71 / 653
第1部 四神と結婚しろと言われました
71.懸念(趙視点)
しおりを挟む
午前中にやってきた王英明に、趙文英は香子の提案を伝えた。
王はそれに少し考えるような顔をしたが、それほど時間を置かずに頷いた。
『……中書令に伝えておこう。しかしそれにしても、随分と欲のないお方だな……』
『私もそう思う』
趙も同意して笑んだ。
女性というのは基本装飾品や高価な衣類をいくらでも求めるものというイメージがあるだけに、香子の提案は意外だった。
『ただ、四神宮に仕える者の給金に上乗せするというのは意外な考え方だ。詳しくお尋ねするようにと言われるやもしれん』
『そうですね……その時はまたお尋ねしてまとめましょう』
趙としてもそれは詳しく聞きたいと思っていたところだ。
この国では給金が身分や職種、勤めた年数によって決められている。扶養家族の数によって手当が出ることもあるがまれである。その為子どもが多すぎて食べていけなくなるという家族もある。そういう家族は都市部に口減らしの為に子どもを捨てるということもままあった。おかげで都市部にはそういった子どもを育てる為の孤児院があり、社会的な問題にもなっている。
まだ趙は独身だが妻帯者からお金がかかってたいへんという話を何度も耳にしていた。いろいろ話を聞いているだけでこのまま独身でもいいかもしれないと思うのは若者の常である。
(白香様のような女性であれば……)
赤い髪はいただけないが、あの聡明さは理想だった。きっと香子が側にいれば、毎日が楽しいに違いない。
そこまで考えて趙は軽く首を振った。
(何を馬鹿な……)
おそれおおくも香子は四神の花嫁である。懸想していいわけがなかった。
王が持ってきた贈り物の目録を見て嘆息する。昨日の今日だというのにもういくつも届いていた。
しかも王がとんでもない話まで持ってきた。
なんと、四神に花嫁が現れたという話を聞いた皇太后が王都にやってくるという。
皇太后の四神好きは有名であった。すでに遷都してから何百年も経っているというのに、前の皇帝が御隠れになってからわざわざ西の地である洛陽に居を移したのは、少しでも四神のそばにいたかったからという理由に他ならない。
しかもすでに出発しているというから、おそらく神殿にも皇太后の息のかかった者が入っているということが窺えた。
(早ければ半月……どんなに遅くても一月はかかるまい)
その為急遽室を整えたり出迎えの準備をする必要があり、すでに宮廷中が浮足立っていた。
四神宮には関係ないことなので特になんの準備もする必要はないが、皇太后がいる間晩餐会に一度ぐらいは四神や香子も出席する機会があるに違いない。
(何事もなければいいが……)
趙は皇太后の人となりは知らない。王や中書令から聞いた話によると、皇族の中には神を侮る者も少なからず存在するという。
平和な時代が長く続いているということも影響しているのだろうが、神は絶対的なものだと教えられて育った趙からすればなんともおそれおおいことだ。
長い歴史の中では、神の怒りをかって滅ぼされた国もある。それはさまざまな研究により花嫁に関連するのではないかと言われているぐらいだ。
昨日の景山のことで花嫁というのは諸刃の剣であるということを趙は理解した。四神にとって優先されるものは花嫁であり、それを害そうとする者があれば存在を消されてしまうだろう。昨日の件は王が上に話してくれたらしいが、やはり中書令はご存知であったらしい。
『花嫁の希望をできるだけ叶えつつ、四神の眷族と連携をはかれ』というお達しがあった。
皇帝もまた一番の脅威は香子であると正しく理解しているようだった。
午後は景山に足を伸ばす予定だろうか。一応準備をしつつ、昼食前に尋ねることにした。
王はそれに少し考えるような顔をしたが、それほど時間を置かずに頷いた。
『……中書令に伝えておこう。しかしそれにしても、随分と欲のないお方だな……』
『私もそう思う』
趙も同意して笑んだ。
女性というのは基本装飾品や高価な衣類をいくらでも求めるものというイメージがあるだけに、香子の提案は意外だった。
『ただ、四神宮に仕える者の給金に上乗せするというのは意外な考え方だ。詳しくお尋ねするようにと言われるやもしれん』
『そうですね……その時はまたお尋ねしてまとめましょう』
趙としてもそれは詳しく聞きたいと思っていたところだ。
この国では給金が身分や職種、勤めた年数によって決められている。扶養家族の数によって手当が出ることもあるがまれである。その為子どもが多すぎて食べていけなくなるという家族もある。そういう家族は都市部に口減らしの為に子どもを捨てるということもままあった。おかげで都市部にはそういった子どもを育てる為の孤児院があり、社会的な問題にもなっている。
まだ趙は独身だが妻帯者からお金がかかってたいへんという話を何度も耳にしていた。いろいろ話を聞いているだけでこのまま独身でもいいかもしれないと思うのは若者の常である。
(白香様のような女性であれば……)
赤い髪はいただけないが、あの聡明さは理想だった。きっと香子が側にいれば、毎日が楽しいに違いない。
そこまで考えて趙は軽く首を振った。
(何を馬鹿な……)
おそれおおくも香子は四神の花嫁である。懸想していいわけがなかった。
王が持ってきた贈り物の目録を見て嘆息する。昨日の今日だというのにもういくつも届いていた。
しかも王がとんでもない話まで持ってきた。
なんと、四神に花嫁が現れたという話を聞いた皇太后が王都にやってくるという。
皇太后の四神好きは有名であった。すでに遷都してから何百年も経っているというのに、前の皇帝が御隠れになってからわざわざ西の地である洛陽に居を移したのは、少しでも四神のそばにいたかったからという理由に他ならない。
しかもすでに出発しているというから、おそらく神殿にも皇太后の息のかかった者が入っているということが窺えた。
(早ければ半月……どんなに遅くても一月はかかるまい)
その為急遽室を整えたり出迎えの準備をする必要があり、すでに宮廷中が浮足立っていた。
四神宮には関係ないことなので特になんの準備もする必要はないが、皇太后がいる間晩餐会に一度ぐらいは四神や香子も出席する機会があるに違いない。
(何事もなければいいが……)
趙は皇太后の人となりは知らない。王や中書令から聞いた話によると、皇族の中には神を侮る者も少なからず存在するという。
平和な時代が長く続いているということも影響しているのだろうが、神は絶対的なものだと教えられて育った趙からすればなんともおそれおおいことだ。
長い歴史の中では、神の怒りをかって滅ぼされた国もある。それはさまざまな研究により花嫁に関連するのではないかと言われているぐらいだ。
昨日の景山のことで花嫁というのは諸刃の剣であるということを趙は理解した。四神にとって優先されるものは花嫁であり、それを害そうとする者があれば存在を消されてしまうだろう。昨日の件は王が上に話してくれたらしいが、やはり中書令はご存知であったらしい。
『花嫁の希望をできるだけ叶えつつ、四神の眷族と連携をはかれ』というお達しがあった。
皇帝もまた一番の脅威は香子であると正しく理解しているようだった。
午後は景山に足を伸ばす予定だろうか。一応準備をしつつ、昼食前に尋ねることにした。
67
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる