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第一百一十話 貪欲の帳簿
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時刻:大典の最中
場所:神壇の上
「偽物よ!! ホログラム! 魔鬼だ!!」神宮寺は空中で金切り声を上げ、必死に場を繋ごうとする。だが巨大神像の前では、声が羽虫のように弱い。
「俺が偽物?」龍立は神壇へ上がり、彼女を見下ろした。「じゃあ、これはどうだ。これも偽物か?」
龍立が手を振る。巨大神像は散光となって崩れ、無数の粒子が再集合する。――巨大な、スクロールする電子帳簿。
神宮寺美煌の海外秘密口座の入出金明細。佐久間がケイマンの銀行システムに侵入し、“下着まで剥いだ”データだ。画面には、送金の一本一本が表示される。しかも、証拠写真付き。
【10月5日:入金 5,000万(武田母・献金)】
【10月6日:出金 ヒマラヤ・クロコのエルメス購入(レシート)/男モデル“ケン”宿泊費(密着写真)】
【11月2日:入金 1億(老人年金)】
【11月3日:出金 ケイマン私有ヨット頭金(写真)】
【12月1日:出金 スイス整形クリニックVIP(整形前写真)】
一つ一つが、目を潰すほど生々しい。信徒の血汗が、バッグに変わり、ヨットに変わり、男に変わる。
「見ろ」龍立は武田の母の襟を掴み、無理やり画面を見上げさせる。「お前が家を売って捧げた金は、神殿じゃない。バッグだ。男だ。整形だ。これが神か? 貪り尽くす泥棒だ」
――沈黙。三万人の、死のような沈黙。
次の瞬間、裂けるような叫びが劇場を切った。武田の母は崩れ落ち、土を掴み、爪が割れて血が滲む。「私の金……! 老後の金が……!! 息子のために残したのに!! 嘘……全部、嘘……」
怒りが火山になる。彼らは科学で起きたんじゃない。“金”で目が覚めた。
「返せ!!」「詐欺師!!」「殺せ!!」群衆が神壇へ雪崩れ込む。
神宮寺は後退しようとして、浮遊用ワイヤーに足を取られ――無様に顔から倒れた。彼女の“神力”は、今は何も救わない。
警察が突入し、手錠をかけた。それが彼女の命を救った。群衆に裂かれていた。
――エピローグ。
騒乱が収まり、武田は泣く母を抱え、龍立へ深く頭を下げる。「社長……ありがとう……。母が……目を覚ましました」
龍立は煙草に火をつけ、解体される神壇と、被害申告の列を眺める。「覚えとけ。この世界に神はいない。いるとしたら――人間が両手で作り出したものだけだ」
その時。教会資産が差し押さえられる最中、佐久間が駆けてきた。顔色は、さっきより重い。
「社長……帳簿に妙な送金があります。逮捕の五分前。三十億円が、ある建設大手の海外口座へ緊急移転されています。受取先は――黒鉄建設(Kurogane Construction)」
龍立の目が細くなる。「黒鉄……? 国内最大のゼネコンだ。トンネルも橋も半分は奴らが握ってる。邪教の教主が、なぜ土方に金を?」
佐久間は声を落とした。そこに恐怖がある。「……口止め料です。奥多摩研修所は、地質断層帯の上に建ってます。黒鉄が違法施工した。さらに、黒鉄が今やってる国家プロジェクト――“東京湾クロスシー大トンネル”。工期短縮とコスト削減で、不合格鋼材を使用。検査データは全部、偽造です」
龍立は窓の外を見た。F区から都心へ通う“必経路”。毎日、何万台も通る海底トンネル。
「つまり――俺たちが毎日通ってる道が、いつ崩れてもおかしくない?」
佐久間が頷く。「はい。数百万人の頭上に吊るされた棺桶です」
龍立は、指先で煙草を握り潰した。「いいね。神棍を片付けたら、次は包工頭か。豆腐工事。データ偽造。次は――現場だ」
次回予告:基建崩壊/建築闇編
「砂をセメントとして売るってのは、人の命で巣を作ってるのと同じだ」
