異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
345 / 653
第3部 周りと仲良くしろと言われました

42.一緒に過ごすならHも込みらしい

しおりを挟む
 午前中香子は朱雀と庭でお茶をしたりしてまったり過ごした。
 張錦飛からもらった千字文を朱雀に読んでもらい、意味を聞いたりしていた。さすがにいろはにほへととはいかない。こちらの人々は感覚的に意味がわかっても香子はかみ砕いて理解していく必要があるのだ。

(そりゃあ白話運動とか起こるはずだよね……)

 白話運動とは中華民国時代(1912-1949)の1915年頃に起こったとされる文学革命である。簡単に言ってしまうと、それまで文章は文語で書かれていたものを白話(口語)で書こうと提唱したものである。興味がある方は調べてみてほしい。残念ながらこちらの世界では全てが文語で書かれているので、香子が気軽にお手紙を書ける日はこなさそうである。そもそも誰にお手紙を書くのだろうか。

『こういうのって朱雀様も習うんですか?』

 千字文を習っている朱雀とか、想像しただけで香子は萌えると思った。

『そうさな、我らは元々見れば全てわかるが、元から書くことはできない。だから書くことは練習したぞ』
(神様の翻訳機能パない)

 香子は内心舌を巻いた。

『そうなのですね。どのような方が師につくのでしょうか』
『我らの領地には人の管理官という者がいる。その者が手配して連れてくるから素性までは知らぬな。大概は豪族が抱えている老師か文学者といったところだろう』
『眷属ならば知っていますよね』
『そうだな。知っているだろう』

 朱雀が頷いた。確かにそんな手配を四神自らがするはずもないし、興味もないから覚えないだろう。こういうことはやはり眷属に尋ねるしかないのだなと香子は思ったが、その肝心の眷属はというと今日も不在だった。

(そりゃあただのお目付け役みたいなものだからいなくてもいいけどさぁ……)

 朱雀の眷属である紅夏がどこにいるかわかるだけに香子は眉を寄せてしまう。紅児は真面目だから香子が部屋にいなくても部屋付の侍女として部屋に控えている。紅夏はそれを守るように、香子が部屋にいない時は部屋の近くに控えていたりするのだ。

(一歩間違うとストーカーじゃない?)

 ちなみに今、庭で控えているのは延夕玲と黒月、そして数人の侍女である。だから紅夏どこ行った。

香子シャンズ、如何した?』
『……紅夏は、私の部屋の近くにいるのですよね?』
『用があるというなら呼ぶが』
『いえ、呼ばないでください』

 香子としてはすごく邪魔してやりたいが、たいした用もなく呼ぼうものならとんでもなく冷たい目で睨まれてしまうだろうことは必定である。朱雀に似た容姿で睨まれるのはつらい。かえって香子がダメージを負ってしまう。
 紅夏が香子の部屋の側に控えていると知った時、紅児に教えるかどうか香子は悩んだのだ。下手に教えれば紅児が恐縮してしまいそうだし、それで喧嘩になったりしたら紅夏に恨まれそうである。ああでもそんなストーカー野郎に紅児を預けるのは……とか香子としても葛藤はしたのだ。でも大事なのは紅児の気持ちだ。紅夏と共にある時、はにかんだ顔を見せる紅児はとても可愛かった。香子としては母のような、姉のような不思議な心持ちである。
 昼食もつつがなく終えたら、今度こそ香子は朱雀の室に連れ込まれた。

(午後からだって愛欲の日々はいや~)

 と香子は思ったが、朱雀に勝てるはずもない。

『”熱”は与えぬ。夜に存分と与えよう』

 ベッドに押し倒されて、香子は震えた。至近距離の朱雀はやっぱり素敵なのである。香子はメンクイだし、しかも朱雀のことも好きだしで、最初から抵抗ができるはずもなかったのだ。いつだって手のひらの上で転がされているだけである。

(もーやだ。素敵すぎて無理)

 奪うような口づけに、香子はすぐに陥落した。
 チョロインである。いや違う。純粋に愛し合っているのだ。


(ううう……愛欲の日々ぃ……)

”熱”も珍しく与えられなかったから、一通り愛し合った後香子はいたたまれない思いだった。いつも通り意地悪なことも言われたし、でも香子が泣けば甘やかされるしと忙しい。

『日の出ているうちにそなたを抱けるのはよいな。また夜も抱けると思うと、嬉しくてならぬ』

 機嫌良さそうにそんなことを言われて、香子は床単シーツをもぞもぞと被った。

(無理、もう無理ぃ~)
『そなに恥ずかしがらずともよかろう?』
『……恥ずかしい、です。慣れない、です』
『恥じらうそなたも愛らしい』
『もう……言わないでくださいぃ……』

 言葉責めだと香子は涙目になった。こんな程度で言葉責めなどと言っていたらどうなってしまうのか。四神全員と身体の関係を持ったというのに、香子はまだまだ初心だった。(初心って言わないなどのツッコミはスルーします)
 夕飯の前に乱れた衣裳を直しに部屋に戻った。上気していた肌はやっとその白さを取り戻したが、朱雀に抱かれた色香は隠せず侍女たちは頬を染めながら香子を整えた。侍女たち、何気にピンチである。もちろん香子はそんなこと欠片も気づいていない。

(中秋節なんだよね……月餅って手配できるのかな)

 みんなに配ってもいいのだろうかとか、香子はのんきにそんなことを考えていた。



ーーーーー
千字文については第二部78話参照のこと。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...