異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
301 / 653
第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました

147.どうしても守りたい人(黒月視点)

しおりを挟む
 我は花嫁さまの守護である。常に花嫁さまの側に控え、何よりも花嫁さまを優先し、この命に替えてもお守りする。
 玄武さまと朱雀さまに抱かれ、落ち着かれるかと思っていたら情緒がより不安定になっている。何故だろうと白雲兄に尋ねたら、花嫁は四神全てに抱かれることによって精神の安定をはかるのだと言われた。
 ただ玄武さまと添い遂げればいいというものではないらしいと知り、我はよりいっそう花嫁さまを守らなければならないと思った。
 けれど。

 
 香子に女官がついた。皇太后の肝入りだという。
 何故皇帝の母親が香子の暮らしにケチをつけるのか黒月にはわからなかった。

「いろいろな立場というものがあるのよ」

 香子に苦笑しながら言われたが黒月には理解できない。とはいえ香子にそんなことを問い詰めてもしかたないので女官として来た延夕玲と話すことにした。
 延は比較的冷静で、真面目な少女だった。
 この国ではすでに成人しているらしいが、黒月からしたら四神宮の侍女たちよりも危うく映った。
”守護”というものを彼女は知らなかったようなので黒月は説明をした。守護は基本花嫁が部屋に入れば部屋の表で控えているものである。それは香子に中に入るように言われても変わることはない。

「黒月さんは退屈じゃない?」
「退屈なのでしたら玄武さまをお呼びしましょうか?」
「……呼ばなくて大丈夫です」

”さん”をつけないように言っているのに香子はたびたび”黒月さん”と呼ぶ。守護に”さん”付けなどしたら締まらないではないか。
 黒月から見て香子はとても危うい。すぐいろいろなことに巻き込まれるし、ひどくお人よしだ。だからあまり好きではない入浴も二、三日に一度は共にしている。香子はまだ延には遠慮しているが黒月には甘えてくる。それが心地よくてついつい言うことを聞いてしまう。
 延は皇太后に言われて四神宮に来たが、白虎に気があるのかどうか様子を見てほしいと香子に言われた。侍女頭の陳秀美と顔を見合わせる。

「……我には全くそのような様子は見られないのだが……」
「そうですね。私にもそんな風には全く見えませんでしたが……あ、でも」

 陳が何か思い出したような顔をした。

「申せ」
「は、はい。気のせいかもしれませんが」
「前置きはいい」
「その、白虎さまではなく白雲さまを見る延さんの目が……。あと、延さんがいらっしゃるところでよく青藍さまを見かけるのですが……」
「なんだと?」

 延が白虎に懸想していなければそれでいいが、青藍が延の側に現れるというのはただ事ではない。

(もしや……”つがい”なのでは……)

 それを知ったところで黒月には直接関係はないし、香子に知らせる必要もないだろうと判断する。

「黒月さま、その、こういったことは青藍さまに確認して花嫁さまに報告する必要はないのでしょうか?」
「? その必要があるのか?」
「延さんは老佛爷の親戚に当たります。良家の子女の結婚は親が決めるものです。青藍さまとそういう関係になったとしたら……」
「人というのは面倒だな。もし延が青藍兄のつがいであったなら人の事情など関係ないと知れ。そなたもそうであろう」
「はい、そうですね……」

 とはいえまだはっきりしたことではない。黒月の予想では延は十中八九青藍のつがいだが。
 それからまた何日かするとより関係がはっきりしてきた。どうも延は白雲に懸想していたらしい。そして予想通り青藍のつがいであった。
 そのことを知った香子がとんでもなく憤ったことが黒月には意外だった。

「世界も国も立場も違うんだからってのはわかるんだけど~」
「…………」

 風呂で独り言を呟く香子に的確な返答をできた試しはない。何度か共に入浴していると香子がどうしてほしいのかということがだんだんわかってくる。香子はただ聞いてほしいだけなのだ。そこになんらかの返答が欲しい場合はちらちらとこちらを窺うからわかる。

「四神の眷属のつがいなんて名誉よね。でもなぁ~でもなぁ~」

 今回は特に答えは求めていないらしい。

「出ます」
「えー、黒月さん冷たい」
「どうしろと」

 それから香子は皇太后に茶会に招かれたりした。参加する必要はないだろうと黒月は思ったが、そうはいかないらしい。とにかく人というのは面倒だ。
 茶会を終えてからも香子は延のことを気にしていた。いいかげん相手をするのもうんざりしてきてはいたが、香子が自分自身の不安定さに目を向けなくてすむならばそれでいいと思いそれなりに相手していた。
 それなのに。
 いざ香子がなった時、何もできない己に黒月は歯噛みした。


 どうか。
 どうか花嫁さまが。
 どうか。
 どうか。
 どうかただ、憂いなく。
 
 
 それは、祈りにも似て。




ーーーーー
第二部33話~53話辺りの黒月でした。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...