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第1部 四神と結婚しろと言われました
46.四神は意外と人間臭いです(趙、王視点)
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趙文英と王英明は目の前で起こった出来事に唖然とした。付き従っている侍女たちも悲鳴を上げそうになり、とっさに口元を押さえる。
白虎が苦笑した。
『……やはり耐えられませんな』
『こればかりは仕方なかろう……』
白虎への朱雀の返事に青龍が頷く。
四神は玄武の行動の意味がわかるようだったが、趙や王にはさっぱりだった。彼らが顔を見合わせると白雲がやれやれというように口を開いた。
『玄武様は貴方がたに嫉妬されたのですよ』
その言葉を聞いて趙と王は弾かれたように白雲を見た。白雲がそれに頷く。
『嫉妬とは……』
思いがけない言葉に趙が思わず呟いた。
『言葉通りです。四神は花嫁様に関してのみ非常に心が狭くなります。四神や眷族に対して嫉妬されることはありませんが、相手が人間の場合は別です』
白雲の説明を聞いて王は眉根を寄せた。王は趙とは違ったタイプのイケメンである。宮廷の侍女たちも王を見かければ頬を染める。もちろん王自身モテるという自覚はあった。
けれど香子は王を見ても何の反応も示さなかったし、王から見ても香子は好みから外れていた。香子は王から見ても頭がいい。聡明すぎる女は時に厄介でもある。
二人が納得していないことを察して白雲は更に言った。
『四神が人に嫉妬するのは理屈ではないのです。おそらく花嫁様が人ということもあって危機感を覚えるのでしょう。貴方がたに危害を加えるということはありませんのでお気になさらず』
それに趙は頷いた。
『それでは今まで通りでよろしいのですね?』
『はい。ただし決して花嫁様を誘惑なさろうとは考えないようお願いします。その際の命の保証はできかねます』
趙の確認に、白雲は淡々と恐ろしいことを言う。
『承知しました』
趙は拱手する。初めからそのような目で香子を見た覚えはないので問題はないが、一応中書令には伝えた方がいいだろう。元より惹かれたとしても叶わぬ想いだ。
『それは……皇帝陛下はご存知なのでしょうか?』
王が尋ねる。
『おそらく存知でいるとは思われます。そうでなければ禁域に案内せよとは言わないでしょう』
王は愚かなことを尋ねたものだと頬を染めた。御花園は皇族であれば誰でも足を踏み入れることができる場所であるのに対し、この景山は皇族であっても皇帝の許可が下りなければそう簡単に入ることはできない禁域である。景山に従事する者は厳選に厳選を重ねて選ばれているし、基本ここを訪れる者に姿を見せないような配慮がなされていた。
花嫁に懸想することは元より、もし皇族の誰かが四神に懸想することになっても厄介である。
低い山のてっぺんにある四阿の中で何が行われているかこちらからは窺えない。離れている為声も聞こえずどうしたものかと趙と王が考えていると、
『仕方ない、戻るとしよう』
朱雀が嘆息して言った。それに侍女たちもほっとする。
『しかし、玄武様と白香様は……』
趙が困ったように言うと、白虎が笑った。
『放っておいて大丈夫だ。ここでは玄武兄もさほど無体は働かぬだろう。折り合いがつけば勝手に戻ってくるはずだ』
そう言って朱雀の後に続く。ここは従うしかないと趙と王もまた彼らの後に続いた。
つくづく四神というのは不思議な存在だと王は思う。今まで四神というのは春節の宴の際遠くからその姿を見るだけの存在だった。彼らは一様に超然としていて、これが神という存在なのかと身震いをしたほどだった。
しかしそんな四神も花嫁の前ではただの男に戻るらしい。異世界から来たという女性の愛を乞うその姿は皇帝でなくとも危機感を覚える。
