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第3部 周りと仲良くしろと言われました
50.そろそろ準備が整いそうです
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すぐに朱雀には話が通り、その夜、香子は朱雀と白虎にたっぷり可愛がられてしまった。
(覚えておかないと……)
翌朝は身体にこそ負担はなかったが、香子の精神的疲労はすごかった。
(本性を現した四神に触れる時は筒抜け。心の声が筒抜け。気をつける……)
香子はそう心に刻む。とはいえ四神が早々本性を現すことはないので、また忘れてしまうかもしれない。でも白虎はもふらせてくれるからーと、覚えておかなければ危険だと香子は思った。
(だってみんなのこと、好きなんだもんね……)
頬を染めて、香子は目の前の逞しい胸に頬をそっと摺り寄せた。この胸は白虎である。後ろには朱雀がいる。朱雀の”熱”を受けることで、香子はかろうじて白虎を受け入れているような状態だった。
(そのうち慣れるのかしら……)
『香子……朝から煽るな』
白虎の低い声に身体がふるりとした。
『……おはようございます。煽ってなんか……』
『無自覚も過ぎると床から出してやれなくなるぞ』
『それは困ります!』
香子にはそんなつもりはなかった。抱き着いて胸に顔をすり寄せるとか、無防備に心の声を届けてしまうとか、四神からしたら誘っているのかと言いたくなる所業である。いくら本性を現してなくても、四神と花嫁は繋がりが深い。なので意識していない心の声は、触れることで四神に流れてしまうこともある。もちろん白虎もそれは理解しているが、理性を動員するのがたいへんである。そうでなくとも白虎は本性が強い。香子からすればもう少し我慢してほしいというところだが、白虎は現時点で十分我慢していた。
『んっ……』
どうにかキスだけで白虎は香子を解放した。
朝食を用意させて食べ終えたらいつも通りである。今日の香子は青龍と過ごすことになっていた。
月餅の件については昼食の際、白雲から伝えられた。
曰く、食後のデザートに小さめのものを一、二個出すか、お茶の際に出し、香子の許可が下りれば秋の大祭の際に配る候補となるというのだ。
香子のお眼鏡にかない、なおかつ大量に準備ができ、契約単価もそれほど高くないところを選ぶようには香子も言ってある。ただし月餅の品質を下げてはいけないし、従業員の給料を減らすことも許されない。そこらへんのチェックもきちんとできる店に頼みたいと香子は念を押していた。
材料費、人件費、価格などを含めて安ければいいというものではない。品質を保ち、従業員の暮らしも守る。その為には金がかかるのは当然である。香子は当初それを、贈物を売り払った金額から一部転用するつもりだったが、それは国から出すものだと断られてしまった。
(私がしたいだけなんだけどなぁ……)
香子にとっては自分のわがままだが、皇帝や中書令からしたら願ったりかなったりであった。四神を引っ張り出したという事実だけでなく、民衆へのいいアピールになる。
四神の権威はそのまま大唐の権威にもつながる。香子が好む味の月餅を手配するなど大した手間ではない。四神の花嫁が選んだということが重要で、店の方もそれをアピールすれば客が増えること請け合いである。
そうとは知らない香子はお茶をしながら月餅を食べた。
そして首を傾げる。
(これはサンザシ、かな? 私の好みではないんだよねー)
だがこの国では普通に食べられているものである。元の世界の大陸では、屋台によく糖葫芦(サンザシの飴かけ)が売っていたのを思い出した。香子は一度も買ったことはなかったが、友人はたまに買って食べていた。一個二個分けてもらったことはある。甘酸っぱいサンザシ飴は、おいしいといえばおいしかったが香子の好みではなかった。
(でも普通に売ってたから、みんなはおいしく食べてるんだよね?)
