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第1部 四神と結婚しろと言われました
108.惑わす香(前半侍女、後半趙視点)
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侍女たちは困惑していた。
朝方出された真っ赤に染まった床単を見た時、彼女たちは心臓が止まるかと思った。どれだけ香子が玄武によって無体を働かれたのかと心配で、香子が出てくるまで安心ができなかった。
だが夕食の席にやっと出てきた香子は気だるげではあるものの、元気そうではあった。その代わりなのか、ひどく妖しい色香を放っていた。
侍女たちの性癖はいたって普通である。それなのに香子を見ているだけでなんだかおかしな気分になりそうだった。着替えさせる時もできるだけその肌を見ないようにしていたぐらいである。
(浴室でのお世話はどうしたら……)
女同士ということもあって、香子は恥ずかしそうではあるものの彼女たちの手を拒むことはない。
侍女たちは自分たちがおかしいのかと四神や眷族を窺った。
見たかんじ四神は相変わらず香子を狙っているが、眷族は平然としている。玄武に抱かれたことで色香を放っているのだとしたら、影響を受けるのは侍女たちに留まらないだろう。
(趙様や王様が見たら……)
ただ侍女たちのように頬を染めるだけで済むならいい。だがそれだけで済むはずはないと侍女たちは危機感を募らせる。
(花嫁様がお食事を終えられたら、眷族の方に相談しよう)
侍女頭はそう決意した。
趙文英もまた困惑していた。
四神と香子がやっと夕食の席に出てきたというので眷族に報告事項など伝えようとしたのだが、どうしても侍女たちが通してくれないのである。
『許可がおりましたら呼びに参りますからどうかこちらでお待ちください!』
急ぐことではないのだがなにぶん王英明も待たせている。だがここで強行するのも憚られたので趙は苦笑しながら四神宮から出ることにした。
『何かあったのか?』
王に聞かれ趙は首を振る。朝も王は来ていたが、趙は余計なことはなにも言わなかった。ただ、どうも香子の体調がよくないらしいということだけ伝えておいただけである。
『今日は随分と気分が優れないのだろう。雨も降っていることだしな』
さもありなんと言うように王も頷く。めったに降らない雨のおかげで官吏たちもなかなか仕事が進まないらしい。
『そろそろ疲れが出てきた頃なのだろうな。まだ成人したかしないかじゃないか?』
王の科白に趙はそういえば香子の歳を伝えていないことに思い至った。
漢民族は背の高い者が多い。背の低い者は他の民族との混血であることがほとんどである。皇族はともかく官吏や女官、侍女は漢民族が占めている。
実際香子よりも侍女たちの方が若いのだが、彼女たちの方が背も高いしスタイルもいい。そう考えると、王が香子のことを成人したばかりなのではないかと思い込んでもおかしくはないかもしれなかった。
そして皇帝や官吏たちからしても香子が花嫁であることが重要なのであり、歳やその背景など詳しく知ろうとはしていなかった。
『……白香様は二十二歳だそうだ』
『二十二!?』
王は信じられないという顔をした。それはそれで失礼だとは思うが、趙も最初に聞いた時は表情筋を動かさないようにするのがたいへんだった。
『ああ、そういえば……花嫁様は大学とやらを出ているのだったか……』
やっと香子が皇帝に話した内容を思い出したらしい。
『七歳から六年、三年、三年、四年……』
王はまだ信じられないという様子で歳を数えている。
『……信じられん』
やはり信じられないようだった。
『王、さすがにそれは無礼ではないのか?』
趙が窘めると王ははっとしたような表情をした。
『それもそうだな。花嫁様の具合が悪そうだというのは中書令にのみ伝えておくが、どこから話が漏れるかわからん。お見舞いの品と称して贈り物が増えることも覚悟しておいてくれ』
王の科白に趙は嘆息した。すでにわずか一日で目録がたまっているのである。
不要とされたものの販売も一朝一夕でできるものではないし、そこで得た利益を分配するというのも一苦労だ。だが軌道に乗ってしまえばなんとかなるだろう。
