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第3部 周りと仲良くしろと言われました
124.切なくてたまらないのです
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『待って! 待ってください! 先に玄武様から話を聞かせてください!』
朱雀に再び床に押し倒されたが、どうにか香子は待ったをかけた。
『香子』
玄武が上から香子を覗き込み、その額にちゅ、と口づけた。なんだか知らないけど玄武のスイッチも入っているようだった。
『玄武様……張老師から聞いていただけましたか?』
『ああ……唐の法律では妊娠でもしていない限り未成年の結婚は認められないそうだ。もちろん抜け道はあるそうだが、それは香子が嫌なのだろう?』
『ええ……やっぱり、そうでしたか……』
さすがに成人していないのに結婚はできないだろう。ただ農村などでは成人を待たずに嫁がせてしまうなんてことは普通に横行している。紅児の養父母がいい人だったことを香子は感謝した。
『玄武様、ありがとうございました』
『香子、褒美が欲しい』
(もー)
牛ではない。
『……お昼ご飯もちゃんと食べたいです』
『そなたは色気よりも食い気だな』
朱雀が笑った。
『ごはんは大事なんですよー』
『わかった。食事はきちんと取らせよう。だが……』
どうせ玄武と朱雀にかなうはずはないのだ。香子は嘆息して、身体の力を抜いた。
二神は約束通り香子と共に昼食を取った。香子の部屋ではあったが。
(これってきっと、午後も、だよねぇ……)
なんという愛欲の日々……と香子は気が遠くなりそうだった。でもごはんはしっかり食べた。昼からでもなんでも抱かれてしまうことになるならとてもおなかがすくに違いない。食べないなんて選択肢はなかった。延夕玲や侍女たちは頬を染めていたが、香子は見ないようにした。きっと香子の色気にあてられてしまったのだろう。
白虎や青龍も昼間から香子に触れてきたりするせいか、夕玲や侍女たちが頬を染めているのは香子の色気にあてられているらしいということは、さすがに香子もわかってきた。
(ふ、不可抗力……)
抗弁したいところではあるが、したところで状況は変わらないので香子も諦めてはいる。
食べ終えて食休みを終えれば、また寝室に運ばれた。紅児たちが四神宮に戻ってくるのは遅い時間だろうと香子は思う。明日の夕方にはここを出ないと間に合わないはずだが、紅児が養父母と語り合う時間は大事だ。三年も面倒をみてもらったのだ。ゆっくり話などができればいい。
香子の意識は快楽に溶けた。
夕飯は食べたいと伝えてあるから、四神がそれを破ることはないだろう。
だが時間は些か遅くなったようだ。
戌の刻(夜7時頃)前になって、やっと香子は夕飯を食べることができた。空腹を感じるのはとても大事だと、香子はしみじみ思った。
夕飯を食べ終えても二神は離してくれなかった。そうしているうちに、紅児たちが戻ってきたと伝えられた。
『え? もう? まだ戌の刻よね?』
『正刻(戌の正刻は夜8時頃)は過ぎましたが』
『でも思ったより早いわ』
紅夏が随分とがんばったのだろうかと香子は想像した。とはいえそれほど早い時間でもないので、紅夏のことだから報告は明日になるのではないかと思った。けれどそんなことはなかった。
一応帰着の挨拶に来たようだったので、香子は玄武に抱かれてそれを受けた。
『詳しくは明日でいいわ。今夜はゆっくり休んでね』
香子は紅児と紅夏にねぎらいの言葉をかけた。そうして二人を退室させた。すでに夕玲も退室している。部屋付きの侍女も四神宮の横の建物に返してあげなければいけないだろうと香子は思った。
香子は思うところあって、紅夏がもし戻ってくることがあればと黒月に伝言を頼んだ。そうしてから玄武に向き直った。
『玄武様、私入浴がしたいです』
『わかった』
『その後は玄武様の室に連れて行ってください』
『ああ』
玄武に優しく抱きしめられた。四神の室はみな造りは同じだが、やはり自分の室かそうでないのかは重要なようだ。
喪失感でどうにかなってしまいそうだと、香子は四神に縋った。そんなに長い期間、紅児とは一緒にいたわけではない。だがなんとなく同志のように香子は思っていたのだ。言葉がわからないのにがんばってこの国で生きてきた紅児は、香子にとってすごい存在だった。
香子が身につけた言語もまた一朝一夕で身につけたものではなかったが、香子よりも紅児が遭った理不尽から、紅児を守りたいと香子は思っていた。
だが現実はそううまくはいかなくて。
紅児の父親や同じ船の船員が海の藻屑と消えたこと以上の衝撃はなかっただろうが、それでも待っていてくれるだろう実の母親が、再婚していたと知ったのはやはりショックだっただろうと香子は想像した。ただ、紅夏は紅児の叔父がなんらかの嘘をついているようだと言っていた。それが紅児をかき乱すことでなければいいのだが。
『……心ここにあらずだな』
朱雀が喉の奥で笑った。
『……申し訳ありません』
『よい。そなたが他の者たちに心を砕くのはいつものことだ。我らはそんなそなたも愛しくてならぬのだから』
玄武と朱雀は香子を慰めるように優しく抱いた。
明日には、紅児が四神宮から出て行ってしまう。もしかしたらすぐに戻ってくるかもしれない。だがそれがしばしの別れとなる可能性もあるのだ。
香子は二神にそっと頬を寄せた。
ーーーーー
「貴方色に染まる」は109,110話辺りです。
朱雀に再び床に押し倒されたが、どうにか香子は待ったをかけた。
『香子』
玄武が上から香子を覗き込み、その額にちゅ、と口づけた。なんだか知らないけど玄武のスイッチも入っているようだった。
『玄武様……張老師から聞いていただけましたか?』
『ああ……唐の法律では妊娠でもしていない限り未成年の結婚は認められないそうだ。もちろん抜け道はあるそうだが、それは香子が嫌なのだろう?』
『ええ……やっぱり、そうでしたか……』
さすがに成人していないのに結婚はできないだろう。ただ農村などでは成人を待たずに嫁がせてしまうなんてことは普通に横行している。紅児の養父母がいい人だったことを香子は感謝した。
『玄武様、ありがとうございました』
『香子、褒美が欲しい』
(もー)
牛ではない。
『……お昼ご飯もちゃんと食べたいです』
『そなたは色気よりも食い気だな』
朱雀が笑った。
『ごはんは大事なんですよー』
『わかった。食事はきちんと取らせよう。だが……』
どうせ玄武と朱雀にかなうはずはないのだ。香子は嘆息して、身体の力を抜いた。
二神は約束通り香子と共に昼食を取った。香子の部屋ではあったが。
(これってきっと、午後も、だよねぇ……)
なんという愛欲の日々……と香子は気が遠くなりそうだった。でもごはんはしっかり食べた。昼からでもなんでも抱かれてしまうことになるならとてもおなかがすくに違いない。食べないなんて選択肢はなかった。延夕玲や侍女たちは頬を染めていたが、香子は見ないようにした。きっと香子の色気にあてられてしまったのだろう。
白虎や青龍も昼間から香子に触れてきたりするせいか、夕玲や侍女たちが頬を染めているのは香子の色気にあてられているらしいということは、さすがに香子もわかってきた。
(ふ、不可抗力……)
抗弁したいところではあるが、したところで状況は変わらないので香子も諦めてはいる。
食べ終えて食休みを終えれば、また寝室に運ばれた。紅児たちが四神宮に戻ってくるのは遅い時間だろうと香子は思う。明日の夕方にはここを出ないと間に合わないはずだが、紅児が養父母と語り合う時間は大事だ。三年も面倒をみてもらったのだ。ゆっくり話などができればいい。
香子の意識は快楽に溶けた。
夕飯は食べたいと伝えてあるから、四神がそれを破ることはないだろう。
だが時間は些か遅くなったようだ。
戌の刻(夜7時頃)前になって、やっと香子は夕飯を食べることができた。空腹を感じるのはとても大事だと、香子はしみじみ思った。
夕飯を食べ終えても二神は離してくれなかった。そうしているうちに、紅児たちが戻ってきたと伝えられた。
『え? もう? まだ戌の刻よね?』
『正刻(戌の正刻は夜8時頃)は過ぎましたが』
『でも思ったより早いわ』
紅夏が随分とがんばったのだろうかと香子は想像した。とはいえそれほど早い時間でもないので、紅夏のことだから報告は明日になるのではないかと思った。けれどそんなことはなかった。
一応帰着の挨拶に来たようだったので、香子は玄武に抱かれてそれを受けた。
『詳しくは明日でいいわ。今夜はゆっくり休んでね』
香子は紅児と紅夏にねぎらいの言葉をかけた。そうして二人を退室させた。すでに夕玲も退室している。部屋付きの侍女も四神宮の横の建物に返してあげなければいけないだろうと香子は思った。
香子は思うところあって、紅夏がもし戻ってくることがあればと黒月に伝言を頼んだ。そうしてから玄武に向き直った。
『玄武様、私入浴がしたいです』
『わかった』
『その後は玄武様の室に連れて行ってください』
『ああ』
玄武に優しく抱きしめられた。四神の室はみな造りは同じだが、やはり自分の室かそうでないのかは重要なようだ。
喪失感でどうにかなってしまいそうだと、香子は四神に縋った。そんなに長い期間、紅児とは一緒にいたわけではない。だがなんとなく同志のように香子は思っていたのだ。言葉がわからないのにがんばってこの国で生きてきた紅児は、香子にとってすごい存在だった。
香子が身につけた言語もまた一朝一夕で身につけたものではなかったが、香子よりも紅児が遭った理不尽から、紅児を守りたいと香子は思っていた。
だが現実はそううまくはいかなくて。
紅児の父親や同じ船の船員が海の藻屑と消えたこと以上の衝撃はなかっただろうが、それでも待っていてくれるだろう実の母親が、再婚していたと知ったのはやはりショックだっただろうと香子は想像した。ただ、紅夏は紅児の叔父がなんらかの嘘をついているようだと言っていた。それが紅児をかき乱すことでなければいいのだが。
『……心ここにあらずだな』
朱雀が喉の奥で笑った。
『……申し訳ありません』
『よい。そなたが他の者たちに心を砕くのはいつものことだ。我らはそんなそなたも愛しくてならぬのだから』
玄武と朱雀は香子を慰めるように優しく抱いた。
明日には、紅児が四神宮から出て行ってしまう。もしかしたらすぐに戻ってくるかもしれない。だがそれがしばしの別れとなる可能性もあるのだ。
香子は二神にそっと頬を寄せた。
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「貴方色に染まる」は109,110話辺りです。
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