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第三十六話 笑って作ったゲーム
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時間:半年後
場所:世界ゲーム大賞 TGA(The Game Awards)授賞式会場
ロサンゼルスの眩いスポットライトの下、巨大スクリーンには『幻星神域』のPVが流れていた。
天野愛チームが手がけた圧倒的なクオリティのカットシーン。
高橋拓海が磨き上げた、キレ味抜群で滑らかなバトル。
佐藤健が描き上げた、壮大な東洋世界のビジョン。
すべてが重なり合い、会場は総立ちの歓声に包まれた。
司会者が高らかに叫ぶ。
「今年のゲーム・オブ・ザ・イヤーは――『幻星神域』です!」
澄原龍立と劉立は、客席で静かに拍手を送っていた。
ステージ上では、佐藤健と、すっかり健康を取り戻した高橋拓海がトロフィーを受け取り、涙でぐしゃぐしゃになっている。
マイクを握った高橋の手は、まだ震えていた。
「ゲームを作り始めて十年……
初めて、“夜が明ける前に仕事が終わった”日々を過ごしました」
「初めて――“ゲーム作りって、楽しいんだ”って思えました」
その時、世界中のスクリーンで、エンドクレジットが流れ始めた。
それは、ゲーム史に残る名シーンとなる。
業界の慣例では、スタッフロールの最初のページに来るのは、たいていプロデューサー、社長、ディレクターといった肩書を持つ人間だ。
だが『幻星神域』のスタッフロールの一ページ目を飾っていたのは――
・ジュニアレベルデザイナー:田中 太郎
・物理エンジンテスター:鈴木 花子
・背景モデラー:山本 健太
・UI/UXデザイナー:田村 誠
……
本来なら最後尾か、場合によっては名前すら載せてもらえないような現場のスタッフたちの名前が、いちばん目立つ場所に、いちばん大きなフォントで表示されていた。
さらに、一人ひとりの名前の後ろには、丁寧なコメントが添えられている。
・「田中は、プレイヤーを泣かせた“あの雨の夜のクエスト”のレベルデザインを担当しました」
・「山本は、主人公のマントが戦闘中に翻る物理表現を作り上げました」
ライブ配信のコメント欄は、一瞬で炎上……いや、歓喜で沸騰した。
「嘘だろ! テスターがトップに来るスタッフロールなんて初めて見た!」
「マントの揺れを作った人、マジでありがとう。あれ何回も見とれたわ」
「これが本物の“クリエイターへのリスペクト”ってやつだな。GIGA、見直した!」
クレジットの、いちばん最後になってようやく、「プロデューサー:劉 立」「エグゼクティブプロデューサー:澄原 龍立」という二つの名前が現れる。
スクリーンには、最後に一行のメッセージが浮かび上がった。
【偉大なゲームは、トロフィーの持ち主ひとりのものではない。
プレイヤーの視点で細部を磨き続けた、すべての魂に属するものである。】
――打ち上げ会場。
佐藤健は、画面いっぱいに溢れる好意的なレビューを見ながら、子どものように声をあげて泣いていた。
劉立はシャンパンを片手に、優雅な足取りで澄原龍立の隣に近づき、グラスを軽くぶつける。
「澄原さん、ほら、見てください」
彼は、抱き合いながら泣き崩れるプログラマーやプランナーたちを指さした。
「これですよ。あなたの言った――
“笑いながらゲームを作れる開発者だけが、プレイヤーを笑顔にできるゲームを作れる”ってやつは」
龍立は、窓の外の夜景を眺めながら、胸の底から満ちる充足感を噛みしめていた。
「ああ」
龍立は微笑み、静かに頷く。
「バグを直しただけじゃない。
この業界の“良心”も、一緒にパッチを当てられたみたいだな」
場所:世界ゲーム大賞 TGA(The Game Awards)授賞式会場
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すべてが重なり合い、会場は総立ちの歓声に包まれた。
司会者が高らかに叫ぶ。
「今年のゲーム・オブ・ザ・イヤーは――『幻星神域』です!」
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マイクを握った高橋の手は、まだ震えていた。
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業界の慣例では、スタッフロールの最初のページに来るのは、たいていプロデューサー、社長、ディレクターといった肩書を持つ人間だ。
だが『幻星神域』のスタッフロールの一ページ目を飾っていたのは――
・ジュニアレベルデザイナー:田中 太郎
・物理エンジンテスター:鈴木 花子
・背景モデラー:山本 健太
・UI/UXデザイナー:田村 誠
……
本来なら最後尾か、場合によっては名前すら載せてもらえないような現場のスタッフたちの名前が、いちばん目立つ場所に、いちばん大きなフォントで表示されていた。
さらに、一人ひとりの名前の後ろには、丁寧なコメントが添えられている。
・「田中は、プレイヤーを泣かせた“あの雨の夜のクエスト”のレベルデザインを担当しました」
・「山本は、主人公のマントが戦闘中に翻る物理表現を作り上げました」
ライブ配信のコメント欄は、一瞬で炎上……いや、歓喜で沸騰した。
「嘘だろ! テスターがトップに来るスタッフロールなんて初めて見た!」
「マントの揺れを作った人、マジでありがとう。あれ何回も見とれたわ」
「これが本物の“クリエイターへのリスペクト”ってやつだな。GIGA、見直した!」
クレジットの、いちばん最後になってようやく、「プロデューサー:劉 立」「エグゼクティブプロデューサー:澄原 龍立」という二つの名前が現れる。
スクリーンには、最後に一行のメッセージが浮かび上がった。
【偉大なゲームは、トロフィーの持ち主ひとりのものではない。
プレイヤーの視点で細部を磨き続けた、すべての魂に属するものである。】
――打ち上げ会場。
佐藤健は、画面いっぱいに溢れる好意的なレビューを見ながら、子どものように声をあげて泣いていた。
劉立はシャンパンを片手に、優雅な足取りで澄原龍立の隣に近づき、グラスを軽くぶつける。
「澄原さん、ほら、見てください」
彼は、抱き合いながら泣き崩れるプログラマーやプランナーたちを指さした。
「これですよ。あなたの言った――
“笑いながらゲームを作れる開発者だけが、プレイヤーを笑顔にできるゲームを作れる”ってやつは」
龍立は、窓の外の夜景を眺めながら、胸の底から満ちる充足感を噛みしめていた。
「ああ」
龍立は微笑み、静かに頷く。
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