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第3部 周りと仲良くしろと言われました
58.お茶はおいしいのだけど会話がいただけません
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やはりもう一、二度はシーザンの姫と顔を合わせる必要がありそうだった。
香子はうんざりした。
どうも向こうはごり押しして皇太后に渡りをつけたらしい。おかげで皇太后から呼び出しがあった。皇太后からはお茶をしようという声かけがあったが、これには絶対シーザンの姫が参加しているはずである。
「やだなぁ……」
香子は思わず日本語で呟いた。四神の腕の中ではどちらにせよわかってしまうのだが、呟かないではいられなかったのだ。
『行かなければいいだろう』
香子を居間の長椅子で抱き込んでいる白虎に言われ、香子は白虎を睨んだ。
『そういうわけにもいかないんですよ。まぁでも、今回はシーザンの姫が一緒とは書かれていないようですから、紅児は連れて行かなくていいでしょう。白虎様とー玄武様とー……ぐらいでいいかな』
『玄武兄も呼ぶのか』
白虎に言われて香子は首を傾げた。
『だって、白虎様だけでは対応できないことって多いでしょう?』
『……それもそうだ』
白虎は苦笑すると香子に口づけた。少しざらざらする舌に舐められると、香子はびくっとした。白虎がそれに気づいて舌の棘をしまう。
「んっ……」
そうして二人はしばし甘い口づけを堪能したのだった。
『老仏爺、本日はお招きありがとうございます』
翌日の午後、香子は白虎に抱かれて御花園の四阿に来た。まだ昼間は外でお茶をしても心地いい気候である。白虎を伴って香子が訪れたことで、その場は完全に香子が過ごしやすい気候に変わったが。
『花嫁様、こちらへ』
皇太后が上機嫌で香子を手招きする。香子はいつも通り皇太后の左側の席に白虎と共に腰掛けた。白虎はどうやら、今日は膝から下ろしてくれないらしい。
今日は白虎、玄武、白雲、黒月、延夕玲と一緒である。白雲と黒月、夕玲は白虎の後ろに控えた。案の定シーザンの姫も招かれてはいたがとても不満そうだった。シーザンの姫が腰掛けているのは皇后の隣で、円卓ではあるが皇太后より一番遠い席である。それが不満なのだろうか、と香子は不思議に思った。若さ故の怖いもの知らずなのかもしれないが、あからさまに不満そうなオーラを出すのはどうかと思った。
(お里が知れるとはこのことね……こんな態度でいいものかしら)
皇后の目がすごく怖い。口元は笑んでいるけど目が笑っていない。こういう表情はよく見るなと香子は内心嘆息した。
『此度はシーザンの姫も招待した。国が変われば衣裳も変わるとはこのことじゃのう』
皇太后がにこやかに口を開いた。シーザンの姫は頭から垂れさがるような飾りをつけ、衣裳は赤を基調とし、さまざまな色の布が使われていた。なんとも色鮮やかなことである。
『恐れ入ります。我が国の気候はたいへん厳しく、草原が広がっており、ひとたび嵐がくると避けるものがありません。それ故に発展した衣裳とも言われております。また、ここ何十年は特に嵐がひどくて民は困窮しております。故に、できましたら四神の眷属を婿に迎えたいと思っているのですが……』
発言を許されたからといって何を話してもいいわけではない。案の定皇后の顔がひきつった。香子もそのストレートな物言いに目を丸くした。
皇太后は笑った。
『四神の眷属をのぅ……』
『四神ほどではありませんが、その眷属のみでも気候が安定するようなことを聞いたことがあります』
香子は顔を覆いたくなった。シーザンの姫は四神の眷属を完全に便利品扱いしている。後ろからの不機嫌オーラが半端ないのでいいかげん黙ってほしいと香子は思う。白雲は我関せずを貫いているが、黒月と夕玲からのプレッシャーがすごい。
(なんで二人からの威圧まで私が受けなきゃならないのかしらー? 理不尽だわー)
そんなことを思いながら蓋碗を手に取ってお茶を飲む。今日もおいしくて香子は顔を綻ばせた。今日は菊の花のお茶だった。口腔内がさっぱりしていいかんじである。
『白虎様、玄武様、シーザンの姫はこう言っておるがどうか』
皇太后が白虎と玄武に声をかけた。
『どう、とは?』
白虎が聞き返す。
『眷属は眷属同士でつがうものだろう』
玄武はしれっと答えた。完全に我関せずである。
『四神の眷属はシーザンの姫に婿入りする可能性はあるのかえ?』
『”つがい”でなければないだろう。我らも眷属たちも人型をとってはいるが人ではないのでな』
白虎は律儀に皇太后に答えた。
『花嫁殿、四神の眷属は四人と聞いているが、あとの二人はどこにおるのじゃ?』
空気の読めない姫に声をかけられて香子は苦笑した。怖いもの知らずとはこのことである。
『四神宮にいます。此度はシーザンの姫が来るとは存じませんでしたので連れてはきませんでした。それに……こちらに来ている眷属にはみな”つがい”がおります。ですので姫のご要望には応えられないかと……』
『そのようなこと、花嫁殿が命令すればいいのではないのか?』
これだから権力だけは持っているおこちゃまは……と香子は頭を抱えたくなった。香子が命令したところで眷属は聞かないし、例え聞いたところで何故香子がシーザンの姫に婿入りをさせなければならないのか意味不明である。
故に、何故自分が命令しなければならないのかと聞き返しそうになったが、皇太后が口を開いた。
『おお……風が冷たくなってきたのう。此度はここらでお開きにしようぞ。菓子は包ませる故……』
『老仏爺、ありがとうございました』
お菓子は四神宮に届けてくれるらしい。シーザンの姫が目を白黒させている間にみな片付けを始める。
『花嫁殿、約束はどうなっておるのじゃ?』
空気が読めない姫に声をかけられて香子は辟易した。
『会わせると確約はできませんとお伝えしたはずです。声はかけておりますので』
やはり会わせないわけにはいかないようだと香子はうんざりした。面倒なので皇帝にお膳立てさせることにしようと思った。
皇太后と皇后の気遣うような視線がなんともきつかったのは確かだった。
ーーーーー
気づけば70万字を突破していました。いつもありがとうございます。
「貴方色に染まる」68話辺りです。興味ありましたらそちらもご覧くださいませ~
香子はうんざりした。
どうも向こうはごり押しして皇太后に渡りをつけたらしい。おかげで皇太后から呼び出しがあった。皇太后からはお茶をしようという声かけがあったが、これには絶対シーザンの姫が参加しているはずである。
「やだなぁ……」
香子は思わず日本語で呟いた。四神の腕の中ではどちらにせよわかってしまうのだが、呟かないではいられなかったのだ。
『行かなければいいだろう』
香子を居間の長椅子で抱き込んでいる白虎に言われ、香子は白虎を睨んだ。
『そういうわけにもいかないんですよ。まぁでも、今回はシーザンの姫が一緒とは書かれていないようですから、紅児は連れて行かなくていいでしょう。白虎様とー玄武様とー……ぐらいでいいかな』
『玄武兄も呼ぶのか』
白虎に言われて香子は首を傾げた。
『だって、白虎様だけでは対応できないことって多いでしょう?』
『……それもそうだ』
白虎は苦笑すると香子に口づけた。少しざらざらする舌に舐められると、香子はびくっとした。白虎がそれに気づいて舌の棘をしまう。
「んっ……」
そうして二人はしばし甘い口づけを堪能したのだった。
『老仏爺、本日はお招きありがとうございます』
翌日の午後、香子は白虎に抱かれて御花園の四阿に来た。まだ昼間は外でお茶をしても心地いい気候である。白虎を伴って香子が訪れたことで、その場は完全に香子が過ごしやすい気候に変わったが。
『花嫁様、こちらへ』
皇太后が上機嫌で香子を手招きする。香子はいつも通り皇太后の左側の席に白虎と共に腰掛けた。白虎はどうやら、今日は膝から下ろしてくれないらしい。
今日は白虎、玄武、白雲、黒月、延夕玲と一緒である。白雲と黒月、夕玲は白虎の後ろに控えた。案の定シーザンの姫も招かれてはいたがとても不満そうだった。シーザンの姫が腰掛けているのは皇后の隣で、円卓ではあるが皇太后より一番遠い席である。それが不満なのだろうか、と香子は不思議に思った。若さ故の怖いもの知らずなのかもしれないが、あからさまに不満そうなオーラを出すのはどうかと思った。
(お里が知れるとはこのことね……こんな態度でいいものかしら)
皇后の目がすごく怖い。口元は笑んでいるけど目が笑っていない。こういう表情はよく見るなと香子は内心嘆息した。
『此度はシーザンの姫も招待した。国が変われば衣裳も変わるとはこのことじゃのう』
皇太后がにこやかに口を開いた。シーザンの姫は頭から垂れさがるような飾りをつけ、衣裳は赤を基調とし、さまざまな色の布が使われていた。なんとも色鮮やかなことである。
『恐れ入ります。我が国の気候はたいへん厳しく、草原が広がっており、ひとたび嵐がくると避けるものがありません。それ故に発展した衣裳とも言われております。また、ここ何十年は特に嵐がひどくて民は困窮しております。故に、できましたら四神の眷属を婿に迎えたいと思っているのですが……』
発言を許されたからといって何を話してもいいわけではない。案の定皇后の顔がひきつった。香子もそのストレートな物言いに目を丸くした。
皇太后は笑った。
『四神の眷属をのぅ……』
『四神ほどではありませんが、その眷属のみでも気候が安定するようなことを聞いたことがあります』
香子は顔を覆いたくなった。シーザンの姫は四神の眷属を完全に便利品扱いしている。後ろからの不機嫌オーラが半端ないのでいいかげん黙ってほしいと香子は思う。白雲は我関せずを貫いているが、黒月と夕玲からのプレッシャーがすごい。
(なんで二人からの威圧まで私が受けなきゃならないのかしらー? 理不尽だわー)
そんなことを思いながら蓋碗を手に取ってお茶を飲む。今日もおいしくて香子は顔を綻ばせた。今日は菊の花のお茶だった。口腔内がさっぱりしていいかんじである。
『白虎様、玄武様、シーザンの姫はこう言っておるがどうか』
皇太后が白虎と玄武に声をかけた。
『どう、とは?』
白虎が聞き返す。
『眷属は眷属同士でつがうものだろう』
玄武はしれっと答えた。完全に我関せずである。
『四神の眷属はシーザンの姫に婿入りする可能性はあるのかえ?』
『”つがい”でなければないだろう。我らも眷属たちも人型をとってはいるが人ではないのでな』
白虎は律儀に皇太后に答えた。
『花嫁殿、四神の眷属は四人と聞いているが、あとの二人はどこにおるのじゃ?』
空気の読めない姫に声をかけられて香子は苦笑した。怖いもの知らずとはこのことである。
『四神宮にいます。此度はシーザンの姫が来るとは存じませんでしたので連れてはきませんでした。それに……こちらに来ている眷属にはみな”つがい”がおります。ですので姫のご要望には応えられないかと……』
『そのようなこと、花嫁殿が命令すればいいのではないのか?』
これだから権力だけは持っているおこちゃまは……と香子は頭を抱えたくなった。香子が命令したところで眷属は聞かないし、例え聞いたところで何故香子がシーザンの姫に婿入りをさせなければならないのか意味不明である。
故に、何故自分が命令しなければならないのかと聞き返しそうになったが、皇太后が口を開いた。
『おお……風が冷たくなってきたのう。此度はここらでお開きにしようぞ。菓子は包ませる故……』
『老仏爺、ありがとうございました』
お菓子は四神宮に届けてくれるらしい。シーザンの姫が目を白黒させている間にみな片付けを始める。
『花嫁殿、約束はどうなっておるのじゃ?』
空気が読めない姫に声をかけられて香子は辟易した。
『会わせると確約はできませんとお伝えしたはずです。声はかけておりますので』
やはり会わせないわけにはいかないようだと香子はうんざりした。面倒なので皇帝にお膳立てさせることにしようと思った。
皇太后と皇后の気遣うような視線がなんともきつかったのは確かだった。
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気づけば70万字を突破していました。いつもありがとうございます。
「貴方色に染まる」68話辺りです。興味ありましたらそちらもご覧くださいませ~
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