異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
474 / 653
第4部 四神を愛しなさいと言われました

22.四神は嫉妬しないと言っていたけれど

しおりを挟む
『白虎様』

 白虎の室の扉が、白雲によって開かれる。居間の長椅子で寝転がってくつろいでいる白虎が目に入り、香子は笑んだ。
 白虎に会うのも久しぶりだと香子は思った。実際には、全然久しぶりではないのだが。
 そう香子が思ってしまうぐらい、朱雀の領地での経験は濃かったのだと言えよう。

香子シャンズ

 白虎は緩慢な仕草で立ち上がり、白虎の室に足を踏み入れた香子を抱き上げた。その当たり前だという白虎の動きに、香子は目を丸くした。
 そのまま長椅子に戻るのかと香子は思っていたのだが、白虎の足は寝室に向かう。

『えっ?』

 香子は慌てた。

『白虎様、ちょっとちょっと!』
『なんだ?』

 低い声が香子の鼓膜を震えさせた。その低さにゾクリとするものを感じて、香子は軽く首を振った。

『お話、したいです』
ベッドでもできよう』
『じゃあ触らせてください!』

 白虎は大仰にため息をついた。

『……本性を現わしたら襲ってしまいそうだが、いいのか?』
『うっ……』

 それは困ると香子は思った。しかしもふもふには触れたい。もふもふに触れたらそのまま抱かれてしまうかもしれない。
 香子は葛藤する。もふもふに埋もれながら昼間から抱かれる? カーッと顔が熱くなるのを感じた。

『……たまらぬな』
『えっ?』

 白虎は本当に我慢ができなかったらしく、香子を寝室に運ぶと香子の目を閉じさせて虎の姿に戻り、香子の全身を舐め回した。

「あっ、やっ、白虎、さまぁっ……!」

 どうして昼間からされてしまうのかと大事なところを舐められながら香子は啼いた。
 さすがに理性でどうにか抑えたらしく、白虎は香子を最後まで抱きはしなかった。

『香子、すまぬ……朱雀兄を呼んだ故、連れて行ってもらえ』
『はい……』

 いつもならここで白虎は青龍を呼ぶ。なのに朱雀に声をかけるとは珍しいことだと香子は思った。いきなり襲われてしまったが、香子は白虎のことも好きだから流されてもいいと思っていた。白虎は何故このようなことを己がしたのかわかっていないようだった。

(四神が嫉妬しないなんて嘘じゃないかしら)

 それは香子の自惚れかもしれなかったが、香子は四神の花嫁である。白虎の行動をどう解釈しようと香子の自由であった。
 白虎は香子を見ないようにして人型に戻った。そして軽くだが漢服を直す。香子はそれに礼を言った。

『白虎様、ありがとうございます』
『……礼を言われるようなことはしておらぬ』
『私が言いたいだけです』

 昼間だというのに、抱かれてもよかったのに、なんて思った自分が香子は不思議だった。四神の想いはまっすぐで、ただ香子を愛しいと思ってくれていることがようやく香子にも感じられた。

(私って鈍いのかなぁ?)

 香子は実感するまでが長かったようである。

『白虎、香子を引き取りにきたぞ』

 朱雀が香子を迎えに来た。白虎はふわりと香子を抱き上げると、寝室を出て朱雀に渡した。

『……どうかしたのか』
『……止められなくなりました』

 朱雀の問いに、白虎が静かに答えた。

『それは困るな。今宵香子は玄武兄と二人きりで過ごすことになっている。明日の夜ではどうだ』
『香子、明日の夜はよいか?』

 夜の己のスケジュールを把握されているのはいい。だが勝手に決められるのはどうなのだと香子は思う。
 けれど、白虎の縋るような金の瞳に胸が高鳴った。

『あ……明日の、夜、でしたら……』

 また香子の頬は真っ赤になった。その顔を眺め、白虎は苦笑した。

『香子、そなにかわいい顔をすると抱いてしまうぞ?』
『ええっ?』

 かわいい顔などしていないと香子は思う。けれど四神には香子かわいく見えるのだ。事実、この世界に香子が召喚された時よりも香子は目に見えて美しくなっている。髪は鮮やかな暗紫紅色ワインレッドに染まり、肌は透き通るように白くなっている。白虎によって育てられた胸はたわわで、しかも敏感だ。

『明日の夜で……』
『わかった』

 香子は朱雀の胸に頭をもたせかけた。白虎の室に来たら白虎に襲われてしまうなんて、香子は思ってもみなかった。けれどそれぐらい四神は香子を愛しているのだ。

(なんかー……やっぱ実感すると恥ずかしい……)

 これが朱雀の腕の中でなく、自分の部屋であったならと香子は思う。寝室に駆けこんで床の上で悶え狂ったに違いないだろう。それぐらい四神の想いを感じ取ってしまい、香子の内心はとんでもないことになっていた。

(私、なんで今まで平気だったんだろう……)
『香子、服を直した方がいい。一度そなたの部屋へ向かおう』
『はい、お願いします……』

 如何にも襲われましたという恰好でいることに香子はやっと羞恥を覚えた。朱雀もいつになく冷静である。
 部屋に戻ると、延夕玲や侍女たちが目を丸くした。

『朱雀様? 花嫁さまがどうかなさいましたか?』

 夕玲が狼狽を隠せないのも珍しいことだった。

『香子の服を整えよ』
『承知しました』

 侍女たちによって乱れた漢服と髪を直され、香子はまた朱雀に抱き上げられた。

『夕飯については我の室に知らせを寄こすように』
『承知しました』

 なんだったのだろう、と朱雀の腕の中で香子はぼんやり思った。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...