もし花嫁を籠絡しようと思う者が現れれば、下手すると国が潰れてしまうことになるだろう。そうならない為にできるだけ人の目が触れないところに案内するということは当然ともいえる。
何事もなくこの一年が過ぎますようにと心から王は願った。
白虎が苦笑した。
『……やはり耐えられませんな』
『こればかりは仕方なかろう……』
白虎への朱雀の返事に青龍が頷く。
四神は玄武の行動の意味がわかるようだったが、趙や王にはさっぱりだった。彼らが顔を見合わせると白雲がやれやれというように口を開いた。
『玄武様は貴方がたに嫉妬されたのですよ』
その言葉を聞いて趙と王は弾かれたように白雲を見た。白雲がそれに頷く。
『嫉妬とは……』
思いがけない言葉に趙が思わず呟いた。
『言葉通りです。四神は花嫁様に関してのみ非常に心が狭くなります。四神や眷族に対して嫉妬されることはありませんが、相手が人間の場合は別です』
白雲の説明を聞いて王は眉根を寄せた。王は趙とは違ったタイプのイケメンである。宮廷の侍女たちも王を見かければ頬を染める。もちろん王自身モテるという自覚はあった。
けれど香子は王を見ても何の反応も示さなかったし、王から見ても香子は好みから外れていた。香子は王から見ても頭がいい。聡明すぎる女は時に厄介でもある。
二人が納得していないことを察して白雲は更に言った。
『四神が人に嫉妬するのは理屈ではないのです。おそらく花嫁様が人ということもあって危機感を覚えるのでしょう。貴方がたに危害を加えるということはありませんのでお気になさらず』
それに趙は頷いた。
『それでは今まで通りでよろしいのですね?』
『はい。ただし決して花嫁様を誘惑なさろうとは考えないようお願いします。その際の命の保証はできかねます』
趙の確認に、白雲は淡々と恐ろしいことを言う。
『承知しました』
趙は拱手する。初めからそのような目で香子を見た覚えはないので問題はないが、一応中書令には伝えた方がいいだろう。元より惹かれたとしても叶わぬ想いだ。
『それは……皇帝陛下はご存知なのでしょうか?』
王が尋ねる。
『おそらく存知でいるとは思われます。そうでなければ禁域に案内せよとは言わないでしょう』
王は愚かなことを尋ねたものだと頬を染めた。御花園は皇族であれば誰でも足を踏み入れることができる場所であるのに対し、この景山は皇族であっても皇帝の許可が下りなければそう簡単に入ることはできない禁域である。景山に従事する者は厳選に厳選を重ねて選ばれているし、基本ここを訪れる者に姿を見せないような配慮がなされていた。
花嫁に懸想することは元より、もし皇族の誰かが四神に懸想することになっても厄介である。
低い山のてっぺんにある四阿の中で何が行われているかこちらからは窺えない。離れている為声も聞こえずどうしたものかと趙と王が考えていると、
『仕方ない、戻るとしよう』
朱雀が嘆息して言った。それに侍女たちもほっとする。
『しかし、玄武様と白香様は……』
趙が困ったように言うと、白虎が笑った。
『放っておいて大丈夫だ。ここでは玄武兄もさほど無体は働かぬだろう。折り合いがつけば勝手に戻ってくるはずだ』
そう言って朱雀の後に続く。ここは従うしかないと趙と王もまた彼らの後に続いた。
つくづく四神というのは不思議な存在だと王は思う。今まで四神というのは春節の宴の際遠くからその姿を見るだけの存在だった。彼らは一様に超然としていて、これが神という存在なのかと身震いをしたほどだった。
しかしそんな四神も花嫁の前ではただの男に戻るらしい。異世界から来たという女性の愛を乞うその姿は皇帝でなくとも危機感を覚える。
もし花嫁を籠絡しようと思う者が現れれば、下手すると国が潰れてしまうことになるだろう。そうならない為にできるだけ人の目が触れないところに案内するということは当然ともいえる。
何事もなくこの一年が過ぎますようにと心から王は願った。
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