324 / 653
第3部 周りと仲良くしろと言われました
21.夢の中にいるようだと思った時もありました
しおりを挟む
万春亭の楼台から、香子はじっと王城とその先に広がる王都を眺めた。白虎と朱雀はその大きさを変え、香子を挟むようにして傍らにある。
白虎を椅子代わりにして、燃えているような羽毛の朱雀に寄り添われる。なんという贅沢なのかと香子は思う。
白虎はいつもの、香子を包み込めるような大きさだ。朱雀は飛んでいた時と違い、白虎と同じような大きさにその身体を縮めている。普段の朱雀よりももちろんその姿は大きく、いろいろな赤の羽毛で抱きしめられていると安心感を覚えた。
(はう~もふもふ~もふもふがいっぱい~~)
白虎の毛も朱雀の羽毛もとても気持ちいい。玄武は亀だし青龍は龍だから触れてもこんなに気持ちよくはないだろう。そう思うと朱雀と白虎に挟まれるのは貴重だと思った。
『……そなに我の羽が好きか』
『……白虎様の毛も、朱雀様の羽毛もすごく気持ちいいです……』
うっとりしながら素直に答えると、何故か二神が詰まった。
『……そなにかわいいことを言うと、抱いてしまうぞ……?』
『? え? なんで……』
朱雀の声が色を含んだ。白虎はグルル……と何かに耐えているように唸る。いったい何が二人に発情を促してしまったのだろう。香子は慌てた。
『あのっ……王城の上とか、街の上とか飛ぶことはできますか? もちろん誰にも見られないように……』
『……ああ、できる』
『香子、そなたには隙がありすぎる』
二神はため息混じりにそう言うと、改めて香子を白虎の背に乗せ、景山から流れるように下りた。暗くてほとんど何も見えないが、夜の空気感とか、王城の上を飛ぶ非日常に香子の心は踊った。
『すごいすごい……私、本当に外にいるんですね……』
無意識のうちにぽろりと涙が流れた。香子は基本引きこもりだったから四神宮の中にいることはそれほど苦ではなかった。でも出てはいけないと言われたら出たくなるものではないか。元の世界の大陸とは異なるから、一人で抜け出したら何が起こるかわからなかったから出なかっただけだ。
紅児の境遇は同情に値する。でも休みの日に紅夏とデートすることができるなんて、とないものねだりをしてしまう。そんな自分が香子は嫌だった。
『……そなたが望むなら、どこへでも連れて行こう』
白虎の言葉が嬉しかった。きっと香子がもう王城にはいたくないと、誰かの領地に行きたいと望めばすぐにその願いは叶うのだろう。でも自由に外に出たいから誰かに決めるというのは違うと思うのだ。
ぽろぽろと涙がこぼれる。己はとても不安定なのだと香子は改めて自覚した。
もうだいぶ遅い時間なので王都の店もほとんど閉まっている。人通りももうあまり見られない。香子はそれらを眺めながら、自分は世界に閉じ込められてしまったような気になった。香子はぎゅっと白虎に抱き着いた。情けない話だが、本当の意味で香子の側にあってくれるのは四神だけだと理解する。
(寂しさとか、そんなことで抱かれてもいいのかな……。それは失礼じゃないのかな……)
処女ではないが、香子はまだ元の世界での倫理観に囚われていた。
(みんな、私の旦那様なんだよね……?)
四神全員が香子の夫なのだと言われてもまだ信じられない。そしてその四神の妻が香子だけなのだということも。
(私って面倒くさいな……)
自分でも自分自身が面倒臭いと香子は思う。それは言ってしまえば未知への恐怖だった。全員を夫として受け入れるなんて、これまで考えたことなどなかったから。
(夢じゃ、ないんだよね……?)
長い、長い夢を見ているようだと夜の景色を見ながら思う。今はっと目が覚めたら北京の寮の部屋にいてもおかしくはないと時折思うのだ。
『夢ではないぞ。そなたはここにいて、我らもずっとそなたの側にいる』
白虎からの応えに香子は驚いた。そういえば本性を現した身体に香子が触れていると、感覚が研ぎ澄まされて考えていることがわかると朱雀が言っていたような気がした。
『……(心の声を)聞いていたなら教えてくれればよかったのに……』
香子は真っ赤になって白虎の毛に顔を埋めた。そんなことをしても現状は変わらないが、とにかくいたたまれなかったのだ。
『……我はまだ細かくはわからぬ。どれだけそなたと想いを交わしたによっても違うだろう。……どのような理由でも早くそなたを抱きたいと思ってはいるがな』
『~~~~っっ!!』
しっかりわかっているではないか。香子は更に白虎の毛に顔を埋めた。
(もー無理……穴掘って埋まりたい……)
『……そなたの中をいっぱいにしたいものだ』
香子は無言でべちべちと白虎の背を叩いた。本当にデリカシーがない。
『……よくそんなことで女性が抱けましたね……?』
『神に抱かれるというだけで盛り上がっていたぞ』
『……ああそうですか』
確かに相手は神様で、しかもありえないほどの美丈夫。ただの性欲処理であってもみな喜んで相手をしたに違いなかった。
『……もう少し気遣いをしましょうよ。白虎様の他に三柱も素敵な神様がいらっしゃるんですから』
『……それもそうだな』
白虎は素直に同意した。そして香子はぐるうりぐるうりと王都の上を飛んでもらった。
なんともそれは幻想的で、香子はまたぽろりと涙をこぼした。
