異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第3部 周りと仲良くしろと言われました

46.やっと報告ができました

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『白虎様! お話しましょう!』
『なにを話すことがあるというのだ』

 白虎の室である。それも今香子は寝室のベッドの上に下ろされてしまった。白虎が当たり前のように覆い被さってくる。

『ええと、白虎様は……』

 なにか質問を考えなくてはと香子は頭をフル回転させる。それを白虎が面白そうに眺めていた。

『そうだ! 白虎様は月餅の餡で好きな味とかありますかっ?』
『特にないな。それより我は香子シャンズを愛でたい』
『ああうう……一緒に過ごすって、そういうことしかすることないんですか……』

 香子としては白虎の本性をずっともふもふしていたいところだが、今は虎の姿になってくれというのも危険であると理解していた。なにせ白虎は虎の姿になると理性が少なくなってしまうのだ。虎になってイコール襲われる危険性がとても高くなる。その為香子は我慢していた。

『……花嫁は全力で愛でるものだ』
『他にすることってないんですかー……。領地にいる時はどんなふうに過ごしていたんですか?』
『ほぼ寝ていたような気がするが』

 香子撃沈である。神様の生活はなかなかにゆったりとしていたようである。

『お、起きていた時は……』
『ごく稀に町に下りることもあったな。民の生活を覗くのもなかなかに興味深い』
『そうなのですね……』

 なんだかこれで会話が終わりそうである。外に連れ出してもらうにも昼の間は難しい。出かけるとしたら夜こっそりだ。

『もう黙れ』
『明るいうちはやですー……』

 例えこのままいいようにされてしまうにしても主張だけはしておかないとと、香子は思った。

『ふむ……では今宵も共に過ごしてもよいか』
『玄武様と朱雀様がいいとおっしゃられるなら……』

 虎の姿で抱かれることに抵抗がないといえばウソである。先日は朱雀に熱を与えられたから、熱に浮かされながら白虎を受け入れた。あーんなことやこーんなことを思い出して香子は赤くなった。

『香子、そんな顔をするな。……今ここで抱きたくなる』
『それはだめですー……』

 今宵は白虎も一緒だと玄武から念話が届いた。

(く……くんずほぐれつ……)
『白虎様だけじゃなくて玄武様と朱雀様もとか……すっごくハードルが高いんですけど……』
『いろいろ試してみると嵌るかもしれぬぞ』
(そんなエロ同人みたいな展開やだ)

 香子は背筋を汗が伝うのを感じた。

『そんなのやです……』
『香子』

 白虎が香子の漢服の前をくつろげる。もう香子の話は聞かないつもりのようだった。

『白虎様、喉乾きました……』

 無駄だとわかっていながらも抵抗してみた。ら、口づけをされてしまった。舌で口腔内を舐め回される。

『んっ、んっ……』

 確かにキスをされれば口腔内は潤うがそういうことではないと香子は思うのだ。そしてまた今日も、香子は白虎に胸を愛でられてしまった。

『もー、なんで胸ばっかり……』

 夕飯に呼ばれてやっと漢服を直されながら香子は文句を言った。

『下を愛でてもいいのだが理性が持たないのでな』

 さらりと言われて香子は真っ赤になった。虎の姿になって襲われてはたまらない。

『ううう……』

 一度部屋に戻って髪形や服を直される。そして夕飯を食べた後、香子は観念した。
 ……とても濃密な夜だったようである。


 翌日は張錦飛がくる日であった。張はなんとなく機嫌がよさそうだった。

『張老師、おかげさまで秋の大祭に出ることになりました』
『それは重畳、重畳。詳しい話はのちほど聞かせていただきましょう。では始めましょうか』
『はい、よろしくお願いします』

 昨日は午前中青龍に見てもらったから少しはましなはず、と思いながら香子は集中して筆を動かす。相変わらず筆は苦手だが、少しはましになってきているのではないかと香子は思う。ただまだ子どもの手習いの域を出ないことも香子は理解していた。

(ずっと習っていけばそれなりにうまくはなるはず……)

 それを信じて今は書いていくだけである。

『ほんに……花嫁様は書が苦手でいらっしゃったのですな』
『そうなんです。毎年年が明ける前後に書初めというのをするんですけど、習字の時間が苦痛で苦痛で』
『なるほど。文字は鉛筆、ですかな。そのような便利なもので書いていらっしゃったと』
『はい、ですから筆を使う機会はあまりなかったんですよね』

 今日も終わってからは庭でお茶をすることにした。
 筆を使っていなかったと言い訳をしながらお茶を啜る。

『して、秋の大祭に出席されるとお伺いしましたが』
『はい。私はともかく四神の姿は民に見せたいので』

 この国に四神の加護が続くよう、人心は掌握しておかなければならないだろうと香子は思うのだ。

『花嫁様は苦労性でございますな』
『苦労性、ですか』
『慣れぬ地でよくがんばっていらっしゃるとわしはいつも感心しておりますが、この言い方は失礼でしょうか』
『い、いえ……』

 香子は目を伏せた。
 四神の眷属もよく人に添うよう努力はしているようだが、やはり人ではないので人の心の機微は理解できないようである。そうなると人と四神の橋渡しは香子が担うことになるのだ。

『花嫁様はもう少しわがままであってもよいとわしは思います』
『十分わがままだと思うのですが……』

 張が辞した後も香子はなんとなく納得がいかなかった。香子自身はかなりわがままを言っているつもりである。

(きっと認識の違いだよね)

 張は香子を常に見ているわけではないのだ。だから気を引き締めなければならないと香子は思った。
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