カナダに追放された財閥の三男が帰国しました:父が「搾取は伝統だ」と言うので、「あらゆる手段」を使ってこの1兆円規模のブラック巨艦を完全ホワイ

RyuChoukan

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第一百零六話 捕食者の仮面

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 時刻:同日・午後15:00

 場所:東京・港区『真理の光』大聖堂(VIP接見室)

 ここは宗教施設じゃない。最高級のプライベートクラブだった。

 空気に溶けているのは、特製の幻惑アロマ。高級白檀に、微量の幻覚剤を混ぜた匂い。照明は徹底的に設計され、色温度は暖色域に固定。入った瞬間、瞳孔が開き、心拍が落ち、“神聖な眩暈”と“安全”が脳に注入される。

 純白の羊毛絨毯の奥。龍立は、伝説の教主――神宮寺 美煌(Jingūji Miko)に会った。

 三十代半ば。完璧な肌。少女のように張りのある輪郭。白いオーダーメイドのシルクローブ。素足。ノーメイクに見えるが、“聖性”を演出する珠光パウダーが薄く塗られている。眼差しは水のように柔らかく、この世の罪を全て赦すと錯覚させる。

「澄原様」神宮寺は微笑み、立ち上がらずに手を差し出した。「ご高名はかねがね。あなたは科技界の神。私は霊性界の導き手。……私たちは、同業です」

 龍立は彼女の前に座り、わざと挑発的に脚を組んだ。「同業? 俺を侮辱するな。俺は梯子を作って人を上に上げる。お前は穴を掘って人を落とす」

 神宮寺は怒らない。周囲の侍者を下がらせた。重い扉が閉まり、二人きり。香りはさらに濃くなり、BGMは低周波の唸りへ変わる。――アルファ波誘導音。

 彼女は音もなく背後へ回り、手を龍立の肩へ置いた。指先の温度が、ゆっくり首筋へ滑る。

「あなたは……強くありすぎる」声の周波数が違う。訓練された“催眠声”。耳元へ落ちる囁き。「強い男ほど、心の奥では――全てを脱ぎ捨てられる場所を求めている。武田の金なんて、私は本当は興味がない。私が欲しいのは……あなたです。澄心は物質世界を変える力。私は精神世界を支配する力。二つが結びつけば――地上の神国が作れる」

 神宮寺は龍立の前へ回り、ゆっくり膝をつく。仰ぎ見る眼は陶酔と崇拝。胸元が呼吸で大きく上下し、成熟した女の“致死的な誘惑”を放つ。

「澄原君……あなたが頷けば。真理の光の数十万信徒も……私も……全部あなたのもの」

 ――最高峰の色仕掛け。下品な肉体取引ではない。“権力+征服感+母性の包容”を三層で叩き込む手口。支配を望む男ほど、抗い難い誘惑。

 だが――龍立は笑った。彼は神宮寺の顎を軽く持ち上げる。神宮寺の瞳に勝利が走る。男は結局、欲望に負ける――そう信じた。

「神宮寺さん」龍立の声は、死体検分の報告書みたいに冷たかった。その一言で、甘い空気が粉砕される。

「今のは、典型的な“神経言語プログラミング(NLP)”だ」神宮寺の笑みが、一瞬固まる。瞳に“焦り”が滲んだ。

 龍立は顎を持ったまま、欲望ではなく解剖の視線で続ける。「まず、照明周波数と香りの濃度を調整した。前頭前野の活動を落とす――つまり理性を鈍らせるためだ。次に、“コールドリーディング”で孤独を当てに来た。権力者の自尊心に刺さる定番の誘い文句だ。最後に、接触と声のトーンで。ドーパミンとオキシトシンを誘発し、偽の親密さを作る」

 龍立は手を離し、ハンカチで指を拭いた。汚れでも付いたかのように。

「心理学では“捕食的擬態”という。お前に信仰はない。愛もない。あるのは、人間を騙す技術だけだ」

 神宮寺は跳ねるように立ち上がった。聖女の仮面が割れ、下から露わになるのは醜い羞恥と怒り。

「……あなたは魂のない機械よ! 神を冒涜するつもり!?」

 龍立は煙草に火をつけ、煙を吐く。空間の支配権を完全に奪い返した。

「その手品は終わりだ。武田の金は一円も渡さない。母親の洗脳も解く。人心を弄ぶのが好きなら――もっと大きいゲームをしよう。お前の神壇を、粉一つ残さず、解体してやる」
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