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第五十二話 正義の獣
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時:開廷日 & 生放送の夜
所:東京地方裁判所 & 澄心衛視スタジオ
午後・法廷
空気が刃物のように冷たい。
相手方弁護団は完璧なスーツで揃え、録音データを突きつけた。
「これが、浅見玲奈が口止め料を要求した録音です。」
三上は相変わらずアロハシャツ。ネクタイすらない。
チンピラのように揺ら揺らと証人席へ歩いていく。
「異議あり。——その音声は合成だ。」
三上は一枚の資料を叩きつけた。
GIGA互娯(ごが)音声ラボの解析報告。
「13秒地点に声紋の周波数断層。AIで繋いでる。技術が雑だな。……海賊版ソフトでも使ったか?」
次の瞬間、三上は買収された“村人”証人に、ぐっと距離を詰めた。
「俺の目を見ろ。」
「化学工場からいくら貰った?500万か?1000万か?」
「お前の偽証で、村の子どもたちは救われなくなる。それでも“正しい”つもりか?!」
かつて特捜のエース検事だった圧が、爆発する。
証人の防壁が崩れた。
「……ち、違う……!金なんて……!……いや、貰った!でも、脅されたんだ!俺だって、村の子どもを殺したくない……!」
法廷がどよめく。
三上は振り返り、龍立にVサインを返した。
夜・スタジオ
裁判は反転した。
それでも阿久津は往生際悪く、汗だくで言い逃れる。
「ち、違う……証人が買収されてるんだ!俺の記事は事実に基づいて……!」
龍立は阿久津の正面に座り、静かにリモコンを押した。
「阿久津. まだ局勢が見えていないのか。」
大型モニターが点灯する。
映ったのは録画ではない。——現地生中継。
画面の向こうは、汚染された村。
数百人の村民が横断幕を掲げ、そして——
頭を剃った白血病の子どもたちが、泣きながら工場の罪を訴えていた。
「これが、お前の言う“恐喝”か?」
龍立は子どもたちを指し、雷鳴のように言い放つ。
「これが、お前が筆で隠そうとした“命”か?!」
阿久津は崩れた。
全てが終わったと理解し、狂ったように龍立へ飛びかかる。
「嵌めやがったな!殺してやる!」
待ち構えていた警官隊がスタジオへ突入し、
“世論の皇帝”に手錠がかけられる。
全国放送、視聴率は65%を突破。
深夜・屋上
新しい看板——【澄心衛視】が夜に輝く。
浅見玲奈は取り戻した記者証を抱え、冷たい風の中で立っていた。
龍立を見て、膝から崩れ落ち、声にならない嗚咽を漏らす。
「社長……ありがとうございます……あなたがいなければ、私は……もう死んでいました……」
震える手で、玲奈は一枚の手書き原稿を差し出す。
阿久津の罪を暴く、独占記事——再生の第一稿。
「これが、記者としての……生まれ直しの一本目です。読んでください。」
龍立は彼女を立たせ、首を振った。
「それは俺に出すものじゃない。」
「出せ。世界に——お前の声を聞かせろ。」
隣で三上が手すりにもたれ、火の点いていないライターを弄んでいた。
「社長、知ってますか。検事だった頃、事件が片付くたびに、これで煙草を点けて祝ってた。」
「嵌められた日、俺はこれを捨てた。」
三上は新品のライターを取り出し、
“パチン”と火をつけ、深く吸い込む。
目に、久しくなかった光が戻る。
「今日、また拾い直しました。」
三上は向き直り、龍立へ深く頭を下げた。
いついつもの軽口はない。死のように重い真顔だけがある。
「龍立さん。俺の命は、あなたに売ります。」
「必要なら——地獄の裁判だって、勝たせます。」
龍立は、地獄から這い上がった二人を見て微笑んだ。
「地獄へ行く必要はない。」
「俺たちは人間の世界で——ちゃんと生きる。」
龍立は闇の空を見上げる。
「ただし、次は……もっと地べたに近い場所だ。」
吉岡が歩み寄る。
「社長、次はどこへ?」
