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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
147.どうしても守りたい人(黒月視点)
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我は花嫁さまの守護である。常に花嫁さまの側に控え、何よりも花嫁さまを優先し、この命に替えてもお守りする。
玄武さまと朱雀さまに抱かれ、落ち着かれるかと思っていたら情緒がより不安定になっている。何故だろうと白雲兄に尋ねたら、花嫁は四神全てに抱かれることによって精神の安定をはかるのだと言われた。
ただ玄武さまと添い遂げればいいというものではないらしいと知り、我はよりいっそう花嫁さまを守らなければならないと思った。
けれど。
香子に女官がついた。皇太后の肝入りだという。
何故皇帝の母親が香子の暮らしにケチをつけるのか黒月にはわからなかった。
「いろいろな立場というものがあるのよ」
香子に苦笑しながら言われたが黒月には理解できない。とはいえ香子にそんなことを問い詰めてもしかたないので女官として来た延夕玲と話すことにした。
延は比較的冷静で、真面目な少女だった。
この国ではすでに成人しているらしいが、黒月からしたら四神宮の侍女たちよりも危うく映った。
”守護”というものを彼女は知らなかったようなので黒月は説明をした。守護は基本花嫁が部屋に入れば部屋の表で控えているものである。それは香子に中に入るように言われても変わることはない。
「黒月さんは退屈じゃない?」
「退屈なのでしたら玄武さまをお呼びしましょうか?」
「……呼ばなくて大丈夫です」
”さん”をつけないように言っているのに香子はたびたび”黒月さん”と呼ぶ。守護に”さん”付けなどしたら締まらないではないか。
黒月から見て香子はとても危うい。すぐいろいろなことに巻き込まれるし、ひどくお人よしだ。だからあまり好きではない入浴も二、三日に一度は共にしている。香子はまだ延には遠慮しているが黒月には甘えてくる。それが心地よくてついつい言うことを聞いてしまう。
延は皇太后に言われて四神宮に来たが、白虎に気があるのかどうか様子を見てほしいと香子に言われた。侍女頭の陳秀美と顔を見合わせる。
「……我には全くそのような様子は見られないのだが……」
「そうですね。私にもそんな風には全く見えませんでしたが……あ、でも」
陳が何か思い出したような顔をした。
「申せ」
「は、はい。気のせいかもしれませんが」
「前置きはいい」
「その、白虎さまではなく白雲さまを見る延さんの目が……。あと、延さんがいらっしゃるところでよく青藍さまを見かけるのですが……」
「なんだと?」
延が白虎に懸想していなければそれでいいが、青藍が延の側に現れるというのはただ事ではない。
(もしや……”つがい”なのでは……)
それを知ったところで黒月には直接関係はないし、香子に知らせる必要もないだろうと判断する。
「黒月さま、その、こういったことは青藍さまに確認して花嫁さまに報告する必要はないのでしょうか?」
「? その必要があるのか?」
「延さんは老佛爷の親戚に当たります。良家の子女の結婚は親が決めるものです。青藍さまとそういう関係になったとしたら……」
「人というのは面倒だな。もし延が青藍兄のつがいであったなら人の事情など関係ないと知れ。そなたもそうであろう」
「はい、そうですね……」
とはいえまだはっきりしたことではない。黒月の予想では延は十中八九青藍のつがいだが。
それからまた何日かするとより関係がはっきりしてきた。どうも延は白雲に懸想していたらしい。そして予想通り青藍のつがいであった。
そのことを知った香子がとんでもなく憤ったことが黒月には意外だった。
「世界も国も立場も違うんだからってのはわかるんだけど~」
「…………」
風呂で独り言を呟く香子に的確な返答をできた試しはない。何度か共に入浴していると香子がどうしてほしいのかということがだんだんわかってくる。香子はただ聞いてほしいだけなのだ。そこになんらかの返答が欲しい場合はちらちらとこちらを窺うからわかる。
「四神の眷属のつがいなんて名誉よね。でもなぁ~でもなぁ~」
今回は特に答えは求めていないらしい。
「出ます」
「えー、黒月さん冷たい」
「どうしろと」
それから香子は皇太后に茶会に招かれたりした。参加する必要はないだろうと黒月は思ったが、そうはいかないらしい。とにかく人というのは面倒だ。
茶会を終えてからも香子は延のことを気にしていた。いいかげん相手をするのもうんざりしてきてはいたが、香子が自分自身の不安定さに目を向けなくてすむならばそれでいいと思いそれなりに相手していた。
それなのに。
