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第1部 四神と結婚しろと言われました
124.してはいけないこともある
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結局その日香子は朱雀の床から出してもらえず、夕方近くに眷族が朱雀を呼びにきたことでようやく自分の部屋に戻る許可が下りた。
『後ほど迎えに行く。おとなしくしているように』
すでに体の痛み、というか不自由さはなくなっていたがまだまだ気だるい。
(神様なんだからこれぐらい治していけーー!)
と心の中で悪態をつきながら黒月に伴われ一旦香子は部屋に戻った。そこで侍女たちに漢服を着替えさせられる。後ほど朱雀が迎えにくるということで髪型もきれいに整えられ、簪をいくつも差された。
(これ頭重いんだけどなー……)
と少し首を傾げると、侍女たちが香子の髪を見ながら不思議そうな顔をしていた。
『? どうかしたの?』
どこかおかしいところでもあっただろうかと思って聞くと、侍女たちは一様に首を振った。
『いえ……その……失礼ですが昨夜と比べて花嫁様の髪の色艶が随分と鮮やかになっているように見うけられまして……』
『鮮やか?』
『その……妾共の気のせいかもしれないのですが、元の髪色の部分が心持ち赤くなっているような……』
『手鏡あります?』
侍女から手鏡を受け取って香子は髪の内側の黒が出ている部分をそっと確認した。確かに言われてみれば赤味がさしているように見える。
『…………あ』
そういえば昨夜朱雀に抱かれたのだった。昨夜の自分の痴態を思い出して赤くなる。
(じゃなくて!)
完全な赤ではないが朱雀の精と熱を受けたことで色が定着しはじめているのかもしれない。
『……もしかしたら、気のせいじゃないかもです……』
説明をする気にはなれないが、小さな声で香子は告げた。侍女たちは顔を見合わせ、そして扉の側で控えている黒月を見やった。いきなり複数の視線にさらされ、黒月はほんの少しだけ困ったような顔をした。そして答える気はないとばかりに軽く首を振る。侍女たちはがっかりしたように肩を落とした。
香子もきっと自分が侍女の立場なら知りたいと思うに違いなかったが、理由が理由だけに気軽に話せることでもない。心の中で手を合わせる。お茶を入れてもらい、飲みながら朱雀の迎えを待った。
ゆっくりと二杯目の茶を飲み終えた頃、ようやく玄武が迎えに来た。
迎えに来ると言っていたのは朱雀だったので玄武が来てくれたのは意外だったが、やはり一番の年長者であるから朱雀も譲ったのだろう。香子としては自分の足で向かってもいいぐらいなので誰が迎えにきてくれてもかまわなかった。
『香子、待たせてすまない』
自分に向けられる甘いバリトンにやっぱり素敵な声だなと香子は思う。自然に抱き上げられて謁見の間まで連れていかれた。
謁見の間では趙文英と王英明が平伏して待っていた。
姿を見るのは久しぶりな気がした。
『立ちなさい』
朱雀の科白に二人は合わせたようにスッと立ち上がり拱手した。
『話しなさい』
促され、王が固い表情であらましを説明しはじめた。
まず、首謀者は皇帝の末の妹である昭正公主。理由まではまだ皇帝自らが尋ねているのではっきりしたことは言えないとのこと。
四神宮の洗濯物の中から侍女の制服を何着か持ち出させ、太極宮の侍女に着せてそう見えるように装わせた。屋台街で屋台を経営していた料理人を攫ってきて点心類を作らせ、それを侍女たちに持たせてわざわざ四神宮に運ばせたという。
香子は頭が痛くなってきた。
本人はいたずらのつもりかもしれないが、それにしても性質が悪い。仮にも皇族とあろう者が四神の花嫁を怒らせてどうなるかと考えることもできないのだろうか。
玄武や朱雀の己への溺愛ぶりに、大体自分の立場というものが香子もなんとなくわかってきていた。
白虎や青龍も涼しげな顔をしているが、ひとたび香子に悪意を向ける者がいたら容赦はしないだろう。
香子は嘆息した。
『調べてくれてありがとうございました。では、引き続き理由がわかりましたら教えてください』
『かしこまりました』
趙と王が応える。
『料理人を連れてまいれ』
朱雀の科白に王が踵を返した。
(料理人?)