ーーーーー
本性になるとうんぬんは第二部111話参照のこと。
白虎を椅子代わりにして、燃えているような羽毛の朱雀に寄り添われる。なんという贅沢なのかと香子は思う。
白虎はいつもの、香子を包み込めるような大きさだ。朱雀は飛んでいた時と違い、白虎と同じような大きさにその身体を縮めている。普段の朱雀よりももちろんその姿は大きく、いろいろな赤の羽毛で抱きしめられていると安心感を覚えた。
(はう~もふもふ~もふもふがいっぱい~~)
白虎の毛も朱雀の羽毛もとても気持ちいい。玄武は亀だし青龍は龍だから触れてもこんなに気持ちよくはないだろう。そう思うと朱雀と白虎に挟まれるのは貴重だと思った。
『……そなに我の羽が好きか』
『……白虎様の毛も、朱雀様の羽毛もすごく気持ちいいです……』
うっとりしながら素直に答えると、何故か二神が詰まった。
『……そなにかわいいことを言うと、抱いてしまうぞ……?』
『? え? なんで……』
朱雀の声が色を含んだ。白虎はグルル……と何かに耐えているように唸る。いったい何が二人に発情を促してしまったのだろう。香子は慌てた。
『あのっ……王城の上とか、街の上とか飛ぶことはできますか? もちろん誰にも見られないように……』
『……ああ、できる』
『香子、そなたには隙がありすぎる』
二神はため息混じりにそう言うと、改めて香子を白虎の背に乗せ、景山から流れるように下りた。暗くてほとんど何も見えないが、夜の空気感とか、王城の上を飛ぶ非日常に香子の心は踊った。
『すごいすごい……私、本当に外にいるんですね……』
無意識のうちにぽろりと涙が流れた。香子は基本引きこもりだったから四神宮の中にいることはそれほど苦ではなかった。でも出てはいけないと言われたら出たくなるものではないか。元の世界の大陸とは異なるから、一人で抜け出したら何が起こるかわからなかったから出なかっただけだ。
紅児の境遇は同情に値する。でも休みの日に紅夏とデートすることができるなんて、とないものねだりをしてしまう。そんな自分が香子は嫌だった。
『……そなたが望むなら、どこへでも連れて行こう』
白虎の言葉が嬉しかった。きっと香子がもう王城にはいたくないと、誰かの領地に行きたいと望めばすぐにその願いは叶うのだろう。でも自由に外に出たいから誰かに決めるというのは違うと思うのだ。
ぽろぽろと涙がこぼれる。己はとても不安定なのだと香子は改めて自覚した。
もうだいぶ遅い時間なので王都の店もほとんど閉まっている。人通りももうあまり見られない。香子はそれらを眺めながら、自分は世界に閉じ込められてしまったような気になった。香子はぎゅっと白虎に抱き着いた。情けない話だが、本当の意味で香子の側にあってくれるのは四神だけだと理解する。
(寂しさとか、そんなことで抱かれてもいいのかな……。それは失礼じゃないのかな……)
処女ではないが、香子はまだ元の世界での倫理観に囚われていた。
(みんな、私の旦那様なんだよね……?)
四神全員が香子の夫なのだと言われてもまだ信じられない。そしてその四神の妻が香子だけなのだということも。
(私って面倒くさいな……)
自分でも自分自身が面倒臭いと香子は思う。それは言ってしまえば未知への恐怖だった。全員を夫として受け入れるなんて、これまで考えたことなどなかったから。
(夢じゃ、ないんだよね……?)
長い、長い夢を見ているようだと夜の景色を見ながら思う。今はっと目が覚めたら北京の寮の部屋にいてもおかしくはないと時折思うのだ。
『夢ではないぞ。そなたはここにいて、我らもずっとそなたの側にいる』
白虎からの応えに香子は驚いた。そういえば本性を現した身体に香子が触れていると、感覚が研ぎ澄まされて考えていることがわかると朱雀が言っていたような気がした。
『……(心の声を)聞いていたなら教えてくれればよかったのに……』
香子は真っ赤になって白虎の毛に顔を埋めた。そんなことをしても現状は変わらないが、とにかくいたたまれなかったのだ。
『……我はまだ細かくはわからぬ。どれだけそなたと想いを交わしたによっても違うだろう。……どのような理由でも早くそなたを抱きたいと思ってはいるがな』
『~~~~っっ!!』
しっかりわかっているではないか。香子は更に白虎の毛に顔を埋めた。
(もー無理……穴掘って埋まりたい……)
『……そなたの中をいっぱいにしたいものだ』
香子は無言でべちべちと白虎の背を叩いた。本当にデリカシーがない。
『……よくそんなことで女性が抱けましたね……?』
『神に抱かれるというだけで盛り上がっていたぞ』
『……ああそうですか』
確かに相手は神様で、しかもありえないほどの美丈夫。ただの性欲処理であってもみな喜んで相手をしたに違いなかった。
『……もう少し気遣いをしましょうよ。白虎様の他に三柱も素敵な神様がいらっしゃるんですから』
『……それもそうだな』
白虎は素直に同意した。そして香子はぐるうりぐるうりと王都の上を飛んでもらった。
なんともそれは幻想的で、香子はまたぽろりと涙をこぼした。
ーーーーー
本性になるとうんぬんは第二部111話参照のこと。
4
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる