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七、学習(勉強する)
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あの妾妃の名前はなんといっただろうか。明玲はぼんやりと考える。
一番最初の顔合わせで名乗られたはずだが、それ以降あまり関わることがなかったので偉仁の妾妃について明玲はほとんど知らなかった。趙山琴の隣にいた妾妃は一年ほど前に嫁いできた。今は山琴のお気に入りである。
明玲に助け舟を出してくれた妾妃は確か、令妃と呼ばれていたのではなかっただろうか。明玲は自分付の侍女におそるおそる尋ねた。
侍女はため息をついた。
「明玲様、人の名前を覚えていないとは何事ですか! 奥様の隣にいらっしゃったのは夕妃、奥様を窘めてくださったのが令妃です。旦那様に嫁がれるのですからもっとしっかりなさってください!」
「はい、ごめんなさい。……って偉仁哥(偉仁兄さん)に嫁ぐのは確定事項なの……?」
侍女は眉を寄せた。
「……他の家に嫁ぎたいとでも?」
「いえ、嫌です。哥に嫁ぎたいです」
「では王(偉仁は蘇王に封じられている)の妻にふさわしくなるよう、もっとしっかり勉強なさいませ!」
「はい!」
どちらが主人なのだかさっぱりわからないが、明玲付の侍女は元々母の侍女であったのだ。彼女は明玲が偉仁に引き取られてからずっと仕えてくれている。それに感謝しながらも明玲ははっとした。
「ねぇ、周梨……そういえば、貴女いくつになったの……」
「それ以上くだらないことをおっしゃるなら、旦那様を想って書かれた恋文を全て山琴様へ献上いたしますよ?」
「うええ!? なんで? なんで周梨が知ってるの!?」
「明玲様の侍女ですから」
しれっと言われ、「お時間です」と明玲は勉強部屋へ追いやられた。明玲に勉強を教えてくれる老師たちは明玲の部屋には入らない。食堂などがある棟に老師を迎える為の勉強部屋が用意されていた。そこではまた別の侍女が控えていて、明玲と老師の世話をしてくれるのだった。
明玲が学んでいるのは四書五経のさわりの部分だ。科挙を目指しているわけではないので何度も書き写したりして一字一句覚える必要はないが、学ぶことはまだまだたくさんある。偉仁に恥をかかせない為というのもあるが、知らないよりは知った方がいいという母のふんわりとした教えにより真面目に聞くようにはしている。それでも老師の教え方によっては眠くなってしまうのだが。
基本座学は午前中に集中しているのでものすごく眠いということはないのだが、昼食後はいただけない。予習は朝食後にすればいいのだが復習をする時間は考えなければならないと明玲は思う。
昼食の席では朝とは違い他愛のない会話が終始した。それもこれも令妃のおかげだろう。明玲は目礼し、後で改めてお礼に向かわなくてはならないと思った。
昼食後は食休みをし、その後は基本自由である。明玲は礼儀作法や書などを侍女に見てもらうことが多い。天気のいい日は街へ買い物をしに行くこともあるが、今年に入ってからはまだ出ていない。
偉仁の妻になるという目標が見えたことで、明玲は更に勉強に熱心になったようだった。
それらを終えてから明玲はどうしたものかと考える。
先に令妃にお礼を言いに行くべきか、山琴とお茶をすべきだろうか。お礼を言ってすぐに立ち去れるならお礼を言ってきてもいいがそうはいかないだろう。さすがに茶の一杯も出されるに違いない。そうしたらお礼の品を持参しなくてはならないし、と明玲にとってはなかなかにハードルが高い。
「いっそのこと奥様とのお茶に令妃をお誘いしては?」
侍女に呆れたように言われ、それだ! と明玲は思った。
「周梨、ありがとう! 声を掛けてもらってもいい?」
「かしこまりました」
さすがに妾妃全員の前で昨夜の話などをするのは勘弁してほしいが、一人ぐらいならばいいと明玲は思う。妾妃たちの仲がいい場合は全て筒抜けになってしまうのだろうが、山琴を含めた五人の前で話すよりはましである。