龍立が次に相手取るのは、邪教より巨大で、邪教より暴力的な敵――日本建設界の“黒い手”。大災厄が迫る。機甲軍団、出撃準備。
場所:神壇の上
「偽物よ!! ホログラム! 魔鬼だ!!」神宮寺は空中で金切り声を上げ、必死に場を繋ごうとする。だが巨大神像の前では、声が羽虫のように弱い。
「俺が偽物?」龍立は神壇へ上がり、彼女を見下ろした。「じゃあ、これはどうだ。これも偽物か?」
龍立が手を振る。巨大神像は散光となって崩れ、無数の粒子が再集合する。――巨大な、スクロールする電子帳簿。
神宮寺美煌の海外秘密口座の入出金明細。佐久間がケイマンの銀行システムに侵入し、“下着まで剥いだ”データだ。画面には、送金の一本一本が表示される。しかも、証拠写真付き。
【10月5日:入金 5,000万(武田母・献金)】
【10月6日:出金 ヒマラヤ・クロコのエルメス購入(レシート)/男モデル“ケン”宿泊費(密着写真)】
【11月2日:入金 1億(老人年金)】
【11月3日:出金 ケイマン私有ヨット頭金(写真)】
【12月1日:出金 スイス整形クリニックVIP(整形前写真)】
一つ一つが、目を潰すほど生々しい。信徒の血汗が、バッグに変わり、ヨットに変わり、男に変わる。
「見ろ」龍立は武田の母の襟を掴み、無理やり画面を見上げさせる。「お前が家を売って捧げた金は、神殿じゃない。バッグだ。男だ。整形だ。これが神か? 貪り尽くす泥棒だ」
――沈黙。三万人の、死のような沈黙。
次の瞬間、裂けるような叫びが劇場を切った。武田の母は崩れ落ち、土を掴み、爪が割れて血が滲む。「私の金……! 老後の金が……!! 息子のために残したのに!! 嘘……全部、嘘……」
怒りが火山になる。彼らは科学で起きたんじゃない。“金”で目が覚めた。
「返せ!!」「詐欺師!!」「殺せ!!」群衆が神壇へ雪崩れ込む。
神宮寺は後退しようとして、浮遊用ワイヤーに足を取られ――無様に顔から倒れた。彼女の“神力”は、今は何も救わない。
警察が突入し、手錠をかけた。それが彼女の命を救った。群衆に裂かれていた。
――エピローグ。
騒乱が収まり、武田は泣く母を抱え、龍立へ深く頭を下げる。「社長……ありがとう……。母が……目を覚ましました」
龍立は煙草に火をつけ、解体される神壇と、被害申告の列を眺める。「覚えとけ。この世界に神はいない。いるとしたら――人間が両手で作り出したものだけだ」
その時。教会資産が差し押さえられる最中、佐久間が駆けてきた。顔色は、さっきより重い。
「社長……帳簿に妙な送金があります。逮捕の五分前。三十億円が、ある建設大手の海外口座へ緊急移転されています。受取先は――黒鉄建設(Kurogane Construction)」
龍立の目が細くなる。「黒鉄……? 国内最大のゼネコンだ。トンネルも橋も半分は奴らが握ってる。邪教の教主が、なぜ土方に金を?」
佐久間は声を落とした。そこに恐怖がある。「……口止め料です。奥多摩研修所は、地質断層帯の上に建ってます。黒鉄が違法施工した。さらに、黒鉄が今やってる国家プロジェクト――“東京湾クロスシー大トンネル”。工期短縮とコスト削減で、不合格鋼材を使用。検査データは全部、偽造です」
龍立は窓の外を見た。F区から都心へ通う“必経路”。毎日、何万台も通る海底トンネル。
「つまり――俺たちが毎日通ってる道が、いつ崩れてもおかしくない?」
佐久間が頷く。「はい。数百万人の頭上に吊るされた棺桶です」
龍立は、指先で煙草を握り潰した。「いいね。神棍を片付けたら、次は包工頭か。豆腐工事。データ偽造。次は――現場だ」
次回予告:基建崩壊/建築闇編
「砂をセメントとして売るってのは、人の命で巣を作ってるのと同じだ」
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