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二一、黄砂

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 偉仁は少しずつ明玲に触れる範囲を広げていく。きっとこうして、嫁ぐ頃には偉仁から与えられる快感に逃れられなくなっているのかもしれないと明玲は頬を赤く染めた。
 偉仁は明玲の乳首がお気に入りらしく、普段は隠れているそれを吸いだして毎回ぷくりとさせる。それを舐め、吸い、甘噛みし、ととにかく赤く色づくまでたっぷり愛でるのだ。もう片方の乳首には唾液を垂らし指先で優しくこねる。そうやって偉仁は明玲の身体を望むように作り変えていくようだった。

(なんていうか、もう……すごくいやらしい……)

 それは毎回入浴前に行われるので、入浴時にぷくりと膨らんだ乳首を侍女に見られるのが明玲はとても恥ずかしかった。侍女たちはそんな明玲を微笑ましく見守っている。
 そんな暮らしをしている間に砂が飛び始めた。本格的な春を告げる砂は黄色く、最初の頃はそれほどではないがやがて世界を黄色く染めてしまう。そうなると部屋の扉を開けることなどできず、下男下女の仕事が増えるのだった。
 偉仁が住んでいる館は王城の一角とはいえ、移動の際はどうしても砂に触れる。さすがに偉仁も帰宅してからすぐ入浴するようになった。
 それでも皇都よりはましな方だと偉仁は言う。

「皇都の北西をずっといったところに砂漠があるのだ。その砂が巻き上がって飛んでくるのだろうが、ここはまだ少ない方だ。皇都は今頃たいへんであろう」
「? どうしてそのような気候条件の悪いところに皇都があるのでしょうか?」
「風水の関係であろうな」

 わかったようなわからないような不思議な話だと明玲は思う。そして皇都の方向を見やる。母が難儀していなければよいと明玲は思った。
 偉仁の部屋には毎晩のように呼ばれてはいるが、すぐにベッドに運ばれてしまう日と、こうして穏やかに話をしてから床に連れて行かれる時があった。どちらにせよ床に押し倒されてしまうのだが、明玲はこんな風に二人きりで話ができることが嬉しかった。

「砂漠とはどんなところなのでしょう? 砂だけしかないとは聞いていますがとても想像できません」
「正確には砂と岩石だな。この辺りよりは少ないが雨が降ることもあるし、水が少ないところでも生きていけるような植物が生えている場合もある。住んでいる生き物もいるし、水のあるオアシスと呼ばれる場所もある。旅に出たいとは思わぬが、一度ぐらいこの目で見てみたいものだ」
「雨が降るなんて知りませんでした」

 明玲は偉仁の知識に感心した。老師たちから学んだことで不明なところも偉仁に聞けばかみ砕いて教えてくれる。本音を言えば偉仁に全て教えてほしいぐらいだが、兄はとにかく忙しい。それでもできるだけ毎日帰ってきてくれるのだからこれ以上わがままを言ってはいけないと明玲は思った。
 砂が飛んでくる時期が過ぎるとだんだん暑くなってくる。陽射しが強くなり、清明節も近い。
 日が近づくにつれ、明玲はだんだん緊張してきた。皇帝は明玲を呼んだと聞く。いったい何の用があるのかと不安に思った。

(もしかして、私の結婚相手が決まったとか……?)

 皇帝自らが公主の嫁ぎ先を決めるなどということはありえないと明玲は思う。ただ、公主に嫁いでほしいと望む家はそれなりにあるのかもしれない。その家がある程度力を持っていたならば、皇帝に取り入ることもできるのではないだろうか。

(だから、偉仁哥ウェイレングァは急いでいたのね)

 ようやくそのことに思い至り、明玲はあまりの恥ずかしさに赤くなった。趙山琴が逃げるように皇城から出たのもそれが理由かもしれない。

(とても足を向けて寝れない……)

 なんと自分は愚かなのだろう。明玲は少しだけ泣きたくなった。
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