龍立は遠くの畑と、灯りの点くスーパーを指さした。
「農業と食品だ。」
「どれだけ技術が進んでも、人間は飯を食う。」
「だが最近、日本の食卓は——見えない鼠(ねずみ)に支配されている。」
所:東京地方裁判所 & 澄心衛視スタジオ
午後・法廷
空気が刃物のように冷たい。
相手方弁護団は完璧なスーツで揃え、録音データを突きつけた。
「これが、浅見玲奈が口止め料を要求した録音です。」
三上は相変わらずアロハシャツ。ネクタイすらない。
チンピラのように揺ら揺らと証人席へ歩いていく。
「異議あり。——その音声は合成だ。」
三上は一枚の資料を叩きつけた。
GIGA互娯(ごが)音声ラボの解析報告。
「13秒地点に声紋の周波数断層。AIで繋いでる。技術が雑だな。……海賊版ソフトでも使ったか?」
次の瞬間、三上は買収された“村人”証人に、ぐっと距離を詰めた。
「俺の目を見ろ。」
「化学工場からいくら貰った?500万か?1000万か?」
「お前の偽証で、村の子どもたちは救われなくなる。それでも“正しい”つもりか?!」
かつて特捜のエース検事だった圧が、爆発する。
証人の防壁が崩れた。
「……ち、違う……!金なんて……!……いや、貰った!でも、脅されたんだ!俺だって、村の子どもを殺したくない……!」
法廷がどよめく。
三上は振り返り、龍立にVサインを返した。
夜・スタジオ
裁判は反転した。
それでも阿久津は往生際悪く、汗だくで言い逃れる。
「ち、違う……証人が買収されてるんだ!俺の記事は事実に基づいて……!」
龍立は阿久津の正面に座り、静かにリモコンを押した。
「阿久津. まだ局勢が見えていないのか。」
大型モニターが点灯する。
映ったのは録画ではない。——現地生中継。
画面の向こうは、汚染された村。
数百人の村民が横断幕を掲げ、そして——
頭を剃った白血病の子どもたちが、泣きながら工場の罪を訴えていた。
「これが、お前の言う“恐喝”か?」
龍立は子どもたちを指し、雷鳴のように言い放つ。
「これが、お前が筆で隠そうとした“命”か?!」
阿久津は崩れた。
全てが終わったと理解し、狂ったように龍立へ飛びかかる。
「嵌めやがったな!殺してやる!」
待ち構えていた警官隊がスタジオへ突入し、
“世論の皇帝”に手錠がかけられる。
全国放送、視聴率は65%を突破。
深夜・屋上
新しい看板——【澄心衛視】が夜に輝く。
浅見玲奈は取り戻した記者証を抱え、冷たい風の中で立っていた。
龍立を見て、膝から崩れ落ち、声にならない嗚咽を漏らす。
「社長……ありがとうございます……あなたがいなければ、私は……もう死んでいました……」
震える手で、玲奈は一枚の手書き原稿を差し出す。
阿久津の罪を暴く、独占記事——再生の第一稿。
「これが、記者としての……生まれ直しの一本目です。読んでください。」
龍立は彼女を立たせ、首を振った。
「それは俺に出すものじゃない。」
「出せ。世界に——お前の声を聞かせろ。」
隣で三上が手すりにもたれ、火の点いていないライターを弄んでいた。
「社長、知ってますか。検事だった頃、事件が片付くたびに、これで煙草を点けて祝ってた。」
「嵌められた日、俺はこれを捨てた。」
三上は新品のライターを取り出し、
“パチン”と火をつけ、深く吸い込む。
目に、久しくなかった光が戻る。
「今日、また拾い直しました。」
三上は向き直り、龍立へ深く頭を下げた。
いついつもの軽口はない。死のように重い真顔だけがある。
「龍立さん。俺の命は、あなたに売ります。」
「必要なら——地獄の裁判だって、勝たせます。」
龍立は、地獄から這い上がった二人を見て微笑んだ。
「地獄へ行く必要はない。」
「俺たちは人間の世界で——ちゃんと生きる。」
龍立は闇の空を見上げる。
「ただし、次は……もっと地べたに近い場所だ。」
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