異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
124 / 653
第1部 四神と結婚しろと言われました

124.してはいけないこともある

しおりを挟む
 結局その日香子は朱雀のベッドから出してもらえず、夕方近くに眷族が朱雀を呼びにきたことでようやく自分の部屋に戻る許可が下りた。

『後ほど迎えに行く。おとなしくしているように』

 すでに体の痛み、というか不自由さはなくなっていたがまだまだ気だるい。

(神様なんだからこれぐらい治していけーー!)

 と心の中で悪態をつきながら黒月に伴われ一旦香子は部屋に戻った。そこで侍女たちに漢服を着替えさせられる。後ほど朱雀が迎えにくるということで髪型もきれいに整えられ、簪をいくつも差された。

(これ頭重いんだけどなー……)

 と少し首を傾げると、侍女たちが香子の髪を見ながら不思議そうな顔をしていた。

『? どうかしたの?』

 どこかおかしいところでもあっただろうかと思って聞くと、侍女たちは一様に首を振った。

『いえ……その……失礼ですが昨夜と比べて花嫁様の髪の色艶が随分と鮮やかになっているように見うけられまして……』
『鮮やか?』
『その……わたし共の気のせいかもしれないのですが、元の髪色の部分が心持ち赤くなっているような……』
『手鏡あります?』

 侍女から手鏡を受け取って香子は髪の内側の黒が出ている部分をそっと確認した。確かに言われてみれば赤味がさしているように見える。

『…………あ』

 そういえば昨夜朱雀に抱かれたのだった。昨夜の自分の痴態を思い出して赤くなる。

(じゃなくて!)

 完全な赤ではないが朱雀の精と熱を受けたことで色が定着しはじめているのかもしれない。

『……もしかしたら、気のせいじゃないかもです……』

 説明をする気にはなれないが、小さな声で香子は告げた。侍女たちは顔を見合わせ、そして扉の側で控えている黒月を見やった。いきなり複数の視線にさらされ、黒月はほんの少しだけ困ったような顔をした。そして答える気はないとばかりに軽く首を振る。侍女たちはがっかりしたように肩を落とした。
 香子もきっと自分が侍女の立場なら知りたいと思うに違いなかったが、理由が理由だけに気軽に話せることでもない。心の中で手を合わせる。お茶を入れてもらい、飲みながら朱雀の迎えを待った。
 ゆっくりと二杯目の茶を飲み終えた頃、ようやく玄武が迎えに来た。
 迎えに来ると言っていたのは朱雀だったので玄武が来てくれたのは意外だったが、やはり一番の年長者であるから朱雀も譲ったのだろう。香子としては自分の足で向かってもいいぐらいなので誰が迎えにきてくれてもかまわなかった。

香子シャンズ、待たせてすまない』

 自分に向けられる甘いバリトンにやっぱり素敵な声だなと香子は思う。自然に抱き上げられて謁見の間まで連れていかれた。
 謁見の間では趙文英と王英明が平伏して待っていた。
 姿を見るのは久しぶりな気がした。

『立ちなさい』

 朱雀の科白に二人は合わせたようにスッと立ち上がり拱手した。

『話しなさい』

 促され、王が固い表情であらましを説明しはじめた。
 まず、首謀者は皇帝の末の妹である昭正公主。理由まではまだ皇帝自らが尋ねているのではっきりしたことは言えないとのこと。
 四神宮の洗濯物の中から侍女の制服を何着か持ち出させ、太極宮の侍女に着せてそう見えるように装わせた。屋台街で屋台を経営していた料理人を攫ってきて点心類を作らせ、それを侍女たちに持たせてわざわざ四神宮に運ばせたという。
 香子は頭が痛くなってきた。
 本人はいたずらのつもりかもしれないが、それにしても性質が悪い。仮にも皇族とあろう者が四神の花嫁を怒らせてどうなるかと考えることもできないのだろうか。
 玄武や朱雀の己への溺愛ぶりに、大体自分の立場というものが香子もなんとなくわかってきていた。
 白虎や青龍も涼しげな顔をしているが、ひとたび香子に悪意を向ける者がいたら容赦はしないだろう。
 香子は嘆息した。

『調べてくれてありがとうございました。では、引き続き理由がわかりましたら教えてください』
『かしこまりました』

 趙と王が応える。

『料理人を連れてまいれ』

 朱雀の科白に王が踵を返した。

(料理人?)

 香子は首を傾げる。もしかして昼の点心類を作った者だろうか。そう思ったら少しわくわくしてきた。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...