「今日の点心は何かしら……」
明玲はのんびりと呟いた。
一番最初の顔合わせで名乗られたはずだが、それ以降あまり関わることがなかったので偉仁の妾妃について明玲はほとんど知らなかった。趙山琴の隣にいた妾妃は一年ほど前に嫁いできた。今は山琴のお気に入りである。
明玲に助け舟を出してくれた妾妃は確か、令妃と呼ばれていたのではなかっただろうか。明玲は自分付の侍女におそるおそる尋ねた。
侍女はため息をついた。
「明玲様、人の名前を覚えていないとは何事ですか! 奥様の隣にいらっしゃったのは夕妃、奥様を窘めてくださったのが令妃です。旦那様に嫁がれるのですからもっとしっかりなさってください!」
「はい、ごめんなさい。……って偉仁哥(偉仁兄さん)に嫁ぐのは確定事項なの……?」
侍女は眉を寄せた。
「……他の家に嫁ぎたいとでも?」
「いえ、嫌です。哥に嫁ぎたいです」
「では王(偉仁は蘇王に封じられている)の妻にふさわしくなるよう、もっとしっかり勉強なさいませ!」
「はい!」
どちらが主人なのだかさっぱりわからないが、明玲付の侍女は元々母の侍女であったのだ。彼女は明玲が偉仁に引き取られてからずっと仕えてくれている。それに感謝しながらも明玲ははっとした。
「ねぇ、周梨……そういえば、貴女いくつになったの……」
「それ以上くだらないことをおっしゃるなら、旦那様を想って書かれた恋文を全て山琴様へ献上いたしますよ?」
「うええ!? なんで? なんで周梨が知ってるの!?」
「明玲様の侍女ですから」
しれっと言われ、「お時間です」と明玲は勉強部屋へ追いやられた。明玲に勉強を教えてくれる老師たちは明玲の部屋には入らない。食堂などがある棟に老師を迎える為の勉強部屋が用意されていた。そこではまた別の侍女が控えていて、明玲と老師の世話をしてくれるのだった。
明玲が学んでいるのは四書五経のさわりの部分だ。科挙を目指しているわけではないので何度も書き写したりして一字一句覚える必要はないが、学ぶことはまだまだたくさんある。偉仁に恥をかかせない為というのもあるが、知らないよりは知った方がいいという母のふんわりとした教えにより真面目に聞くようにはしている。それでも老師の教え方によっては眠くなってしまうのだが。
基本座学は午前中に集中しているのでものすごく眠いということはないのだが、昼食後はいただけない。予習は朝食後にすればいいのだが復習をする時間は考えなければならないと明玲は思う。
昼食の席では朝とは違い他愛のない会話が終始した。それもこれも令妃のおかげだろう。明玲は目礼し、後で改めてお礼に向かわなくてはならないと思った。
昼食後は食休みをし、その後は基本自由である。明玲は礼儀作法や書などを侍女に見てもらうことが多い。天気のいい日は街へ買い物をしに行くこともあるが、今年に入ってからはまだ出ていない。
偉仁の妻になるという目標が見えたことで、明玲は更に勉強に熱心になったようだった。
それらを終えてから明玲はどうしたものかと考える。
先に令妃にお礼を言いに行くべきか、山琴とお茶をすべきだろうか。お礼を言ってすぐに立ち去れるならお礼を言ってきてもいいがそうはいかないだろう。さすがに茶の一杯も出されるに違いない。そうしたらお礼の品を持参しなくてはならないし、と明玲にとってはなかなかにハードルが高い。
「いっそのこと奥様とのお茶に令妃をお誘いしては?」
侍女に呆れたように言われ、それだ! と明玲は思った。
「周梨、ありがとう! 声を掛けてもらってもいい?」
「かしこまりました」
さすがに妾妃全員の前で昨夜の話などをするのは勘弁してほしいが、一人ぐらいならばいいと明玲は思う。妾妃たちの仲がいい場合は全て筒抜けになってしまうのだろうが、山琴を含めた五人の前で話すよりはましである。
「今日の点心は何かしら……」
明玲はのんびりと呟いた。
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