【完結】Life

浅葱

文字の大きさ
23 / 23

Air mail―

しおりを挟む
 日が長くなってきたな、と思う。
 何を思ったか中国人の友だちのギャリーが、ミッションベイにナンパに行こうというので車を借りて行ってきた。もちろん俺はただの冷やかしである。
 でもよく考えなくても、休日のミッションベイなんかカップルだらけで当てられに行ったようなものだった。
 ギャリーがさかんに悪態をついているのをなだめ、ガソリンスタンド横で一緒に車を洗う。シャワーのホースが銃みたいになっていて、そこから出てくる泡にまみれて、ふと顔を上げた。
 太陽がいつもより高い位置にある。
 もう、すぐそこまで春が来ているようだった。
 ギャリーをアパートで降ろして、フラットに戻る。ケンが夕方から車を使うと言っていたからだ。
 車庫に車をどうにか入れて車を降りると、丁度家からケンが出てきた。

「おかえり、カズ君。楽しんできた?」

 そう聞くケンの手には何やら封筒が握られていた。

「男2人で行くこと自体が間違ってました。ダチが切れちゃって切れちゃって」

 笑って、そしてため息をつく。

「それは気の毒だったね。そういえばカズ君に手紙がきてるよ」

 思い出したように、手元の封筒を渡された。エアメールだった。

「ありがとうございます」
「僕宛かと思って取っちゃったんだ。もちろん、中は見てないからね」
「はい、ありがとうございます」

 改めて礼を言って封筒をひっくり返す。
 歩美からだった。
 普段はメールでやりとりをしているから、わざわざエアメールなんかで来たのは意外だった。
 思わず顔がほころぶ。
 部屋に持って帰って読もうと顔を上げると、ケンと目が合った。

「えっと……どういう友だちかなぁ、と思って……」

 覗き込んでいたらしい。女の子の名前だから気にしてくれたのだろう。

「同じ学校のダチです。もう日本に帰っちゃいましたけど」
「そ、そう。ごめんね~」

 そう言って俺から車のキーを受け取り、また家の中に戻っていく。俺もいいかげん家に戻った。玄関の横の自分の部屋に入り、ベッドに倒れる。封筒はちょっと重さがある。
 ペーパーナイフを取り出して開ける。
 懐かしい写真が入っていた。


 ハロー、カズ。久しぶり。
 やっと写真を焼いたので送ります。
 懐かしいでしょ?
 ギャリーたちの分もあるから渡してあげて。
 やることが遅くてゴメンね。
 またメールします。

 P.S.最後の写真は送るかどうしようか迷ったけど、送ってみた。


 ? 最後の写真?
 1枚1枚写真をめくる。そんなに多くない写真の最後は、すぐに俺を納得させた。
 純白のウェディングドレス。
 幸せそうな笑顔。
 隣に佇む見知らぬ男。
 ああそうか、そうなのかって、手紙を顔に押し付ける。
 おめでとう。
 呟いてみる。
 幸せになれよ。
 あったり前よ! と白紙の2枚目が言っているようだった。
 無性にクリスに逢いたかった。
 もう少ししたら日が沈む。
 夜になればクリスが帰ってくる。
 歩美の話はクリスにはあまり面白いものじゃないかもしれないけど。
 でも俺が好きだった子だから。
 聞いて欲しい。
 俺とクリスを結びつけてくれた子のことだから。


 End.



最後までお付き合いありがとうございました!
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

yrpyon
2021.04.19 yrpyon

ワーホリとったあとの話が読みたいです!!

解除

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

隊長さんとボク

ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。 エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。 そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。 王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。 きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。 えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m

悠と榎本

暁エネル
BL
中学校の入学式で 衝撃を受けた このドキドキは何なのか そいつの事を 無意識に探してしまう 見ているだけで 良かったものの 2年生になり まさかの同じクラスに 俺は どうしたら・・・

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。