香子は首を傾げる。もしかして昼の点心類を作った者だろうか。そう思ったら少しわくわくしてきた。
『後ほど迎えに行く。おとなしくしているように』
すでに体の痛み、というか不自由さはなくなっていたがまだまだ気だるい。
(神様なんだからこれぐらい治していけーー!)
と心の中で悪態をつきながら黒月に伴われ一旦香子は部屋に戻った。そこで侍女たちに漢服を着替えさせられる。後ほど朱雀が迎えにくるということで髪型もきれいに整えられ、簪をいくつも差された。
(これ頭重いんだけどなー……)
と少し首を傾げると、侍女たちが香子の髪を見ながら不思議そうな顔をしていた。
『? どうかしたの?』
どこかおかしいところでもあっただろうかと思って聞くと、侍女たちは一様に首を振った。
『いえ……その……失礼ですが昨夜と比べて花嫁様の髪の色艶が随分と鮮やかになっているように見うけられまして……』
『鮮やか?』
『その……妾共の気のせいかもしれないのですが、元の髪色の部分が心持ち赤くなっているような……』
『手鏡あります?』
侍女から手鏡を受け取って香子は髪の内側の黒が出ている部分をそっと確認した。確かに言われてみれば赤味がさしているように見える。
『…………あ』
そういえば昨夜朱雀に抱かれたのだった。昨夜の自分の痴態を思い出して赤くなる。
(じゃなくて!)
完全な赤ではないが朱雀の精と熱を受けたことで色が定着しはじめているのかもしれない。
『……もしかしたら、気のせいじゃないかもです……』
説明をする気にはなれないが、小さな声で香子は告げた。侍女たちは顔を見合わせ、そして扉の側で控えている黒月を見やった。いきなり複数の視線にさらされ、黒月はほんの少しだけ困ったような顔をした。そして答える気はないとばかりに軽く首を振る。侍女たちはがっかりしたように肩を落とした。
香子もきっと自分が侍女の立場なら知りたいと思うに違いなかったが、理由が理由だけに気軽に話せることでもない。心の中で手を合わせる。お茶を入れてもらい、飲みながら朱雀の迎えを待った。
ゆっくりと二杯目の茶を飲み終えた頃、ようやく玄武が迎えに来た。
迎えに来ると言っていたのは朱雀だったので玄武が来てくれたのは意外だったが、やはり一番の年長者であるから朱雀も譲ったのだろう。香子としては自分の足で向かってもいいぐらいなので誰が迎えにきてくれてもかまわなかった。
『香子、待たせてすまない』
自分に向けられる甘いバリトンにやっぱり素敵な声だなと香子は思う。自然に抱き上げられて謁見の間まで連れていかれた。
謁見の間では趙文英と王英明が平伏して待っていた。
姿を見るのは久しぶりな気がした。
『立ちなさい』
朱雀の科白に二人は合わせたようにスッと立ち上がり拱手した。
『話しなさい』
促され、王が固い表情であらましを説明しはじめた。
まず、首謀者は皇帝の末の妹である昭正公主。理由まではまだ皇帝自らが尋ねているのではっきりしたことは言えないとのこと。
四神宮の洗濯物の中から侍女の制服を何着か持ち出させ、太極宮の侍女に着せてそう見えるように装わせた。屋台街で屋台を経営していた料理人を攫ってきて点心類を作らせ、それを侍女たちに持たせてわざわざ四神宮に運ばせたという。
香子は頭が痛くなってきた。
本人はいたずらのつもりかもしれないが、それにしても性質が悪い。仮にも皇族とあろう者が四神の花嫁を怒らせてどうなるかと考えることもできないのだろうか。
玄武や朱雀の己への溺愛ぶりに、大体自分の立場というものが香子もなんとなくわかってきていた。
白虎や青龍も涼しげな顔をしているが、ひとたび香子に悪意を向ける者がいたら容赦はしないだろう。
香子は嘆息した。
『調べてくれてありがとうございました。では、引き続き理由がわかりましたら教えてください』
『かしこまりました』
趙と王が応える。
『料理人を連れてまいれ』
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