異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

55.学習しないと言われてもしかたないのです

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 夕飯は侍女たちが目を剥くほど食べた。
 香子としても背に腹は変えられなかったのである。それでも後半は紅炎への怒りであまり味がわからなかったことを悔やんだ。

(言うにことかいて小姑!? 雪紅シュエホンが紅炎のこと、好きでたまらないとでも言うのじゃなければ手助けなんかしないんだからぁっ!)

 香子は怒り狂っていた。
 だが、そんなやりとりを見ていた四神もまた嫉妬をつのらせていたことを、香子は気づいていなかった。
 それでも食休みを終えるまでは四神も耐えていた。そろそろよかろうと玄武がスッと立ち上がり、何事かと香子が玄武を見た時には、香子はもう玄武の腕の中にいた。

『?』

 え? なんで? と香子の頭の中は?でいっぱいである。

『そなたは我らを煽るのがうまい』
『え?』

 香子の耳を震わすバリトンと、色を含んだ壮絶な流し目が香子の全身を真っ赤に染め上げた。

『青龍、先に湯殿へ向かう。じっくりと愛そう』
『承知しました』
『……え? え?』

 香子は玄武に抱かれたまま、浴室に運ばれる。浴室はどちらでも入れるように常に湯が満たされているので、そのまま向かっても全く問題はなかった。
 そうして、玄武、朱雀、青龍によって香子はひどく甘い一日を過ごすことととなった。


『ううう……おなかすいたよぉ……』

 あんなに沢山食べたのに、と香子は涙をぼろぼろこぼした。
 目が覚めた時はもう辺りが暗くなっている。夜から昼近くまで抱かれ、気を失うように眠りについて起きたらもう夕飯の時間のようだった。寝る時間も込みとはいえ、丸一日食べていなかったようである。(香子の主観として)
 玄武と朱雀は自分たちの室に戻ったようだ。

香子シャンズ……湯を飲め』

 青龍に優しく身体を抱き起されて、白湯の入った茶杯を渡された。香子はそれをこくこくと飲む。

『……ふぅ……』

 空腹には白湯さえも甘露であったが、それよりも食べる物がほしい。途中で果物を食べたりしていたことを香子は思い出した。水分はしっかり摂らせてもらっていたが、食べ物は全く入ってないと思えるぐらいおなかが鳴った。

『しばし待て』
『……しすぎです……』

 香子は力なく青龍に抗議した。

『すまぬ。そなたが愛しすぎてな……玄武兄も朱雀兄も耐えられなかったのだろう』

 青龍が何やら不穏なことを言っている気がしたが、香子はあまりの空腹によくわかっていなかった。
 そうして、どうにか青龍の室で夕飯を食べ終えて落ち着いた。
 それもまたすごい量だったが、もう厨房の方も侍女たちも何も考えないことにしたらしい。次から次へと料理を運び、香子も遠慮なく食べたのだった。

『……やっぱり春巻が好き……おいしい』

 普通の春巻も、馬が作る焦げ焦げの春巻も、海老春巻も全て好きだと香子は思った。もちろん他の料理も全ておいしい。
 満腹になれば満足である。やっと香子の機嫌が直り、香子は少し頭が働き出すのを感じた。

(……今回のえっち、すごくねちっこかった気がするけど……)

 青龍に抱かれるのはどちらにせよねちっこいのだが、途中で記憶が曖昧模糊としてきたのはいつも通りである。毎回朱雀の熱を受けて全身を狂おしい熱でいっぱいにされてから抱かれるのだ。
 抱かれている間はただもう気持ちいいとしか思えなくて、いつまでも抱いていてほしいと香子が思うのはいつも通りである。実際には甘すぎてもうムリ状態になっているのだが、それを思い出すのは決まってひと眠りした後なので気持ちよかったということを中心に覚えているのだった。

『青龍様、あのぅ……』
『如何した?』

 長椅子の、青龍の膝の上で香子はお茶を一口飲んでから切り出した。
 内容的に改めて聞くのは恥ずかしいのだが、疑問に思ったことはその場で聞かないとのちのちたいへんなことになる。それを香子はもうわかっているので考えながら口を開いた。

『あの……いつもならここまで抱かれないと思うのですが、何かありましたか……?』

 時間もそうだし、本当にねちっこく愛されていた記憶がよみがえってきて、香子は真っ赤になった。

『……そなたは鈍感だな』

 青龍がため息混じりに呟く。香子はきょとんとした。

『鈍感……でしょうか』
『ああ。趙の話まではまだ耐えられたのだが、な……』
『あ』

 そういえば、と香子はやっと思い出した。四神は香子が人間を気にすればするほど嫉妬するのである。それは人間の男だけでなく女性に対してもそうであった。

『……部屋付きの侍女のことですね。申し訳ありません』
『そなたが謝ることではない。我らの堪え性がきかないだけだ。それに……朱雀の眷属もそなたを煽るようなことを言った』
『ええまぁ……』

 香子は自分の部屋付の侍女である。林雪紅のことを思い浮かべた。きっとこういうのもダメなのだろうということも香子はわかっている。だが相手は香子より若いし、紅炎に押し倒されでもしたら強制的に娶られてしまうに違いない。いくらこの国で女性の結婚が誰かに決められることだと知っていても、香子は望まないまま四神の眷属に娶られるということはできるだけ回避させてあげたかった。
 余計なお世話といえばそうなのだが、四神の眷属と共になるということはありえない程に長い時を過ごすのである。
 そう簡単に攫っていいとは、香子はとても言えない。

『……また考えているのか』
『申し訳ありません。雪紅の意志ならばいいのです。ですが、強制的にというのはどうしても納得がいきません。だって……』

 青龍は香子の頬を撫でた。

『四神の眷属の番になるということは……とても長い時を共に過ごさないといけないのでしょう?』
『……そう言われてみればそうだな』

 青龍もさすがに気づいたらしい。

『……そんな覚悟を、まだ二十年も生きていない少女に背負わせてはいけないと思います』
『そうであったな』

 いくらなんでも眷属の成人年齢である五十歳まで待てとは言わない。だが香子の中では、二十歳未満は子どもなのだ。

『……話してみよう』
『青龍様、ありがとうございます』
『そなたの為ならば』

 青龍の秀麗な面が近づいてくる。香子はそれにそっと身を委ねたのだった。


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エールとっても嬉しいです。ありがとうございますー!
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