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第一百零七話 見えない鎖
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時刻:翌日
場所:F区広場 & 奥多摩・山中研修所
交渉が崩れた瞬間、戦争が始まった。神宮寺美煌の反撃は速く、そして澄心の急所――“人の心”を狙ってきた。
F区広場。一夜で巨大な白いテントが建つ。神宮寺自らの『癒しの説法会』。狙いは正確すぎる。ようやく外へ出た引きこもり、心の空いた独居老人。龍立が命を賭けて救った“最も脆い人々”。
「子どもたち。なぜ苦しいの?」神宮寺の声は高級PAで反響し、胸の奥へ刺さる。「この世界は冷たい。機械に心はない。彼らは働くだけ。機甲は冷たい鉄の殻。あなたを抱きしめられない。でも神は、あなたを愛している」
――ショーが始まる。車椅子の“麻痺老人”(仕込み)が、神宮寺に触れられた途端、震えながら立ち上がる。どよめき。老人たちは泣き崩れ、膝をつき、額を地面へ叩きつけた。
次に神宮寺は、佐藤の前へ行く。彼は外へ出たが、心の底はまだ自卑のままだ。神宮寺は彼の手を握り、涙を流る。
「あなたの魂の傷が見える。あなたは無価値じゃない。迷った天使なの。おいで。神が守ってあげる」佐藤は固まる。これが“ラブボミング(愛の爆撃)”。愛に飢えた人間には麻薬だ。
――危機は、三日で発生した。
澄心ホームの廊下。独居の老婦人が、普段世話をしてくれる介護ロボットを、杖で叩き始める。「出ていけ!! お前は陽気を吸う妖怪だ! 尊師が言ったんだ! お前のせいで病気になった!」
ロボットは凹んだ外装のまま、電子音で言う。「おばあさま、お気をつけください。血圧が上昇しています……」
「黙れ!!」老婦人はロボット胸部の澄心ロゴを引き剥がし、黄色い護符を貼り付けた。
精工工場では、若い操縦士が集団で無断欠勤。工藤孝太が寮へ行くと――部屋は空で、机に一枚の紙。『機械を操るのは神への冒涜。真理を求め、山へ行く』
武田の母は、数十人の信徒を連れて澄心ビル前に座り込み。『科技は悪魔、息子を返せ』の看板。断食で脅迫まで始めた。
――潜入。真相を掴むため、佐久間が自ら動く。破産し絶望した中年社長に偽装し、奥多摩の山奥にある“研修所”へ潜り込んだ。だがそこは――地獄だった。
三日後。佐久間はふらふらで澄心へ戻る。頬はこけ、眼窩は落ち、戦俘収容所から逃げた兵の顔。龍立の手を掴み、震える声で吐く。
「社長……あそこは……収容所です……。携帯も時計も没収されました。時間感覚を奪われます。食事は少量の玄米と漬物だけ。蛋白が足りず、脳が鈍って判断力が落ちる。その上、二十四時間の講義。スピーカーで教主の声を無限ループ。寝たら冷水をかけられ、“悪魔憑き”と罵られる。普通の主婦が……三日目で壊れました。床に跪いて、全口座を全部書き出した。教主の抱擁一つのために……」
佐久間は顔を覆う。精神を犯された恐怖が、まだ皮膚に残っていた。
「止めなければ。F区はすぐに狂人の街になります」
龍立は、狂熱の信徒を映す監視映像を見つめる。眼は氷より冷たい。
「人を奪いに来たか。奴は“恐怖”と“生理剥奪”で人を折る。なら俺は――もっと上位の恐怖。絶対的な視覚衝撃で叩き潰る」
場所:F区広場 & 奥多摩・山中研修所
交渉が崩れた瞬間、戦争が始まった。神宮寺美煌の反撃は速く、そして澄心の急所――“人の心”を狙ってきた。
F区広場。一夜で巨大な白いテントが建つ。神宮寺自らの『癒しの説法会』。狙いは正確すぎる。ようやく外へ出た引きこもり、心の空いた独居老人。龍立が命を賭けて救った“最も脆い人々”。
「子どもたち。なぜ苦しいの?」神宮寺の声は高級PAで反響し、胸の奥へ刺さる。「この世界は冷たい。機械に心はない。彼らは働くだけ。機甲は冷たい鉄の殻。あなたを抱きしめられない。でも神は、あなたを愛している」
――ショーが始まる。車椅子の“麻痺老人”(仕込み)が、神宮寺に触れられた途端、震えながら立ち上がる。どよめき。老人たちは泣き崩れ、膝をつき、額を地面へ叩きつけた。
次に神宮寺は、佐藤の前へ行く。彼は外へ出たが、心の底はまだ自卑のままだ。神宮寺は彼の手を握り、涙を流る。
「あなたの魂の傷が見える。あなたは無価値じゃない。迷った天使なの。おいで。神が守ってあげる」佐藤は固まる。これが“ラブボミング(愛の爆撃)”。愛に飢えた人間には麻薬だ。
――危機は、三日で発生した。
澄心ホームの廊下。独居の老婦人が、普段世話をしてくれる介護ロボットを、杖で叩き始める。「出ていけ!! お前は陽気を吸う妖怪だ! 尊師が言ったんだ! お前のせいで病気になった!」
ロボットは凹んだ外装のまま、電子音で言う。「おばあさま、お気をつけください。血圧が上昇しています……」
「黙れ!!」老婦人はロボット胸部の澄心ロゴを引き剥がし、黄色い護符を貼り付けた。
精工工場では、若い操縦士が集団で無断欠勤。工藤孝太が寮へ行くと――部屋は空で、机に一枚の紙。『機械を操るのは神への冒涜。真理を求め、山へ行く』
武田の母は、数十人の信徒を連れて澄心ビル前に座り込み。『科技は悪魔、息子を返せ』の看板。断食で脅迫まで始めた。
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三日後。佐久間はふらふらで澄心へ戻る。頬はこけ、眼窩は落ち、戦俘収容所から逃げた兵の顔。龍立の手を掴み、震える声で吐く。
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佐久間は顔を覆う。精神を犯された恐怖が、まだ皮膚に残っていた。
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龍立は、狂熱の信徒を映す監視映像を見つめる。眼は氷より冷たい。
「人を奪いに来たか。奴は“恐怖”と“生理剥奪”で人を折る。なら俺は――もっと上位の恐怖。絶対的な視覚衝撃で叩き潰る」
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