カナダに追放された財閥の三男が帰国しました:父が「搾取は伝統だ」と言うので、「あらゆる手段」を使ってこの1兆円規模のブラック巨艦を完全ホワイ

RyuChoukan

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第六十三話 捕風者(ウィンドキャッチャー)

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 時刻:カウントダウン36時間

 場所:澄原精工・0号極秘倉庫/F区海岸線

巨大倉庫のシャッターがゆっくり上がる。光の柱の中で、埃が舞った。吉岡は息を呑んだ。倉庫の奥に、帆布を被せた巨体が二十基、整列している。

作業員が帆布を剥がす。現れたのは、奇妙な垂直軸風力発電機(VAWT)だった。従来の風車のような巨大ブレードではない。それは、SFのような二重螺旋――DNAの形をした双螺旋塔。航空級チタン合金が鈍く光る。

「これは……」

「コードネーム:Storm Eater(ストームイーター/風暴喰らい)」

源田鉄男が歩み寄り、冷たい機体を叩いた。

「半年前、社長が“特殊ルート”で持ち込んだ流体力学データを使って、極秘で試作したプロトタイプです。ヨー制御不要。風向きがどこからでも回る。しかも――風が強いほど効率が上がる」

源田は薄く笑う。「本来は来年の発表予定でしたが……想定より早く“戦場”が来ましたね」

カウントダウン24時間。F区海岸線。暴風が唸り、黒雲が垂れ込める。超大型台風「雷神」の前衛が到達していた。小林の指揮で、重トレーラーが鋼鉄の巨獣を海へ運ぶ。

「どうやって設置するんです!基礎掘ってコンクリ流したら一週間は――!」吉岡が叫ぶ。

「要らん!」

源田がクレーンに飛び乗り、底部を指さした。「見ろ、ベースだ」

発電機の台座は普通の杭ではない。巨大なプレキャストの重力箱(グラビティボックス)だった。「第一性原理だ。工場で配重モジュールを組んである。吊って据えて、自重で防波堤に噛ませる。あとは高強度アンカーボルト数本で十分」

レゴのような組み立て。クレーンが吠え、螺旋翼が正確に差し込まれていく。土木ではなく、機械の精密咬合。一基、二基、十基――。

わずか12時間。F区の海岸線に、二十本の螺旋塔が並び立つ。それは“風の長城”だった。

同時刻、吉岡はサーバー前で狂ったようにコードを叩く。「テスラ本社からVPP(仮想発電所)の起動キー受信!ローカル機器とハンドシェイク開始!各風機を“神経細胞”として束ねられる!」

カウントダウン2時間。全工程が完了した。残るは最後の合闸(スイッチオン)だけ。

――そのとき。警笛が突き刺さった。黒い公用車が風雨を割り、現場ゲート前で急停止する。レインコート姿の官僚たちが降り立つ。先頭の胸元には「経済産業省・資源エネルギー庁」の身分証。

「全作業停止!」

官僚は用意していた封印札を取り出し、総合制御の主スイッチの前に立った。

「発電設備の違法設置の通報が入った。電気事業法第27条により、未承認の並列・接続は厳禁。違反は公共安全を害する行為として、即時逮捕の対象だ」

官僚は勝者の微笑を龍立に向ける。

「澄原先生、技術は立派だが、規制は規制だ。没収、封印。発電したいなら――二年の審査を終えてから来ることだ」

その瞬間、空が裂け、雷が落ちた。龍立は官僚たちを見た。それは洪水の前に立つ蟻を見る眼だった。

「お前たちが封じているのは、電闸じゃない」

低い声が雨を割る。

「命だ」
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