カナダに追放された財閥の三男が帰国しました:父が「搾取は伝統だ」と言うので、「あらゆる手段」を使ってこの1兆円規模のブラック巨艦を完全ホワイ

RyuChoukan

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第一百五十二話 ゾンビの叛乱

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時刻:当夜 19:30(強制解体まで残り30分)。

場所:東京家庭裁判所・大法廷。

佐々木は龍立に手を打たせないため、裁判所へ「夜間緊急審問」を申請した。自身の後見権を再確認させ、さらに龍立への「身柄制限命令」を求める。

法廷で佐々木は雄弁だった。自信満々で、言葉が淀みなく滑る。

「裁判官殿。澄原龍立は合法な商取引を妨害し、さらに私の療養院へ人員を差し向けて騒擾行為を行いました。これは財閥によるいじめであり、法治精神への踏みにじりです! 私は直ちに孤児院解体命令の執行、ならびに澄原龍立の逮捕を求めます!」

裁判官は佐々木の大学の後輩であり、同じ利益共同体でもある。何度も頷き、木槌を高く掲げ、今まさに宣告しようとしていた。

「ドン!」

法廷の扉が重く押し開けられ、衝撃音が厳粛な空間に反響した。

龍立が黒いスーツで入ってくる。車椅子を押しながら。歩みは急がず、遅れもしない。だが一歩ごとに、佐々木の鼓動を踏み潰すようだった。

車椅子に座るのは、緊急治療を受け、衰弱しながらも、眼が火のように澄んだ葛城源次郎。

背後には三上弁護士が続き、分厚い書類の束を抱えている。

「異議あり!」三上の声が法廷を貫く。揺るぎない底力があった。

「新証拠を提出します!」

佐々木は顔色を変え、跳ね起きた。龍立を指差して怒鳴る。

「これは誘拐だ! 法廷警備、つまみ出せ! この老人は正気じゃない! 澄原龍立に操られている!」

龍立は佐々木の喚きに一切応じない。ただ裁判官へ冷たい視線を投げた。頂点の支配者が放つ圧が、裁判官の手を半空で止める。

「吉岡。」龍立がイヤホンへ言う。

大型スクリーンが点灯した。

吉岡は法廷の投影システムへ直接侵入していた。

映し出されたのは退屈な書類ではない。療養院で老人たちが強制的に投票させられる映像。介助員が手を握って不正を行う高精細のクローズアップ。

さらに偽造された投票用紙の束、そして映像の中で得意げに笑う佐々木の顔。

法廷は騒然となる。傍聴席の記者たちが狂ったように撮影し、フラッシュが法廷を白昼のように照らした。

佐々木の顔は一瞬で蒼白になり、膝が抜けて椅子へ崩れ落ちた。

「こ……これは捏造だ! AI生成のDeepfakeだ!」

「捏造かどうかは――当事者の声を聞けばいい。」

龍立は葛城老人のそばにしゃがみ、マイクを手渡した。

老人は震える手で、全身の力を振り絞る。裁判官へ、そして全日本へ向けた生中継のカメラへ向けて、言葉を叩きつけた。

「わ……私は……葛城源次郎……清醒な状態で宣言する……佐々木道山の……すべての後見権を……解除する……! 奴は……強盗だ……! 国家を盗む賊だ……!!」

絶殺。

三上弁護士は、黄ばんだ古い書類を即座に取り出した。龍立が孤児院の資料室で掴んだ、決定的な切り札。

「裁判官殿。これは葛城氏が三年前、まだ認知症判定を受ける前に、自筆で作成した《民事信託契約》です。」

「彼は清醒なうちに、孤児院の土地を澄心グループへ信託し、管理を委ねている。信託法上、この契約の効力は、その後に成立した法定後見より上位です!」

「佐々木の売買契約は、初めから無効!!」

「違う!!!」

佐々木が凄絶な悲鳴を上げた。背骨を踏み折られた野犬のように。終わった。すべて終わった。

土地は売れない。

“ゾンビ票”の商売も完全に露見した。

法廷の外からサイレンが近づく。特捜部の検察官が手錠を手に、法廷入口に立っていた。

結末。

佐々木は連行された。

裁判所はその場で宣告する。後見権は澄心グループへ移管。孤児院は守られた。

ブルドーザーは撤退し、テレビの前で源田は子どもたちを抱きしめ、歓声を上げ、嗚咽しながら涙を流した。

だが、警察車両に押し込まれる直前、佐々木は突然足を止める。

振り返り、人混み越しに龍立と葛城老人へ向けて、歪で不気味な笑みを見せた。

「葛城のジジイ……孤児院を守れたから勝ったと思ったか?」

「お前が一番可愛がっていた孫娘……葛城優(Yuna)って娘……」

「家出したと思ってたか?」

「ハハハハ! とっくに抵当に入れてやった! お前の孤児院の穴埋めのために、歌舞伎町へ売ったんだ!」

「今ごろ――どこかのベッドの上で、お前の借金を返してるだろうよ! 売り身の三千万の債だ! ハハハハハ!」

「ぶっ――!」

その言葉を聞いた瞬間、葛城老人は血を吐き、崩れ落ちて意識を失った。

南方仁医師が即座に駆け寄り、救命措置に入る。

龍立は老人を支えた。眼は一瞬で、極地より冷たくなる。

優。

孤児院の名簿には「卒園」と記された十八歳の少女。

卒園ではない。

佐々木の貪欲の鎖の上で――生贄にされたのだ。

深夜、澄心グループ本社。

劉立が「葛城優」という少女の行方を追跡していた。

「ボス、掴みました。」

劉立は怒りを押し殺し、指の関節が白くなるほど力を込めた。

「佐々木は孤児院の高利貸し債務を、まとめて『帝王グループ』という会社へ譲渡しています。」

「優は三千万円の『連帯保証書』に無理やり署名させられた。今、新宿・歌舞伎町の『Club VENUS』というトップクラスのホストクラブにいます。」

「そこは……日本最大の『恋愛詐欺』と『風俗連帯』の拠点です。」

「店長はローランド(Roland)。『歌舞伎町の帝王』と呼ばれている。あそこに入った女は、一人として無傷で出られない。恋愛で洗脳され、血の一滴まで搾り取られ、最後は歩く死体になる。」

龍立は画面の中の、清純な少女の写真を見つめ、次に、ネオンで滲む歌舞伎町の地図へ目を移した。

佐々木は倒れた。だが悪のバトンは、さらに暗い勢力へ渡された。

これはもう法律問題ではない。

人心を操る戦争だ。

「恋愛詐欺? 売り身で返済?」

龍立は立ち上がり、襟を整えた。出征の合図だった。

「人の心を弄ぶのが好きなら――教えてやる。何が本当の『心理支配』か。」

「吉岡、資金を用意しろ。劉立、脚本を用意しろ。」

「次は――歌舞伎町を買う。」

「『帝王』には――跪いて、人を返してもらう。」

【次回予告】

(悪質ホストと精神支配編)

「愛してる? なら俺のために体を売れ。」

新宿・歌舞伎町の「帝王」。

PUAで千人以上の女性を支配し、巨額の負債を背負わせる悪魔のホスト。

龍立は欲望の密林へ踏み込む。

「嘘で満ちたこの街で――俺だけが唯一の真実だ。」
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