できるだけ香子の希望はかなえてやりたかった。
朝方出された真っ赤に染まった床単を見た時、彼女たちは心臓が止まるかと思った。どれだけ香子が玄武によって無体を働かれたのかと心配で、香子が出てくるまで安心ができなかった。
だが夕食の席にやっと出てきた香子は気だるげではあるものの、元気そうではあった。その代わりなのか、ひどく妖しい色香を放っていた。
侍女たちの性癖はいたって普通である。それなのに香子を見ているだけでなんだかおかしな気分になりそうだった。着替えさせる時もできるだけその肌を見ないようにしていたぐらいである。
(浴室でのお世話はどうしたら……)
女同士ということもあって、香子は恥ずかしそうではあるものの彼女たちの手を拒むことはない。
侍女たちは自分たちがおかしいのかと四神や眷族を窺った。
見たかんじ四神は相変わらず香子を狙っているが、眷族は平然としている。玄武に抱かれたことで色香を放っているのだとしたら、影響を受けるのは侍女たちに留まらないだろう。
(趙様や王様が見たら……)
ただ侍女たちのように頬を染めるだけで済むならいい。だがそれだけで済むはずはないと侍女たちは危機感を募らせる。
(花嫁様がお食事を終えられたら、眷族の方に相談しよう)
侍女頭はそう決意した。
趙文英もまた困惑していた。
四神と香子がやっと夕食の席に出てきたというので眷族に報告事項など伝えようとしたのだが、どうしても侍女たちが通してくれないのである。
『許可がおりましたら呼びに参りますからどうかこちらでお待ちください!』
急ぐことではないのだがなにぶん王英明も待たせている。だがここで強行するのも憚られたので趙は苦笑しながら四神宮から出ることにした。
『何かあったのか?』
王に聞かれ趙は首を振る。朝も王は来ていたが、趙は余計なことはなにも言わなかった。ただ、どうも香子の体調がよくないらしいということだけ伝えておいただけである。
『今日は随分と気分が優れないのだろう。雨も降っていることだしな』
さもありなんと言うように王も頷く。めったに降らない雨のおかげで官吏たちもなかなか仕事が進まないらしい。
『そろそろ疲れが出てきた頃なのだろうな。まだ成人したかしないかじゃないか?』
王の科白に趙はそういえば香子の歳を伝えていないことに思い至った。
漢民族は背の高い者が多い。背の低い者は他の民族との混血であることがほとんどである。皇族はともかく官吏や女官、侍女は漢民族が占めている。
実際香子よりも侍女たちの方が若いのだが、彼女たちの方が背も高いしスタイルもいい。そう考えると、王が香子のことを成人したばかりなのではないかと思い込んでもおかしくはないかもしれなかった。
そして皇帝や官吏たちからしても香子が花嫁であることが重要なのであり、歳やその背景など詳しく知ろうとはしていなかった。
『……白香様は二十二歳だそうだ』
『二十二!?』
王は信じられないという顔をした。それはそれで失礼だとは思うが、趙も最初に聞いた時は表情筋を動かさないようにするのがたいへんだった。
『ああ、そういえば……花嫁様は大学とやらを出ているのだったか……』
やっと香子が皇帝に話した内容を思い出したらしい。
『七歳から六年、三年、三年、四年……』
王はまだ信じられないという様子で歳を数えている。
『……信じられん』
やはり信じられないようだった。
『王、さすがにそれは無礼ではないのか?』
趙が窘めると王ははっとしたような表情をした。
『それもそうだな。花嫁様の具合が悪そうだというのは中書令にのみ伝えておくが、どこから話が漏れるかわからん。お見舞いの品と称して贈り物が増えることも覚悟しておいてくれ』
王の科白に趙は嘆息した。すでにわずか一日で目録がたまっているのである。
不要とされたものの販売も一朝一夕でできるものではないし、そこで得た利益を分配するというのも一苦労だ。だが軌道に乗ってしまえばなんとかなるだろう。
できるだけ香子の希望はかなえてやりたかった。
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