマジェンタから聴き取っていた。


「相違ございません。ゴミ穴の魔物討ち取ってあります。王都に侵入する事はありません」

「ご苦労だった。王から褒美がある。帰りに財務管理室に寄ってくれ」

 マジェンタは恭しく頭を下げた。
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