272 / 653
第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
118.いろいろハードルが高すぎると思うのです
しおりを挟む
まだ春の大祭の期間中ではあるが四神と香子が顔を出す必要はもうない。確か日を改めて皇帝が天壇へ向かうと聞いてはいたがそれが大祭の期間中なのか、別の時なのかもわからなかった。
(私には関係ないよね)
昨日はエロ三昧だった。香子は嘆息する。大祭三日目である。大祭期間中は屋台などいろんな店が出ることから、王城の中も浮ついているような気がする。せっかくの大祭なので、こちらのことは気にせず侍女たちに休みを取らせるようにと、香子は趙文英に伝えていた。延夕玲は皇太后のところへ顔を出したりはしたようだが、基本は香子の部屋にいた。ただそれを侍女たちもプレッシャーとは感じなかったようで、思い思いに休んでくれたようだった。おそらく侍女頭と相談したりもしてくれたのだろう。
異国からの客人である紅児もまた大祭初日以降は香子の部屋にいたようだった。一緒に出かける相手が紅夏というのは気に入らないが、この国での暮らしをもっと楽しんでほしいと香子は思う。
『エリーザは客人なのだから……もっと休んでもいいのよ?』
というより紅児はもっと自由でいいと香子は思っているのだが、紅児は笑顔で応えるだけだった。本人がいいと言っているのに無理にでも休ませる必要はないだろう。香子はそれについて考えるのはやめた。
昨日は順番から言えば白虎と過ごす日だったが、起きたのが夜だったので今日共に過ごすことにしていた。
(モフりたい……)
しかし本性を現した白虎に触れるにはリスクがある。
(獣姦はさすがになぁ……)
いくらなんでも、と香子は眉を寄せる。
『香子?』
長椅子で抱き込まれていたので、さすがの白虎も香子の表情の変化に気づいたらしい。
『いえ……大祭で、朱雀さまと青龍さまの本性を見たことを思い出しまして』
『そうか』
『朱雀さまも青龍さまもすごく大きかったです』
それに比べると白虎は白銀の美しい毛並みをしているがサイズはそれほどでもないと香子は思った。
『玄武さまも大きいのでしょうか』
白虎がククッと喉の奥で笑った。
『ここだけの話だが、我らは本性の大きさを変えることができる』
『え?』
サイズ変更ができるとはどういうことかと香子は首を傾げた。
『この室に納まるくらいの大きさになることもできれば、この王城全体を覆うぐらいになることも可能だ』
『えええ?』
確かに言われてみれば、ちょうどよく天壇の広場の半分に納まるようなサイズになっていた。二神は本性を現した時微妙なサイズ修正を行っていたらしい。大きく、威厳があり、人間が畏敬の念を抱くような形を演出していたとは四神恐るべしである。
『って、ことは白虎さまも?』
『ああ。人の身に合わせてもあれぐらいにしかならぬがな』
ものすごく小さくなったりはできないようである。その本性について、香子はあることを思い出した。
『あのう……もしかして白虎さまも、本性を現していた時って私の考えとか読めました?』
もふもふサイコー! とかふおっふおっとなっていたのがバレるのはさすがにまずい。白虎のことだから読めていたとしても気にしないだろうが、香子にとっては大問題だった。白虎は少しだけ考えるような顔をした。
『ふむ……そなたから喜びの感情は伝わってきたが、考えまではわからぬな』
『なら、よかったです……』
四神に触れている状態で意識をすれば香子が思っていることを伝えることはできる。だが朱雀が本性を現していた時、香子が何を思っていたかはダダ漏れだった。だから白虎の毛を撫でていた時もそうだったのではないかと思ったが、どうも違うらしい。
(何が違うのかしら?)
首を傾げて白虎の逞しい腕を抱きしめる。男の腕なので固いのだがなんとなく落ち着くのだ。
『朱雀兄はそなたの考えが読めたのか』
『はい。なんとなく思ったことまで全部わかっていたみたいです』
『そうか』
白虎は何やら納得したように軽く頷くと、香子を抱き上げた。
『白虎さま?』
『香子、我と朱雀兄の違いはなんだ?』
『? 髪の色も目の色も違うと思いますけど……』
なんだか不穏なものを感じて香子はごまかすように答えた。
『それもそうだが、一番の違いはな』
白虎の足が寝室に向く。さすがにこれはまずいと香子は慌てた。
『我がまだそなたを抱いていないということだ』
『ムリッ! ごめんなさいまだムリです! いずれ、いずれ真面目に考えますから勘弁してください!』
寝室の床に優しく下ろされる。
『青龍もすでに受け入れたであろう。我を阻む理由はもうどこにもないはずだ』
『獣姦はムリです!! 心構えがないです! 今奪われたら白虎さまのこと大嫌いになりますーっ!!』
必死で白虎を押しのけようとする香子の様子に、さすがにしょうがないと思ったらしい。
『落ち着け』
白虎はいつになく甘い仕草で額や鼻、髪などに軽い口付けを何度も落とした。
『白虎さま……』
『中秋節は秋の大祭だな』
『は、はい……ありがとう、ございます……』
秋までは待つ、と暗に伝えてくれたのだろう。香子は胸を撫で下ろした。
(秋の大祭……出ないわけにいかないものね)
まだ先ではあるが、それでも三、四ヶ月しかない。
(好きは、好きなんだけど……)
白虎を受け入れるにはまだハードルが高かった。
ーーーーー
