カナダに追放された財閥の三男が帰国しました:父が「搾取は伝統だ」と言うので、「あらゆる手段」を使ってこの1兆円規模のブラック巨艦を完全ホワイ

RyuChoukan

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第六十二話 闇が降りる

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 時刻:深夜 23:55

 場所:東京湾・F区(澄心家園/ChengXin Home)

静かな夜だった。F区の三棟は灯りに満ち、若い会社員たちは帰宅して一日の疲れを洗い落とし、主婦たちはIHで子どものミルクを温めている。海風は強いが、二重防音ガラスが室内を春のように保っていた。

監視室で吉岡が電力のメーターパネルを見つめる。

「今は東都電力の工業ラインで充電しつつ、マスクの支援で入ったMegapackの蓄電と併用。電圧はかなり安定してます」

だが、短針が00:00に触れた、その一秒。

「パチン」

前触れもなく、F区の外部入力電圧が一瞬でゼロに落ちた。赤い警報が狂ったように点滅する。

『警告!外部電網断!システム、予備バッテリー供給へ自動切替!』

吉岡が制御盤へ飛びついた。「どういうことだ、遮断? 落ちたのか?」

東都電力の給電指令センターへ電話を入れる。返ってきたのは、氷のように無機質な機械音声だった。

『F区回線に負荷異常を確認。安全溶断機構が作動しました。現在、無期限の点検作業を実施中。復旧予定:未定』

「点検? ふざけるな!」

吉岡は受話器を叩きつけた。「点検車すら出てない! これは人為的な遮断だ!」

翌朝。テレビの生放送。東都電力の常務取締役――銀髪で傲慢な表情の老人が、カメラに向けて悠然と語っていた。

「東京湾F区の停電につきまして、遺憾に存じます。ですが、強調しておきたい。あれは企業が工業用地に住宅区を違法に建設し、電網に過剰な負担をかけた結果です」

眼鏡を押し上げ、嘲るような目で続ける。

「都民の電力安全を守るため、我々はやむを得ず、その“毒瘤”を切り離しました。電力は子どもの玩具ではない。――我々の許可なく、東京で一つの灯りを点すことなど、誰にもできません」

F区・CEO臨時オフィス。吉岡が汗だくで駆け込んできた。

「社長!Megapackの残量だと、最大で48時間です!尽きればエレベーターは止まり、ポンプも止まる。ここは死都になります!」

「48時間、か……」

龍立は床まで届く窓の前に立ち、遠くで黒煙を吐く東都電力の火力発電所を見つめた。眼差しは、台風前の海面より重く沈んでいる。

「奴らは闇で俺たちを跪かせるつもりだ。通電を乞わせて、法外な電気代と屈辱を飲ませる」

龍立は振り返り、机上の衛星電話を取った。

「吉岡、慌てるな」

一瞬、目に鋭い光が走る。

「俺が数百億を投じて澄原精工を建てたのは、部品を作るためだけだと思ったか? 半年前、“特殊設備工房”で源田と一緒に極秘封印した“あの荷”を覚えてるな。――未来のエネルギー戦争に備えた底札だ」

龍立は短く命じた。

「源田に連絡しろ。0号倉庫を開け。『捕風者(ウィンドキャッチャー)計画』を起動する。奴らが輸血管を断つなら、こちらは――用意しておいた心臓を装着する」
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