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第1部 四神と結婚しろと言われました
72.いろいろなことが思い出されます
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出かける為に漢服を着替えさせられている時、香子は侍女になにかいい染髪料はないかと尋ねた。侍女たちは顔を見合わせる。
どうも染髪をするという文化はないのかもしれない。
(困ったなー……)
赤に染めることはできなくても、せめてみっともない頭になる前に黒にはしておきたいところだ。
『尋ねてはみますが……もしもなかった場合は髪飾り等で調整してもよろしゅうございますか?』
そういえばそういう手もあったなと思う。
『はい、お願いします』
香子の髪はどちらかといえば癖っ毛で、癖を伸ばす為に長い髪のままでいる。うまく癖がつくとキレイなウェーブがかかったりして、そういう日はクラスメイトに声をかけられたりもした。ようは髪を赤くしている以外は基本ものぐさなのである。
しかもアクセサリー類も重いし邪魔という理由で、お気に入りのキャッツアイのブレスレット(偽物)ぐらいしか身につけていなかった。化粧も気合いを入れたことはないし、眉毛はけっこう立派なので美容師さんに眉カットをしてもらうだけ。
「へんに抜いたり書いたりしなくていいよね~」と美容師さんに羨ましがられたりしていた。
しかしここに来てから身体は毎日丁寧に洗われるし、爪はやすりで磨かれて長い金属の爪のようなものはつけられそうになるし(身分のある女性の特権だとか。ごはん食べるのもたいへんなのでお断りした)、髪型やアクセサリー、衣装に至るまで侍女たちが気合いを入れて選んでくれている。化粧のおしろいだけはさすがに薄めにお願いし、あとは口紅をつけるぐらいで勘弁してもらった。香子は歳の割には肌がきれいなので侍女たちもそれには異論はなかった。
(そういえばおしろいの成分も気になる……今度聞いてみよう)
『それにしてもこのきめ細やかな肌……異世界では特別な美容法でもあるのですか?』
夜浴室にてかなり真面目な顔で侍女たちに聞かれた時、香子は目線を上にやった。
(エステとかいろいろあることはあるけど……私の場合はお茶なのかなぁ……)
香子は中国でお茶に嵌り、いろいろな種類のお茶を買い漁っていた。中国ではお茶の試飲をさせてくれるところがけっこうある。烏龍茶を試飲させてもらいながらお茶葉屋の店員さんにいろいろ教わった。お茶が好きということもありその後友人に問屋街のようなところも紹介してもらい、そこに通っているうちに彼氏までできてしまったという経緯がある。
最初のうちは試飲させてもらって毎回一種類ずつ買って帰っていたのだが、頻繁に通ってくるということで面白いと思われたらしい。そのうち、
『学生がいちいち金を使うことはない。寄ってって茶ぁ飲んでけ』
と店の前を通るだけで何軒かには捕まるようになってしまった。
『今日は他の店で買うんだけど』
と言っても姿を見せたら必ず捕まり、お茶葉の味がなくなるまでずーっとお茶を飲まされていた。問屋街ということもありあまり一般の客はこない。大体いいところで茶館を開いているオーナー等がまとめて買いにやってきていた。
そういう商談をしている横でただお茶を飲んでいるだけ、というのも不思議なもので、
『ほら、この子の肌を見て! うちのお茶を飲んでいるからこんなにキレイなのよ!』
とかいろんな店で踊り子さん状態だった時もある。
(この店の烏龍茶も飲んでるけど緑茶屋とか雲南紅茶の関係の店でも飲んでますがー)
と心の中でツッコミを入れつつ、茶のみ友だちもできたりして足しげく通っていたものだった。
そんなことを思い出したらツンと鼻の奥が痛くなった。
お茶葉屋のキレイなおねーちゃん、にこにこ顔で『白沢』と柔らかく呼んでくれていた優しい彼、茶のみ友だちだったIT企業に勤めていた女の子や緑茶屋の店長に、もう二度と会えないのかと思うと今にも泣きそうになった。けれど香子は侍女たちを困らせたくなくて涙を堪え、
『お茶、ですかねぇ……』
とおどけたように答えたのだった。
どうも染髪をするという文化はないのかもしれない。
(困ったなー……)
赤に染めることはできなくても、せめてみっともない頭になる前に黒にはしておきたいところだ。
『尋ねてはみますが……もしもなかった場合は髪飾り等で調整してもよろしゅうございますか?』
そういえばそういう手もあったなと思う。
『はい、お願いします』
香子の髪はどちらかといえば癖っ毛で、癖を伸ばす為に長い髪のままでいる。うまく癖がつくとキレイなウェーブがかかったりして、そういう日はクラスメイトに声をかけられたりもした。ようは髪を赤くしている以外は基本ものぐさなのである。
しかもアクセサリー類も重いし邪魔という理由で、お気に入りのキャッツアイのブレスレット(偽物)ぐらいしか身につけていなかった。化粧も気合いを入れたことはないし、眉毛はけっこう立派なので美容師さんに眉カットをしてもらうだけ。
「へんに抜いたり書いたりしなくていいよね~」と美容師さんに羨ましがられたりしていた。
しかしここに来てから身体は毎日丁寧に洗われるし、爪はやすりで磨かれて長い金属の爪のようなものはつけられそうになるし(身分のある女性の特権だとか。ごはん食べるのもたいへんなのでお断りした)、髪型やアクセサリー、衣装に至るまで侍女たちが気合いを入れて選んでくれている。化粧のおしろいだけはさすがに薄めにお願いし、あとは口紅をつけるぐらいで勘弁してもらった。香子は歳の割には肌がきれいなので侍女たちもそれには異論はなかった。
(そういえばおしろいの成分も気になる……今度聞いてみよう)
『それにしてもこのきめ細やかな肌……異世界では特別な美容法でもあるのですか?』
夜浴室にてかなり真面目な顔で侍女たちに聞かれた時、香子は目線を上にやった。
(エステとかいろいろあることはあるけど……私の場合はお茶なのかなぁ……)
香子は中国でお茶に嵌り、いろいろな種類のお茶を買い漁っていた。中国ではお茶の試飲をさせてくれるところがけっこうある。烏龍茶を試飲させてもらいながらお茶葉屋の店員さんにいろいろ教わった。お茶が好きということもありその後友人に問屋街のようなところも紹介してもらい、そこに通っているうちに彼氏までできてしまったという経緯がある。
最初のうちは試飲させてもらって毎回一種類ずつ買って帰っていたのだが、頻繁に通ってくるということで面白いと思われたらしい。そのうち、
『学生がいちいち金を使うことはない。寄ってって茶ぁ飲んでけ』
と店の前を通るだけで何軒かには捕まるようになってしまった。
『今日は他の店で買うんだけど』
と言っても姿を見せたら必ず捕まり、お茶葉の味がなくなるまでずーっとお茶を飲まされていた。問屋街ということもありあまり一般の客はこない。大体いいところで茶館を開いているオーナー等がまとめて買いにやってきていた。
そういう商談をしている横でただお茶を飲んでいるだけ、というのも不思議なもので、
『ほら、この子の肌を見て! うちのお茶を飲んでいるからこんなにキレイなのよ!』
とかいろんな店で踊り子さん状態だった時もある。
(この店の烏龍茶も飲んでるけど緑茶屋とか雲南紅茶の関係の店でも飲んでますがー)
と心の中でツッコミを入れつつ、茶のみ友だちもできたりして足しげく通っていたものだった。
そんなことを思い出したらツンと鼻の奥が痛くなった。
お茶葉屋のキレイなおねーちゃん、にこにこ顔で『白沢』と柔らかく呼んでくれていた優しい彼、茶のみ友だちだったIT企業に勤めていた女の子や緑茶屋の店長に、もう二度と会えないのかと思うと今にも泣きそうになった。けれど香子は侍女たちを困らせたくなくて涙を堪え、
『お茶、ですかねぇ……』
とおどけたように答えたのだった。
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