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第一百二十話 鋼鉄の刈り取り手
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時間:翌日 午前8時
場所:神去村・村口の鳥居前
鬼頭は約束を守った。見せしめに来たのだ。
ごごごご…。大地が震え、鳥居の埃がさらさらと落ちる。防暴装甲と衝角を追加した巨大な黄色いブルドーザーが五台。霧を踏み潰しながら、鋼鉄の怪獣のように迫ってくる。両側には五十人の暴徒。盾、スタンロッド、腰には鉈まで下げている。
防弾ガラス越しの指揮車から、鬼頭が拡声器で叫ぶ。「押し潰せ! あのボロ神社を潰せ! 邪魔したらそのまま轢け! 事故で片付く!」
彼らの前にあるのは、あまりにも脆い防衛線だった。
巫女装束の早苗が、竹箒を握り締め、道の真ん中に立っている。目を閉じ、震えながらも、一歩も退かない。背後には村長が率いる三十人の老人。互いに支え合い、錆びた鍬や鎌を持ち、枯れた身体で人垣を作る。
「死んでも織田家の神社は渡さん!」村長の叫びで、入れ歯が飛びそうだった。
「轢け!」鬼頭が命じた。先頭のブルドーザーが唸りを上げ、巨大なブレードを持ち上げる。死の影が、早苗の青白い顔に落ちる。三メートル…二メートル…。老人たちの叫びが裂ける。
そのとき。空気を切り裂くような、聞いたことのない轟音が、神社裏の森から炸裂した。ジェットエンジンのような咆哮。地面が揺れる。ブルドーザーの十倍だ。
「な、何だ!?」暴徒たちが仰天して顔を上げた。
赤い落ち葉が嵐のように舞う中、黄金の閃光が森を突き破った。
「誰が! 俺の社長の故郷に手を出す!!」老いた声なのに、獅子の咆哮のように雄大な怒号。
四メートル級。塗装は眩い“豊穣金”。肩には「風林火山」の紋。巨大な二足歩行機甲が、天から降りた。どんっ! 衝撃波が走り、先頭のブルドーザーが強制停止する。
【農業型タイタン機甲・改(Titan-Agri Custom)「山神号」】
コクピットには、62歳の源田鉄男。戦術ゴーグルをかけ、全身の筋肉が張り詰めている。拡声器越しに、冷たい声が谷へ響く。
「この機体は畑を耕すためのもんだ。喧嘩用じゃない。だが…害虫が来たなら話は別だ」
右腕が掲げられる。それは銃ではない。三メートルの超高周波振動チェーンソー。本来は巨木伐採用に改造されたものだ。
ぎゅわあああ! 空気が裂ける爆鳴り。
「帰れ!!」源田が吼え、機甲の腕が振り下ろされる。黄金の光弧が走り、先頭ブルドーザーの油圧アームを正確に斬った。
ばちんっ! 火花が花火のように散る。太腿ほどの鋼鉄アームが、豆腐みたいに落ちた。ががん! 重いブレードが地面に叩きつけられ、アスファルトが陥没する。
「な…高達(ガンダム)!?」鬼頭は指揮席から転げ落ちた。
だが、まだ終わりではない。空を覆う、密集した羽音。澄心物流のマークをつけた重載ドローン群が、怒れる蜂の群れのように急降下した。
落としたのは爆弾ではない。特殊な“風船”だ。ぱん、ぱん、ぱん!
風船が工事車列で割れ、白い粘液が飛び散った。高粘度の工業用生体接着剤。空気に触れた瞬間に硬化し、吸気口を塞ぎ、フロントガラスを覆い、履帯を固着させる。三分もかからず、鬼頭自慢の重機軍団は、全て動かぬ鉄の彫像になった。
龍立が機甲の影から歩み出る。早苗の隣に立ち、軽く肩を叩いた。「…すまない。遅くなった」
そして鬼頭へ振り返る。その眼は深山の氷雪より冷たい。
「鬼頭社長。道が狭いせいで、あなたの車は壊れたようだ。今すぐ人間を連れて山を降りろ。次に来たら…切るのは油圧アームじゃない。お前の首だ」
場所:神去村・村口の鳥居前
鬼頭は約束を守った。見せしめに来たのだ。
ごごごご…。大地が震え、鳥居の埃がさらさらと落ちる。防暴装甲と衝角を追加した巨大な黄色いブルドーザーが五台。霧を踏み潰しながら、鋼鉄の怪獣のように迫ってくる。両側には五十人の暴徒。盾、スタンロッド、腰には鉈まで下げている。
防弾ガラス越しの指揮車から、鬼頭が拡声器で叫ぶ。「押し潰せ! あのボロ神社を潰せ! 邪魔したらそのまま轢け! 事故で片付く!」
彼らの前にあるのは、あまりにも脆い防衛線だった。
巫女装束の早苗が、竹箒を握り締め、道の真ん中に立っている。目を閉じ、震えながらも、一歩も退かない。背後には村長が率いる三十人の老人。互いに支え合い、錆びた鍬や鎌を持ち、枯れた身体で人垣を作る。
「死んでも織田家の神社は渡さん!」村長の叫びで、入れ歯が飛びそうだった。
「轢け!」鬼頭が命じた。先頭のブルドーザーが唸りを上げ、巨大なブレードを持ち上げる。死の影が、早苗の青白い顔に落ちる。三メートル…二メートル…。老人たちの叫びが裂ける。
そのとき。空気を切り裂くような、聞いたことのない轟音が、神社裏の森から炸裂した。ジェットエンジンのような咆哮。地面が揺れる。ブルドーザーの十倍だ。
「な、何だ!?」暴徒たちが仰天して顔を上げた。
赤い落ち葉が嵐のように舞う中、黄金の閃光が森を突き破った。
「誰が! 俺の社長の故郷に手を出す!!」老いた声なのに、獅子の咆哮のように雄大な怒号。
四メートル級。塗装は眩い“豊穣金”。肩には「風林火山」の紋。巨大な二足歩行機甲が、天から降りた。どんっ! 衝撃波が走り、先頭のブルドーザーが強制停止する。
【農業型タイタン機甲・改(Titan-Agri Custom)「山神号」】
コクピットには、62歳の源田鉄男。戦術ゴーグルをかけ、全身の筋肉が張り詰めている。拡声器越しに、冷たい声が谷へ響く。
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右腕が掲げられる。それは銃ではない。三メートルの超高周波振動チェーンソー。本来は巨木伐採用に改造されたものだ。
ぎゅわあああ! 空気が裂ける爆鳴り。
「帰れ!!」源田が吼え、機甲の腕が振り下ろされる。黄金の光弧が走り、先頭ブルドーザーの油圧アームを正確に斬った。
ばちんっ! 火花が花火のように散る。太腿ほどの鋼鉄アームが、豆腐みたいに落ちた。ががん! 重いブレードが地面に叩きつけられ、アスファルトが陥没する。
「な…高達(ガンダム)!?」鬼頭は指揮席から転げ落ちた。
だが、まだ終わりではない。空を覆う、密集した羽音。澄心物流のマークをつけた重載ドローン群が、怒れる蜂の群れのように急降下した。
落としたのは爆弾ではない。特殊な“風船”だ。ぱん、ぱん、ぱん!
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