いざ香子がそうなった時、何もできない己に黒月は歯噛みした。
どうか。
どうか花嫁さまが。
どうか。
どうか。
どうかただ、憂いなく。
それは、祈りにも似て。
ーーーーー
第二部33話~53話辺りの黒月でした。
玄武さまと朱雀さまに抱かれ、落ち着かれるかと思っていたら情緒がより不安定になっている。何故だろうと白雲兄に尋ねたら、花嫁は四神全てに抱かれることによって精神の安定をはかるのだと言われた。
ただ玄武さまと添い遂げればいいというものではないらしいと知り、我はよりいっそう花嫁さまを守らなければならないと思った。
けれど。
香子に女官がついた。皇太后の肝入りだという。
何故皇帝の母親が香子の暮らしにケチをつけるのか黒月にはわからなかった。
「いろいろな立場というものがあるのよ」
香子に苦笑しながら言われたが黒月には理解できない。とはいえ香子にそんなことを問い詰めてもしかたないので女官として来た延夕玲と話すことにした。
延は比較的冷静で、真面目な少女だった。
この国ではすでに成人しているらしいが、黒月からしたら四神宮の侍女たちよりも危うく映った。
”守護”というものを彼女は知らなかったようなので黒月は説明をした。守護は基本花嫁が部屋に入れば部屋の表で控えているものである。それは香子に中に入るように言われても変わることはない。
「黒月さんは退屈じゃない?」
「退屈なのでしたら玄武さまをお呼びしましょうか?」
「……呼ばなくて大丈夫です」
”さん”をつけないように言っているのに香子はたびたび”黒月さん”と呼ぶ。守護に”さん”付けなどしたら締まらないではないか。
黒月から見て香子はとても危うい。すぐいろいろなことに巻き込まれるし、ひどくお人よしだ。だからあまり好きではない入浴も二、三日に一度は共にしている。香子はまだ延には遠慮しているが黒月には甘えてくる。それが心地よくてついつい言うことを聞いてしまう。
延は皇太后に言われて四神宮に来たが、白虎に気があるのかどうか様子を見てほしいと香子に言われた。侍女頭の陳秀美と顔を見合わせる。
「……我には全くそのような様子は見られないのだが……」
「そうですね。私にもそんな風には全く見えませんでしたが……あ、でも」
陳が何か思い出したような顔をした。
「申せ」
「は、はい。気のせいかもしれませんが」
「前置きはいい」
「その、白虎さまではなく白雲さまを見る延さんの目が……。あと、延さんがいらっしゃるところでよく青藍さまを見かけるのですが……」
「なんだと?」
延が白虎に懸想していなければそれでいいが、青藍が延の側に現れるというのはただ事ではない。
(もしや……”つがい”なのでは……)
それを知ったところで黒月には直接関係はないし、香子に知らせる必要もないだろうと判断する。
「黒月さま、その、こういったことは青藍さまに確認して花嫁さまに報告する必要はないのでしょうか?」
「? その必要があるのか?」
「延さんは老佛爷の親戚に当たります。良家の子女の結婚は親が決めるものです。青藍さまとそういう関係になったとしたら……」
「人というのは面倒だな。もし延が青藍兄のつがいであったなら人の事情など関係ないと知れ。そなたもそうであろう」
「はい、そうですね……」
とはいえまだはっきりしたことではない。黒月の予想では延は十中八九青藍のつがいだが。
それからまた何日かするとより関係がはっきりしてきた。どうも延は白雲に懸想していたらしい。そして予想通り青藍のつがいであった。
そのことを知った香子がとんでもなく憤ったことが黒月には意外だった。
「世界も国も立場も違うんだからってのはわかるんだけど~」
「…………」
風呂で独り言を呟く香子に的確な返答をできた試しはない。何度か共に入浴していると香子がどうしてほしいのかということがだんだんわかってくる。香子はただ聞いてほしいだけなのだ。そこになんらかの返答が欲しい場合はちらちらとこちらを窺うからわかる。
「四神の眷属のつがいなんて名誉よね。でもなぁ~でもなぁ~」
今回は特に答えは求めていないらしい。
「出ます」
「えー、黒月さん冷たい」
「どうしろと」
それから香子は皇太后に茶会に招かれたりした。参加する必要はないだろうと黒月は思ったが、そうはいかないらしい。とにかく人というのは面倒だ。
茶会を終えてからも香子は延のことを気にしていた。いいかげん相手をするのもうんざりしてきてはいたが、香子が自分自身の不安定さに目を向けなくてすむならばそれでいいと思いそれなりに相手していた。
それなのに。
いざ香子がそうなった時、何もできない己に黒月は歯噛みした。
どうか。
どうか花嫁さまが。
どうか。
どうか。
どうかただ、憂いなく。
それは、祈りにも似て。
ーーーーー
第二部33話~53話辺りの黒月でした。
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