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十三、準備去皇都(皇都へ向かう準備)
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翌日、昼食後例によって趙山琴に厳しく指導された後、明玲はこれからのことを教えてもらった。
「明玲、清明節の前に一度明妃娘娘に会いに行きましょう。曹家にも挨拶に行くから、これからとても忙しくなるわ」
「曹家に、ですか?」
曹家とは明玲の母が嫁いだ先の家である。明妃は皇帝の後宮に入れられてしまった為、もう一生出ることはかなわない。
「ええそうよ。貴女は今は公主だからそのままでは偉仁に嫁ぐことはできないわ。だから曹家の養子に入る必要があるの」
「そうなのですね」
明玲の実の父親は曹家の現当主のはずである。そこへ養子に入るとはなんともややこしい話だ。明玲については皇帝が一度認知してしまった為、そういう形でしか親子を名乗れないからだった。
(実のお父様って、どんな方なのかしら……)
あんな、皇帝のような好色そうな男性でなければいいのだけどと明玲は思う。
「とにかく時間がないから、明日は皇都に向かって、戻り次第曹家に向けて出立するわよ。断られた時のことも考えなければならないから」
「……断られる、こともあるのですか?」
明玲は信じられないというように呟いた。山琴が頷く。
「明玲、現実は見なければならないわ。嫁が攫われたのよ? 曹家は抗議したかもしれないけど、結局は納得せざるを得なかった。それは曹家に力がないということも表しているけど、それと同時に明妃との繋がりを断つことで皇帝におもねった可能性もあるの」
「……そう、ですね。趙姐、ありがとうございます」
高揚した気持ちが一気にしぼんだ。確かに、親子を名乗るなんてそんな期待はしてはいけないのだ。
「黄家にも打診はしてあるわ。でもまずは曹家にお伺いを立てないとね」
「何から何までありがとうございます」
黄家とは明玲の母の実家である。できればそちらに頼らなくて済むようにはしたい。
明玲の立場はとても面倒くさい。それによってしなければならない手続きは多いはずだ。昨夜偉仁と山琴はそれらを吟味し、手紙をいくつも認めた。清明節までにはどうにかして明玲の立場を明確にさせる必要がある。その理由について山琴は、明玲が問題なく偉仁に嫁げるようにと言ってはいるが、もちろんそれだけではなかった。
皇都はそれほど遠くない。蘇王領から馬車で二日も走れば着く位置にある。それは偉仁の住む王都が、皇都に近い位置にあることも関係していた。
さすがに偉仁が王領を離れるわけにはいかないので山琴と共に明玲は皇都へ向かうことになった。
皇都に向かうにあたって、明玲が準備できることはあまりない。後宮への取次を頼む書類などは偉仁が手配したし、皇都に入る為の事前連絡なども終わっている。必要な荷物などは周梨を始めとした侍女たちが詰め、後は明日明玲が出かけるだけである。
そんな慌ただしい中、偉仁は明玲の為に時間をとった。
夕食の後部屋に来るよう言われ、明玲はぎこちない動きで偉仁の部屋に向かった。
お茶を飲んでから腕の中に囚われるのは決まっているようで。
「……くれぐれも気を付けていくのだぞ」
「……はい」
何度も顔に口づけられ、口腔内も舌でたっぷりと辿られた。偉仁は明玲が心配でならないようで、なかなか離してはくれなかった。
(出たくなくなってしまうから……)
明玲にとって兄の腕の中は一番安心できる場所だ。このまま全て奪ってくれればいいのにとすら思ってしまう。でもまだ明玲は成人していないし、現時点では偉仁の妹でしかない。
「そなた自身が気を付けていてもどうにもならぬことがある。その時は山琴だけでなく私の母を頼りなさい」
「芳妃娘娘を?」
「そうだ。母はそなたを気に入っている。必ずよいように取り計らってくれるはずだ」
「わかりました」
芳妃は明玲の母である明妃とよく一緒にいた。記憶の中の芳妃はいつもにこにこしていて、明玲によくお菓子をくれたものだった。偉仁がそう言うのだから、何かあったら芳妃を頼るようにしようと明玲は素直に思う。当然のことながら、できるだけ頼るようなことにはなってほしくないけれども。
翌朝、執務に向かう偉仁を見送ってから明玲と山琴は馬車に乗った。