『香子、如何した?』
『なんでもないです。月餅、おいしいなと思って……』
青龍に声をかけられた。
『そうか』
青龍もまた食べやすい大きさに切られた月餅を摘まんだ。
『うむ、うまいな』
もう一つはまた違う味だった。黒豆が入っていて、香子は驚いた。
(こっちの方が好きかも~)
『どちらもおいしいです』
『そうか』
庭で青龍とお茶をしながら、香子は笑顔を絶やさなかった。どうやっても味覚は違うのだからしかたないのだが、香子は自分の好みで選ばれるのは違うと思った。そしてそれを青龍もまた気づいてはいたが、みながいるところで口にはしなかった。香子の気持ちを優先したというのもあるが、そんな香子を愛しく思っているからだった。
いろいろな味のものがあったので、しばらくはお茶請けが月餅でも飽きはしなかったが、香子はもうしばらく月餅はいいやと思うほど食べた。いくら好きなものとは言っても、やはりほどほどが一番である。
(中秋の宴席でも出されるんだろうなぁ……)
その際にはせめて一番好きな味のものをリクエストしようと香子は思った。
そうして秋の大祭の準備は少しずつ整っていった。日を重ねるごとに各国から香子に送られてくる贈物の量が増えて香子が不機嫌になる場面もあったが、おおむね順調に日は過ぎていく。
八月十五、香子は侍女たちの手で着飾られ、ついに当日を迎えたのだった。
(覚えておかないと……)
翌朝は身体にこそ負担はなかったが、香子の精神的疲労はすごかった。
(本性を現した四神に触れる時は筒抜け。心の声が筒抜け。気をつける……)
香子はそう心に刻む。とはいえ四神が早々本性を現すことはないので、また忘れてしまうかもしれない。でも白虎はもふらせてくれるからーと、覚えておかなければ危険だと香子は思った。
(だってみんなのこと、好きなんだもんね……)
頬を染めて、香子は目の前の逞しい胸に頬をそっと摺り寄せた。この胸は白虎である。後ろには朱雀がいる。朱雀の”熱”を受けることで、香子はかろうじて白虎を受け入れているような状態だった。
(そのうち慣れるのかしら……)
『香子……朝から煽るな』
白虎の低い声に身体がふるりとした。
『……おはようございます。煽ってなんか……』
『無自覚も過ぎると床から出してやれなくなるぞ』
『それは困ります!』
香子にはそんなつもりはなかった。抱き着いて胸に顔をすり寄せるとか、無防備に心の声を届けてしまうとか、四神からしたら誘っているのかと言いたくなる所業である。いくら本性を現してなくても、四神と花嫁は繋がりが深い。なので意識していない心の声は、触れることで四神に流れてしまうこともある。もちろん白虎もそれは理解しているが、理性を動員するのがたいへんである。そうでなくとも白虎は本性が強い。香子からすればもう少し我慢してほしいというところだが、白虎は現時点で十分我慢していた。
『んっ……』
どうにかキスだけで白虎は香子を解放した。
朝食を用意させて食べ終えたらいつも通りである。今日の香子は青龍と過ごすことになっていた。
月餅の件については昼食の際、白雲から伝えられた。
曰く、食後のデザートに小さめのものを一、二個出すか、お茶の際に出し、香子の許可が下りれば秋の大祭の際に配る候補となるというのだ。
香子のお眼鏡にかない、なおかつ大量に準備ができ、契約単価もそれほど高くないところを選ぶようには香子も言ってある。ただし月餅の品質を下げてはいけないし、従業員の給料を減らすことも許されない。そこらへんのチェックもきちんとできる店に頼みたいと香子は念を押していた。
材料費、人件費、価格などを含めて安ければいいというものではない。品質を保ち、従業員の暮らしも守る。その為には金がかかるのは当然である。香子は当初それを、贈物を売り払った金額から一部転用するつもりだったが、それは国から出すものだと断られてしまった。
(私がしたいだけなんだけどなぁ……)
香子にとっては自分のわがままだが、皇帝や中書令からしたら願ったりかなったりであった。四神を引っ張り出したという事実だけでなく、民衆へのいいアピールになる。
四神の権威はそのまま大唐の権威にもつながる。香子が好む味の月餅を手配するなど大した手間ではない。四神の花嫁が選んだということが重要で、店の方もそれをアピールすれば客が増えること請け合いである。
そうとは知らない香子はお茶をしながら月餅を食べた。
そして首を傾げる。
(これはサンザシ、かな? 私の好みではないんだよねー)
だがこの国では普通に食べられているものである。元の世界の大陸では、屋台によく糖葫芦(サンザシの飴かけ)が売っていたのを思い出した。香子は一度も買ったことはなかったが、友人はたまに買って食べていた。一個二個分けてもらったことはある。甘酸っぱいサンザシ飴は、おいしいといえばおいしかったが香子の好みではなかった。
(でも普通に売ってたから、みんなはおいしく食べてるんだよね?)
『香子、如何した?』
『なんでもないです。月餅、おいしいなと思って……』
青龍に声をかけられた。
『そうか』
青龍もまた食べやすい大きさに切られた月餅を摘まんだ。
『うむ、うまいな』
もう一つはまた違う味だった。黒豆が入っていて、香子は驚いた。
(こっちの方が好きかも~)
『どちらもおいしいです』
『そうか』
庭で青龍とお茶をしながら、香子は笑顔を絶やさなかった。どうやっても味覚は違うのだからしかたないのだが、香子は自分の好みで選ばれるのは違うと思った。そしてそれを青龍もまた気づいてはいたが、みながいるところで口にはしなかった。香子の気持ちを優先したというのもあるが、そんな香子を愛しく思っているからだった。
いろいろな味のものがあったので、しばらくはお茶請けが月餅でも飽きはしなかったが、香子はもうしばらく月餅はいいやと思うほど食べた。いくら好きなものとは言っても、やはりほどほどが一番である。
(中秋の宴席でも出されるんだろうなぁ……)
その際にはせめて一番好きな味のものをリクエストしようと香子は思った。
そうして秋の大祭の準備は少しずつ整っていった。日を重ねるごとに各国から香子に送られてくる贈物の量が増えて香子が不機嫌になる場面もあったが、おおむね順調に日は過ぎていく。
八月十五、香子は侍女たちの手で着飾られ、ついに当日を迎えたのだった。
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