異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

3.中華料理に罪はないのです

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 うちの四神がカッコよすぎるのがいけない、と香子は思う。結婚式を挙げるのは四神のうちの誰か一人とではあるのだが、全員が香子の夫であるわけで。
 香子はそれが表情に出ないように耐えるのが精いっぱいだった。
 やがて料理が運ばれてきた。

『食べたい物があればとお尋ねしたが、花嫁殿は魚介類を好むのだったな』
『ああ、そうだ』

 答えたのはまたしても朱雀。今日は朱雀が香子の言葉を代弁してくれるつもりのようだった。もちろん変なことを言ったら撤回させるつもりである。
 香子は玄武に抱かれたまま椅子に腰かけた。今回はみな同じ卓ではないのでかまわないが、圓卓だったらさすがに下りなければならないだろう。広間なので一人一人の前に料理が並べられる形だった。これならば気兼ねすることなく食べられると、香子はほっとした。
 四神は香子に触れていたわけではないので、それほどは食べない。どれも一口ずつ手をつけるだけである。玄武は香子が好きそうな料理はそのまま香子に渡した。炒り卵と野菜を和えたような料理である。(見た目がそうだった)

『香子は卵が好きなのであったな』
『木耳(キクラゲ)は玄武様が食べてください』
『苦手であったか』
『はい』

 肉類は玄武がさりげなく食べ、香子の好きな物だけを香子に渡す徹底ぶりに、皇后と皇太后は口元を綻ばせた。
 冬の大祭とこの国で呼ばれている春節は、本来皇帝と神官のみで祭祀を行うのだが(祭祀を行うのも天壇ではない)、今回は四神とその花嫁が参加するので急きょ天壇で行うことになった。いつも祭祀を行っている場所は狭いのがその理由であるという。
 そして春の大祭と同じく、輿に乗って天壇まで移動する。祭祀を行い、戻ってきたら新年の挨拶をするというのだから、香子からしたら面倒この上ない。ただ儀式というのはそういうものだと知っているから、香子も否やはない。ただ面倒だなと思うだけである。
 出席は決めたが春節はまだ一月先だ。少しは余裕があるのかなと香子は思った。

『また花嫁様の衣裳を決めねばなりませぬな』
『そうでございますね。さっそく職人を呼ばなくては』

 皇太后と皇后がとんでもないことを言っていて、香子は白目を剥きそうになった。

『衣、衣裳、ですか……』
『そうじゃ。新年の為の衣裳は沢山作らねばならぬ。仕立て屋も呼ばねばならぬ故、手配ができ次第花嫁様に来ていただこう。それでかまいませぬな?』
『あのぅ……お手柔らかに願います』

 皇太后がほ、ほと笑った。

『花嫁様は面白いことをおっしゃる』

 香子からしたら冗談でも笑いをとったつもりもないのだが、新年に向けて衣裳を大量に作るのは当たり前のことらしい。そういえば日本の実家でも元日には新しい服を用意されていたなと香子は思い出した。

『そんなに数はいりませんので……』
『四神とその花嫁様には不自由をさせないだけの準備があるはずじゃが?』

 皇太后がちら、と皇帝を見やった。

『……はい。四神とその花嫁殿には何不自由なく暮らしていただけるだけの備えはある。衣裳はいくら作ってもらってもかまわぬ』

 皇帝がしぶしぶ答えた。

『そういうわけですから布もいろいろ取り寄せましょうぞ。花嫁様の白い肌にはどんな色の衣裳でも似合うはずです』

 皇太后の言葉に皇帝の顔が引きつった。皇帝ってちゃんと予算の把握をしているのだろうかと香子は内心首を傾げた。
 前菜もいろんな種類が出て、香子はいろいろ食べられて嬉しかった。肉類は食べなかったが、やはりうずらの卵を漬けたものなどもお気に入りである。さりげなく朱雀たちも皿を回してくるから前菜の段階でも香子はそれなりに食べた。
 次に出てくるのは主菜と呼ばれるさまざまな料理である。
 乾焼蝦仁も出てきた。日本ではエビチリの名で有名だが、チリソースなんてものはこの国にはない。豆板醤を使った辛い海老の料理だ。香子はこちらの料理も好きである。野菜も肉料理も出てきたが、香子が相好を崩したのはやはり清蒸魚であった。
 それなりに大きな魚が広間に運ばれ、上品に取り分けられる。四神に渡された皿は全て香子に回ってきた。

『嬉しいですけど……ちょっと恥ずかしいです』
『そのようなこと構わずともよい。そなたがおいしそうに食べている姿を見るのが、我らの喜びなのだから』

 玄武にそう言われて、香子は頬が熱くなるのを感じた。
 朱雀が魚が残るならば全て身を掬って持ってくるように言った。
 そこまでは、と香子は遠慮したかったが、

『花嫁様は気になさらずともよい。これらの料理は四神と花嫁様の為に用意されたのじゃからのぅ』

 皇太后に笑顔でそう言われては辞退することもできない。香子は頬を染めたまま魚の残りもおいしくいただいた。
 香子が好きだからと、ごはんには水餃子が出てきた。いろいろな種類が少しずつ出てきて、香子はあれもこれもしっかり堪能した。
 本当にどれもこれもおいしくて、いくらでも食べられると香子は思った。
 おかげで香子は皇帝の存在も忘れて料理を味わうことができ、四神もそんな香子を眺め、とても幸せそうであった。


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恋愛小説大賞応援ありがとうございました! 71位でした。これからもよろしくお願いします。
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