つい一月ほど前に訪れた皇都は、何か変わっているだろうか。明玲はそんな、どうでもいいことを思った。
「明玲、清明節の前に一度明妃娘娘に会いに行きましょう。曹家にも挨拶に行くから、これからとても忙しくなるわ」
「曹家に、ですか?」
曹家とは明玲の母が嫁いだ先の家である。明妃は皇帝の後宮に入れられてしまった為、もう一生出ることはかなわない。
「ええそうよ。貴女は今は公主だからそのままでは偉仁に嫁ぐことはできないわ。だから曹家の養子に入る必要があるの」
「そうなのですね」
明玲の実の父親は曹家の現当主のはずである。そこへ養子に入るとはなんともややこしい話だ。明玲については皇帝が一度認知してしまった為、そういう形でしか親子を名乗れないからだった。
(実のお父様って、どんな方なのかしら……)
あんな、皇帝のような好色そうな男性でなければいいのだけどと明玲は思う。
「とにかく時間がないから、明日は皇都に向かって、戻り次第曹家に向けて出立するわよ。断られた時のことも考えなければならないから」
「……断られる、こともあるのですか?」
明玲は信じられないというように呟いた。山琴が頷く。
「明玲、現実は見なければならないわ。嫁が攫われたのよ? 曹家は抗議したかもしれないけど、結局は納得せざるを得なかった。それは曹家に力がないということも表しているけど、それと同時に明妃との繋がりを断つことで皇帝におもねった可能性もあるの」
「……そう、ですね。趙姐、ありがとうございます」
高揚した気持ちが一気にしぼんだ。確かに、親子を名乗るなんてそんな期待はしてはいけないのだ。
「黄家にも打診はしてあるわ。でもまずは曹家にお伺いを立てないとね」
「何から何までありがとうございます」
黄家とは明玲の母の実家である。できればそちらに頼らなくて済むようにはしたい。
明玲の立場はとても面倒くさい。それによってしなければならない手続きは多いはずだ。昨夜偉仁と山琴はそれらを吟味し、手紙をいくつも認めた。清明節までにはどうにかして明玲の立場を明確にさせる必要がある。その理由について山琴は、明玲が問題なく偉仁に嫁げるようにと言ってはいるが、もちろんそれだけではなかった。
皇都はそれほど遠くない。蘇王領から馬車で二日も走れば着く位置にある。それは偉仁の住む王都が、皇都に近い位置にあることも関係していた。
さすがに偉仁が王領を離れるわけにはいかないので山琴と共に明玲は皇都へ向かうことになった。
皇都に向かうにあたって、明玲が準備できることはあまりない。後宮への取次を頼む書類などは偉仁が手配したし、皇都に入る為の事前連絡なども終わっている。必要な荷物などは周梨を始めとした侍女たちが詰め、後は明日明玲が出かけるだけである。
そんな慌ただしい中、偉仁は明玲の為に時間をとった。
夕食の後部屋に来るよう言われ、明玲はぎこちない動きで偉仁の部屋に向かった。
お茶を飲んでから腕の中に囚われるのは決まっているようで。
「……くれぐれも気を付けていくのだぞ」
「……はい」
何度も顔に口づけられ、口腔内も舌でたっぷりと辿られた。偉仁は明玲が心配でならないようで、なかなか離してはくれなかった。
(出たくなくなってしまうから……)
明玲にとって兄の腕の中は一番安心できる場所だ。このまま全て奪ってくれればいいのにとすら思ってしまう。でもまだ明玲は成人していないし、現時点では偉仁の妹でしかない。
「そなた自身が気を付けていてもどうにもならぬことがある。その時は山琴だけでなく私の母を頼りなさい」
「芳妃娘娘を?」
「そうだ。母はそなたを気に入っている。必ずよいように取り計らってくれるはずだ」
「わかりました」
芳妃は明玲の母である明妃とよく一緒にいた。記憶の中の芳妃はいつもにこにこしていて、明玲によくお菓子をくれたものだった。偉仁がそう言うのだから、何かあったら芳妃を頼るようにしようと明玲は素直に思う。当然のことながら、できるだけ頼るようなことにはなってほしくないけれども。
翌朝、執務に向かう偉仁を見送ってから明玲と山琴は馬車に乗った。
つい一月ほど前に訪れた皇都は、何か変わっているだろうか。明玲はそんな、どうでもいいことを思った。
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