「貴方色に染まる」32話辺りです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
(私には関係ないよね)
昨日はエロ三昧だった。香子は嘆息する。大祭三日目である。大祭期間中は屋台などいろんな店が出ることから、王城の中も浮ついているような気がする。せっかくの大祭なので、こちらのことは気にせず侍女たちに休みを取らせるようにと、香子は趙文英に伝えていた。延夕玲は皇太后のところへ顔を出したりはしたようだが、基本は香子の部屋にいた。ただそれを侍女たちもプレッシャーとは感じなかったようで、思い思いに休んでくれたようだった。おそらく侍女頭と相談したりもしてくれたのだろう。
異国からの客人である紅児もまた大祭初日以降は香子の部屋にいたようだった。一緒に出かける相手が紅夏というのは気に入らないが、この国での暮らしをもっと楽しんでほしいと香子は思う。
『エリーザは客人なのだから……もっと休んでもいいのよ?』
というより紅児はもっと自由でいいと香子は思っているのだが、紅児は笑顔で応えるだけだった。本人がいいと言っているのに無理にでも休ませる必要はないだろう。香子はそれについて考えるのはやめた。
昨日は順番から言えば白虎と過ごす日だったが、起きたのが夜だったので今日共に過ごすことにしていた。
(モフりたい……)
しかし本性を現した白虎に触れるにはリスクがある。
(獣姦はさすがになぁ……)
いくらなんでも、と香子は眉を寄せる。
『香子?』
長椅子で抱き込まれていたので、さすがの白虎も香子の表情の変化に気づいたらしい。
『いえ……大祭で、朱雀さまと青龍さまの本性を見たことを思い出しまして』
『そうか』
『朱雀さまも青龍さまもすごく大きかったです』
それに比べると白虎は白銀の美しい毛並みをしているがサイズはそれほどでもないと香子は思った。
『玄武さまも大きいのでしょうか』
白虎がククッと喉の奥で笑った。
『ここだけの話だが、我らは本性の大きさを変えることができる』
『え?』
サイズ変更ができるとはどういうことかと香子は首を傾げた。
『この室に納まるくらいの大きさになることもできれば、この王城全体を覆うぐらいになることも可能だ』
『えええ?』
確かに言われてみれば、ちょうどよく天壇の広場の半分に納まるようなサイズになっていた。二神は本性を現した時微妙なサイズ修正を行っていたらしい。大きく、威厳があり、人間が畏敬の念を抱くような形を演出していたとは四神恐るべしである。
『って、ことは白虎さまも?』
『ああ。人の身に合わせてもあれぐらいにしかならぬがな』
ものすごく小さくなったりはできないようである。その本性について、香子はあることを思い出した。
『あのう……もしかして白虎さまも、本性を現していた時って私の考えとか読めました?』
もふもふサイコー! とかふおっふおっとなっていたのがバレるのはさすがにまずい。白虎のことだから読めていたとしても気にしないだろうが、香子にとっては大問題だった。白虎は少しだけ考えるような顔をした。
『ふむ……そなたから喜びの感情は伝わってきたが、考えまではわからぬな』
『なら、よかったです……』
四神に触れている状態で意識をすれば香子が思っていることを伝えることはできる。だが朱雀が本性を現していた時、香子が何を思っていたかはダダ漏れだった。だから白虎の毛を撫でていた時もそうだったのではないかと思ったが、どうも違うらしい。
(何が違うのかしら?)
首を傾げて白虎の逞しい腕を抱きしめる。男の腕なので固いのだがなんとなく落ち着くのだ。
『朱雀兄はそなたの考えが読めたのか』
『はい。なんとなく思ったことまで全部わかっていたみたいです』
『そうか』
白虎は何やら納得したように軽く頷くと、香子を抱き上げた。
『白虎さま?』
『香子、我と朱雀兄の違いはなんだ?』
『? 髪の色も目の色も違うと思いますけど……』
なんだか不穏なものを感じて香子はごまかすように答えた。
『それもそうだが、一番の違いはな』
白虎の足が寝室に向く。さすがにこれはまずいと香子は慌てた。
『我がまだそなたを抱いていないということだ』
『ムリッ! ごめんなさいまだムリです! いずれ、いずれ真面目に考えますから勘弁してください!』
寝室の床に優しく下ろされる。
『青龍もすでに受け入れたであろう。我を阻む理由はもうどこにもないはずだ』
『獣姦はムリです!! 心構えがないです! 今奪われたら白虎さまのこと大嫌いになりますーっ!!』
必死で白虎を押しのけようとする香子の様子に、さすがにしょうがないと思ったらしい。
『落ち着け』
白虎はいつになく甘い仕草で額や鼻、髪などに軽い口付けを何度も落とした。
『白虎さま……』
『中秋節は秋の大祭だな』
『は、はい……ありがとう、ございます……』
秋までは待つ、と暗に伝えてくれたのだろう。香子は胸を撫で下ろした。
(秋の大祭……出ないわけにいかないものね)
まだ先ではあるが、それでも三、四ヶ月しかない。
(好きは、好きなんだけど……)
白虎を受け入れるにはまだハードルが高かった。
ーーーーー
「貴方色に染まる」32話辺りです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
14
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる