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第3部 周りと仲良くしろと言われました
116.予想していなかったと言えば嘘になります
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紅児をセレスト王国から来た使者に会わせるとは決めた。
使者である紅児の叔父と話をさせること、その際には香子たちは退出し、紅夏だけを付き添わせることも決まった。
……正直とても不安ではあるが。
ショックを受けたことを香子は少し引きずっていた。紅夏が紅児しか見えないのはもうしかたがない。だが紅児もまた紅夏をそこまで想っていると理解してしまったことがつらいのだ。
(なんか納得がいかない……)
人の恋路の邪魔をしてはいけないことぐらいわかっている。だが感情がいうことをきかなかった。
「あーっ、もうっ!」
夕飯前に部屋に戻った時、香子はたまらず声を上げた。みなびくっとしたのがわかったがたまには声を上げないといられない時もあるのだ。それにここは香子の部屋なのだ。誰でも何日かに一回ぐらいは叫びたい時があるはずだと香子は開き直った。
『……花嫁さま、どうかなさいましたか?』
延夕玲に淡々と尋ねられた。
『……どうにもならないことに気づいてしまっただけよ。ごめんなさい』
『花嫁さま、妾に謝ってはなりません』
『夕玲は真面目すぎよ』
『花嫁さま』
『部屋でぐらい好きにさせてちょうだい』
夕玲は嘆息した。それが一応譲歩の証なのだろう。
やってられないので香子はその夜玄武と朱雀に八つ当たりした。
『そんなことを言ってもしかたないだろう』
朱雀にそう窘められたがそういうことではないのだ。言ってもしかたないのはわかっている。
『愚痴なんですから黙って聞いててください。別に解決したいとかそういうことではないのです』
『……わからぬな』
『玄武様や朱雀様は四神ですし男性です。私は人間で女です。理解できぬことがあってもしかたありません。そういうものだと覚えてください』
二神は苦笑した。
『聞いているということがわかればいいのです。別にそれについてどう思う? とか聞き返すこともありません。だいたい私はまだ四神の眷属のこともしっかりとは把握していませんし、馬に蹴られる気もありませんので。でもなんで紅夏なのだろうと思うことはあります。ただそれだけです』
『口にせずにはいられぬということか』
『そういうことです』
玄武は玄武なりにわかろうとしたようだった。香子は素直にそれを嬉しいと思った。
そんなかんじで八つ当たりもできたので香子は少しだけすっきりした。
翌日は紅児を彼女の叔父に会わせる日である。紅児がひどく緊張していることに香子は気づいた。香子もまた少しだけ緊張していたが、紅児の比ではないだろうと緊張を押し殺した。
朱雀に抱かれ、また王城の謁見室へ向かう。今回は紅児も一緒だ。
白雲に声をかけさせて紅児の叔父ということを確認し、香子は退室した。あとは紅夏がうまくやるはずである。
(……うまくやってくれるよね?)
不安ではあったが、香子はそうなることを願っていた。
だがしばらくして帰ってきた紅児は目を開けたまま失神しているような状態だった。
『……何があったの?』
『衝撃的なことを聞かされたようです。今日は私にお任せください』
紅夏が押し殺したような声で言った。
『……わかったわ。詳細がわかり次第教えてちょうだい。……エリーザは、元に戻るのかしら』
『戻ります』
紅夏は即答した。
『そう、それならいいわ』
紅児を抱いたまま紅夏が退出した後、香子は朱雀の胸に顔を埋めた。
『……会わせてはいけなかったのでしょうか』
『そんなことはないだろう』
紅児がショックを受けるような内容とはどんなことだったのだろう。香子は想像してみようとしたが、落ち着かないせいか何も思いつかなった。そして、想像したところでそれこそどうしようもないことだということに気づいた。
『白虎様の毛に埋もれたいです』
『わかった』
余計なことを考えない為には、現実逃避するのが一番だと香子は知っていた。
『香子……一言言っておくがな……』
『言わなくていいです。本性を現してください。なにかあったら朱雀様が止めてくださいますので』
『我は愛玩動物ではないのだが……』
『美しい白虎だということは重々承知しています。ですが、今の私には癒しが必要なんです!』
わかっていて香子はわがままを言ってみた。
『香子が余計なことをするよりはましだ。白虎よ、耐えろ』
『朱雀兄……わかった』
もふもふを堪能し、夕食前に紅児の行方を侍女たちに聞いたが、姿は見ていないと言っていた。今日は念の為に紅児の仕事は休みにしていた。それが功を奏したようだと香子は胸を撫で下ろした。おそらく紅夏が紅児の面倒をみているに違いなかった。
(そのうち話してくれればいいわ)
紅夏が紅児は戻ると言っているのだから間違いはないだろう。それだけが香子にとって救いだった。
それにしても、余計なことをするとか、余計なことを考えるとか、止めようとするのにも精神力が必要だとは思ってもみなかった。
(ここに来てから、何度考えないと自分に言い聞かせたっけ……)
香子は自嘲した。
夕飯後、今夜は朱雀の室で過ごすことにした。そうした方がいいような気がした。
ーーーーー
紅児の様子については「貴方色に染まる」87、88話を参照してください。
使者である紅児の叔父と話をさせること、その際には香子たちは退出し、紅夏だけを付き添わせることも決まった。
……正直とても不安ではあるが。
ショックを受けたことを香子は少し引きずっていた。紅夏が紅児しか見えないのはもうしかたがない。だが紅児もまた紅夏をそこまで想っていると理解してしまったことがつらいのだ。
(なんか納得がいかない……)
人の恋路の邪魔をしてはいけないことぐらいわかっている。だが感情がいうことをきかなかった。
「あーっ、もうっ!」
夕飯前に部屋に戻った時、香子はたまらず声を上げた。みなびくっとしたのがわかったがたまには声を上げないといられない時もあるのだ。それにここは香子の部屋なのだ。誰でも何日かに一回ぐらいは叫びたい時があるはずだと香子は開き直った。
『……花嫁さま、どうかなさいましたか?』
延夕玲に淡々と尋ねられた。
『……どうにもならないことに気づいてしまっただけよ。ごめんなさい』
『花嫁さま、妾に謝ってはなりません』
『夕玲は真面目すぎよ』
『花嫁さま』
『部屋でぐらい好きにさせてちょうだい』
夕玲は嘆息した。それが一応譲歩の証なのだろう。
やってられないので香子はその夜玄武と朱雀に八つ当たりした。
『そんなことを言ってもしかたないだろう』
朱雀にそう窘められたがそういうことではないのだ。言ってもしかたないのはわかっている。
『愚痴なんですから黙って聞いててください。別に解決したいとかそういうことではないのです』
『……わからぬな』
『玄武様や朱雀様は四神ですし男性です。私は人間で女です。理解できぬことがあってもしかたありません。そういうものだと覚えてください』
二神は苦笑した。
『聞いているということがわかればいいのです。別にそれについてどう思う? とか聞き返すこともありません。だいたい私はまだ四神の眷属のこともしっかりとは把握していませんし、馬に蹴られる気もありませんので。でもなんで紅夏なのだろうと思うことはあります。ただそれだけです』
『口にせずにはいられぬということか』
『そういうことです』
玄武は玄武なりにわかろうとしたようだった。香子は素直にそれを嬉しいと思った。
そんなかんじで八つ当たりもできたので香子は少しだけすっきりした。
翌日は紅児を彼女の叔父に会わせる日である。紅児がひどく緊張していることに香子は気づいた。香子もまた少しだけ緊張していたが、紅児の比ではないだろうと緊張を押し殺した。
朱雀に抱かれ、また王城の謁見室へ向かう。今回は紅児も一緒だ。
白雲に声をかけさせて紅児の叔父ということを確認し、香子は退室した。あとは紅夏がうまくやるはずである。
(……うまくやってくれるよね?)
不安ではあったが、香子はそうなることを願っていた。
だがしばらくして帰ってきた紅児は目を開けたまま失神しているような状態だった。
『……何があったの?』
『衝撃的なことを聞かされたようです。今日は私にお任せください』
紅夏が押し殺したような声で言った。
『……わかったわ。詳細がわかり次第教えてちょうだい。……エリーザは、元に戻るのかしら』
『戻ります』
紅夏は即答した。
『そう、それならいいわ』
紅児を抱いたまま紅夏が退出した後、香子は朱雀の胸に顔を埋めた。
『……会わせてはいけなかったのでしょうか』
『そんなことはないだろう』
紅児がショックを受けるような内容とはどんなことだったのだろう。香子は想像してみようとしたが、落ち着かないせいか何も思いつかなった。そして、想像したところでそれこそどうしようもないことだということに気づいた。
『白虎様の毛に埋もれたいです』
『わかった』
余計なことを考えない為には、現実逃避するのが一番だと香子は知っていた。
『香子……一言言っておくがな……』
『言わなくていいです。本性を現してください。なにかあったら朱雀様が止めてくださいますので』
『我は愛玩動物ではないのだが……』
『美しい白虎だということは重々承知しています。ですが、今の私には癒しが必要なんです!』
わかっていて香子はわがままを言ってみた。
『香子が余計なことをするよりはましだ。白虎よ、耐えろ』
『朱雀兄……わかった』
もふもふを堪能し、夕食前に紅児の行方を侍女たちに聞いたが、姿は見ていないと言っていた。今日は念の為に紅児の仕事は休みにしていた。それが功を奏したようだと香子は胸を撫で下ろした。おそらく紅夏が紅児の面倒をみているに違いなかった。
(そのうち話してくれればいいわ)
紅夏が紅児は戻ると言っているのだから間違いはないだろう。それだけが香子にとって救いだった。
それにしても、余計なことをするとか、余計なことを考えるとか、止めようとするのにも精神力が必要だとは思ってもみなかった。
(ここに来てから、何度考えないと自分に言い聞かせたっけ……)
香子は自嘲した。
夕飯後、今夜は朱雀の室で過ごすことにした。そうした方がいいような気がした。
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紅児の様子については「貴方色に染まる」87、88話を参照してください。
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