63 / 161
第六十三話 捕風者(ウィンドキャッチャー)
しおりを挟む
時刻:カウントダウン36時間
場所:澄原精工・0号極秘倉庫/F区海岸線
巨大倉庫のシャッターがゆっくり上がる。光の柱の中で、埃が舞った。吉岡は息を呑んだ。倉庫の奥に、帆布を被せた巨体が二十基、整列している。
作業員が帆布を剥がす。現れたのは、奇妙な垂直軸風力発電機(VAWT)だった。従来の風車のような巨大ブレードではない。それは、SFのような二重螺旋――DNAの形をした双螺旋塔。航空級チタン合金が鈍く光る。
「これは……」
「コードネーム:Storm Eater(ストームイーター/風暴喰らい)」
源田鉄男が歩み寄り、冷たい機体を叩いた。
「半年前、社長が“特殊ルート”で持ち込んだ流体力学データを使って、極秘で試作したプロトタイプです。ヨー制御不要。風向きがどこからでも回る。しかも――風が強いほど効率が上がる」
源田は薄く笑う。「本来は来年の発表予定でしたが……想定より早く“戦場”が来ましたね」
カウントダウン24時間。F区海岸線。暴風が唸り、黒雲が垂れ込める。超大型台風「雷神」の前衛が到達していた。小林の指揮で、重トレーラーが鋼鉄の巨獣を海へ運ぶ。
「どうやって設置するんです!基礎掘ってコンクリ流したら一週間は――!」吉岡が叫ぶ。
「要らん!」
源田がクレーンに飛び乗り、底部を指さした。「見ろ、ベースだ」
発電機の台座は普通の杭ではない。巨大なプレキャストの重力箱(グラビティボックス)だった。「第一性原理だ。工場で配重モジュールを組んである。吊って据えて、自重で防波堤に噛ませる。あとは高強度アンカーボルト数本で十分」
レゴのような組み立て。クレーンが吠え、螺旋翼が正確に差し込まれていく。土木ではなく、機械の精密咬合。一基、二基、十基――。
わずか12時間。F区の海岸線に、二十本の螺旋塔が並び立つ。それは“風の長城”だった。
同時刻、吉岡はサーバー前で狂ったようにコードを叩く。「テスラ本社からVPP(仮想発電所)の起動キー受信!ローカル機器とハンドシェイク開始!各風機を“神経細胞”として束ねられる!」
カウントダウン2時間。全工程が完了した。残るは最後の合闸(スイッチオン)だけ。
――そのとき。警笛が突き刺さった。黒い公用車が風雨を割り、現場ゲート前で急停止する。レインコート姿の官僚たちが降り立つ。先頭の胸元には「経済産業省・資源エネルギー庁」の身分証。
「全作業停止!」
官僚は用意していた封印札を取り出し、総合制御の主スイッチの前に立った。
「発電設備の違法設置の通報が入った。電気事業法第27条により、未承認の並列・接続は厳禁。違反は公共安全を害する行為として、即時逮捕の対象だ」
官僚は勝者の微笑を龍立に向ける。
「澄原先生、技術は立派だが、規制は規制だ。没収、封印。発電したいなら――二年の審査を終えてから来ることだ」
その瞬間、空が裂け、雷が落ちた。龍立は官僚たちを見た。それは洪水の前に立つ蟻を見る眼だった。
「お前たちが封じているのは、電闸じゃない」
低い声が雨を割る。
「命だ」
場所:澄原精工・0号極秘倉庫/F区海岸線
巨大倉庫のシャッターがゆっくり上がる。光の柱の中で、埃が舞った。吉岡は息を呑んだ。倉庫の奥に、帆布を被せた巨体が二十基、整列している。
作業員が帆布を剥がす。現れたのは、奇妙な垂直軸風力発電機(VAWT)だった。従来の風車のような巨大ブレードではない。それは、SFのような二重螺旋――DNAの形をした双螺旋塔。航空級チタン合金が鈍く光る。
「これは……」
「コードネーム:Storm Eater(ストームイーター/風暴喰らい)」
源田鉄男が歩み寄り、冷たい機体を叩いた。
「半年前、社長が“特殊ルート”で持ち込んだ流体力学データを使って、極秘で試作したプロトタイプです。ヨー制御不要。風向きがどこからでも回る。しかも――風が強いほど効率が上がる」
源田は薄く笑う。「本来は来年の発表予定でしたが……想定より早く“戦場”が来ましたね」
カウントダウン24時間。F区海岸線。暴風が唸り、黒雲が垂れ込める。超大型台風「雷神」の前衛が到達していた。小林の指揮で、重トレーラーが鋼鉄の巨獣を海へ運ぶ。
「どうやって設置するんです!基礎掘ってコンクリ流したら一週間は――!」吉岡が叫ぶ。
「要らん!」
源田がクレーンに飛び乗り、底部を指さした。「見ろ、ベースだ」
発電機の台座は普通の杭ではない。巨大なプレキャストの重力箱(グラビティボックス)だった。「第一性原理だ。工場で配重モジュールを組んである。吊って据えて、自重で防波堤に噛ませる。あとは高強度アンカーボルト数本で十分」
レゴのような組み立て。クレーンが吠え、螺旋翼が正確に差し込まれていく。土木ではなく、機械の精密咬合。一基、二基、十基――。
わずか12時間。F区の海岸線に、二十本の螺旋塔が並び立つ。それは“風の長城”だった。
同時刻、吉岡はサーバー前で狂ったようにコードを叩く。「テスラ本社からVPP(仮想発電所)の起動キー受信!ローカル機器とハンドシェイク開始!各風機を“神経細胞”として束ねられる!」
カウントダウン2時間。全工程が完了した。残るは最後の合闸(スイッチオン)だけ。
――そのとき。警笛が突き刺さった。黒い公用車が風雨を割り、現場ゲート前で急停止する。レインコート姿の官僚たちが降り立つ。先頭の胸元には「経済産業省・資源エネルギー庁」の身分証。
「全作業停止!」
官僚は用意していた封印札を取り出し、総合制御の主スイッチの前に立った。
「発電設備の違法設置の通報が入った。電気事業法第27条により、未承認の並列・接続は厳禁。違反は公共安全を害する行為として、即時逮捕の対象だ」
官僚は勝者の微笑を龍立に向ける。
「澄原先生、技術は立派だが、規制は規制だ。没収、封印。発電したいなら――二年の審査を終えてから来ることだ」
その瞬間、空が裂け、雷が落ちた。龍立は官僚たちを見た。それは洪水の前に立つ蟻を見る眼だった。
「お前たちが封じているのは、電闸じゃない」
低い声が雨を割る。
「命だ」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる