異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第1部 四神と結婚しろと言われました

37.やっぱりごはんがとてもおいしいです

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 それほど待たされることなく再び温かい料理が運ばれてきて香子はほっとした。
 特に点心類がおいしい。朝からいろいろな種類の点心が選べて香子はにこにこしてしまう。留学していた頃も食べられないことはなかったが、北京で飲茶をするのはやはり贅沢品の扱いでそれなりにいい値段がしたものだった。

『そなたは本当においしそうに食べるな』

 朱雀もそんな香子の様子に笑みを浮かべる。

『おいしいですよ?』

 いろいろ箸をつけながら、また食べすぎ決定だと香子は思った。

(不老、はいいけどさすがにこれを毎日食べてたら太るよねぇ……)

 香子は眉を寄せた。宮廷内の庭園を散歩とかさせてもらうことは可能なのだろうか。ただずっとこの四神宮にいるだけではなんともつまらない。

(ホントは街に出たいなー……)

 屋台とかで買い食いしたいとも思う。贅沢だということはわかっているが考え出すと止まらない。

『香子、どうしたのだ?』

 いつのまにか箸が止まっていたらしい。玄武に心配そうに聞かれて香子ははっとした。

『あ、いえ……。宮廷内の庭園とか散策させていただくことはできないのかなと思いまして……』
『ふむ……』

 四神が少し考えるような顔をした。
 白雲が心得たように侍女に何事かを申しつけた。侍女がそれに礼をして食堂を出ていく。
 いくらも経たないうちに趙文英がやってきた。

『趙文英、お呼びと伺いまして参りました』

 そう言って拱手する。香子はなんだかとてもすまない気持ちになった。

(でもいくら引きこもりだからってずっとここにいるのもなんだか……)

 内心自分にぐだぐだと言い訳をしている間に玄武が用件を告げる。

『宮廷内の庭園を見たいと香子が申しておる。可能か否か』

 趙は少し考えるような表情をした。

『庭園はいくつかございますので聞いて参ります。昼前にはお答えできるかと』
『ではそのように』

 趙は再び拱手し、少し迷うような表情をした。それに気付いた青藍がすっと趙の側に行く。

『何か?』
『お手数ですが少々……』

 趙の言いづらそうな科白に青藍が頷く。そして二人は食堂を出て行った。
 香子はなんだろうと首を傾げたが、おそらく自分のことではなさそうなので気にしないことにした。
 あらかた食事も終りデザートが出てきて、香子は満面の笑みを浮かべた。
 北京のよく行く店で食べていた黄金色の揚げ饅頭マントウに練乳を添えたものが出てきたのである。揚げた黄金色の饅頭と白い饅頭が円形に並んでいて見た目もとても綺麗だった。

『わぁ……』

 おなかはいっぱいなのだが別腹とはよく言ったもので、ためらいもせず香子は手を伸ばした。侍女たちはそんな香子の一挙手一投足に目を光らせていた。これで揚げ饅頭がお気に入りだと彼女たちの心のメモに記載された。
 四神は一年に一度、春節に宮廷へやってくる。それから三日ほどこちらの四神宮に滞在し、また領地へ戻っていく。基本四神の世話はあまり必要ない。自分たちでほとんどのことをしてしまうし、食事も宴席でしかとらないのが普通だった。
 しかしこのたびは異世界から召喚された花嫁と共に一年間四神宮に滞在するという。
 花嫁の不興を買わないようにと侍女たちが考えるのは当然のことだった。
 しかも今回はそれだけでなく四神の眷族までやってきた。四神は花嫁以外一切興味を持たないことは知っているが、眷族は稀に人間と一緒になることもあるという。神の眷族は皆見目麗しく、もしも気に入られれば堅苦しい宮廷を抜けだすこともできるのだ。
 四神宮の侍女たちは家柄はそれほどよくないもののきちんと教育を受けている。もう少し家柄がよかったりお金があればおそらく後宮に召されることになったであろう淑女たちだ。
 けれど彼女たちは四神宮で勤めることに不満はなかった。
 皇帝の寵を得る為に必死になることよりも、ここで穏やかに過ごせることの方が彼女たちにとっては大事だったのである。
 幸い花嫁は尊大ではなく侍女たちに対し気遣いまでする。これから先のことはわからないが、いい主人に恵まれたと彼女たちは口元をそっと緩めた。
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