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第4部 四神を愛しなさいと言われました
63.予定がなかなか立てられません
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正月の期間である。
すぐに青龍の領地へ向かえるかと言われてもそう簡単にはいかない。青龍から言わせると眷属は正月でもあまりすることは変わらないはずだと言う。
青藍はため息をついた。
やはりそんなわけはないと香子も苦笑した。
やや遅めの昼食を終えた後、また青龍の室へ運ばれた。先に青藍と少し話がしたいと言えば、しぶしぶだが居間の長椅子に青龍は腰掛けた。青藍がお茶を淹れる。青龍は香子を片時も放すつもりはないようである。
『青藍、確認だけど』
『はい』
『正月の期間中は、みな家族で過ごしたりするのでしょう? 眷属たちも』
『はい。そうする者が多いはずです』
青藍はさらりと答えた。香子はふと、大事なことを思い出した。
『ならやっぱり正月の期間に向かうのはよくないわよね。正月十五を過ぎてしばらくしてからにしましょう。確か……』
青龍の香子を抱きしめる腕の力が若干強くなった。
『エリーザがそろそろ十五歳になるのではなかったかしら?』
青藍は一瞬眉を寄せた。
『紅夏の番がどうかなさいましたか?』
『せっかくだからここで、エリーザたちの結婚式をしたいの。でも、少し落ち着いてからがいいのかしら? まだセレスト王国からの船もこないし……』
『……できましたらそれは、青龍様の領地に向かわれた後にしていただけると幸いです。その後でしたら我も口説きやすくなりますので』
『え』
香子はまじまじと青藍を見た。今青藍がとんでもないことをさらりと言った気がする。青藍の表情は変わらず涼やかだ。
青藍が口説くと言ったら、相手は延夕玲だろう。皇太后に挨拶は終えているはずである。あとは夕玲の両親に挨拶をし、よき日取りを決めてというところだろうか。紅夏が紅児を娶るのは比較的簡単だが、夕玲はこの国の中でもいいところのお嬢様なので結婚もそう簡単にはいかない。
『……別に邪魔をするつもりはないんだけど、夕玲は皇太后の親戚だから結婚式を挙げるにもいろいろ手順が必要だし、時間もかかると思うわ』
『はい』
『面倒だとは思わないの?』
これは香子の純粋な興味である。青藍にはマリッジブルー的なものはないのかと野次馬的な考えが浮かんだのだ。香子の悪いクセである。
『……それが必要だからそうするのでしょう。異論はありません』
『ふうん』
『その手順さえ踏めば、夕玲を手に入れられるのですから』
『…………』
ほとんど動かない表情でそういうことを言うのだからやってられないと香子は思った。
お茶を啜る。
『結婚しても多少の親戚付き合い的なものはあるんじゃない? そういうのは四神の眷属だから免除されるのかしら』
『それは存じませんが、四神の眷属の番というものがどういう存在かは、しっかりと説明してくるつもりでおります』
『……その方がいいわね』
夕玲の両親がどんなにいい人であろうとも、親戚の全てがいい人だとは限らない。香子が予想するに、四神と渡りをつけろと言い出す者が必ず出てくるはずだ。
花嫁の長期の不在により、四神の存在は希薄になっていた。さすがに唐の皇室は四神をないがしろにすることはないが(昭正公主や皇后については例外とする)、それ以外の者たちにとって四神がどういう存在というのはイメージしにくいはずである。だからどんな要求をしてくるのか読めない部分もある。
(四神に渡りをつけたくて四神宮の周りをうろついている者たちとかね……)
神様は誰かの願いを叶えるとか、そういう存在ではないはずなのだけどと香子は嘆息した。
『香子、如何した?』
『……なんでもないです。青藍、ありがとう』
青藍は拱手すると居間の隅に下がった。
『青龍様、神様って、人の願いを叶えたりするのでしょうか?』
青龍の黒い瞳が何事かと揺れた。
『すまぬが……』
『あ、ええと……。青龍様のずっと前の青龍様がこの国と契約をしたのですよね? 領地を得て、花嫁を確実に得る為にこの国を守護するみたいなことを……』
『ああ、おおむねそのようなものだな』
厳密には違うのだが、そのようなことをしたという。
『だとすると、四神に頼めば己の願いを叶えられるかもしれないと考える人もいるかもしれませんね……』
『それが如何か?』
香子も質問がうまくない。うーん、と頭を悩ませた。
『王城の中だけかもしれませんけど、贈物といい、面会希望といい、四神に己の願いを叶えてほしい人ばかりだなぁと思いまして』
元々王城の中というのはそういった欲望が満ちている。その嫌なかんじを香子はなんとなく感じ取れるようになっていた。
(鈍感な方がきっと楽だったよね)
青龍は口元をクッと上げた。
『そなたが気に病むことではない。我らが叶えるのはそなたの望みのみ。もし表に出たいならばいつでも連れ出してやろう』
空を飛んでどこまでも香子が行きたいところへ向かってくれるということだろうか。あれはあれでとても楽しいのだが、香子は正直言うと飛ぶよりも街で買物や食べ歩きのようなことがしたかった。とはいえ北京では無理だろうということもわかっている。
(久しぶりに都一処の焼売が食べたい……)
紅夏と紅児のデートでそこへ連れて行ってあげたら? と以前伝えたことを香子は思い出した。
『そろそろよいか?』
『あ、はい……』
青龍はよく耐えてくれたと香子は思う。青龍の首に両腕を絡める。
そうして香子は寝室に運ばれた。
ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
すぐに青龍の領地へ向かえるかと言われてもそう簡単にはいかない。青龍から言わせると眷属は正月でもあまりすることは変わらないはずだと言う。
青藍はため息をついた。
やはりそんなわけはないと香子も苦笑した。
やや遅めの昼食を終えた後、また青龍の室へ運ばれた。先に青藍と少し話がしたいと言えば、しぶしぶだが居間の長椅子に青龍は腰掛けた。青藍がお茶を淹れる。青龍は香子を片時も放すつもりはないようである。
『青藍、確認だけど』
『はい』
『正月の期間中は、みな家族で過ごしたりするのでしょう? 眷属たちも』
『はい。そうする者が多いはずです』
青藍はさらりと答えた。香子はふと、大事なことを思い出した。
『ならやっぱり正月の期間に向かうのはよくないわよね。正月十五を過ぎてしばらくしてからにしましょう。確か……』
青龍の香子を抱きしめる腕の力が若干強くなった。
『エリーザがそろそろ十五歳になるのではなかったかしら?』
青藍は一瞬眉を寄せた。
『紅夏の番がどうかなさいましたか?』
『せっかくだからここで、エリーザたちの結婚式をしたいの。でも、少し落ち着いてからがいいのかしら? まだセレスト王国からの船もこないし……』
『……できましたらそれは、青龍様の領地に向かわれた後にしていただけると幸いです。その後でしたら我も口説きやすくなりますので』
『え』
香子はまじまじと青藍を見た。今青藍がとんでもないことをさらりと言った気がする。青藍の表情は変わらず涼やかだ。
青藍が口説くと言ったら、相手は延夕玲だろう。皇太后に挨拶は終えているはずである。あとは夕玲の両親に挨拶をし、よき日取りを決めてというところだろうか。紅夏が紅児を娶るのは比較的簡単だが、夕玲はこの国の中でもいいところのお嬢様なので結婚もそう簡単にはいかない。
『……別に邪魔をするつもりはないんだけど、夕玲は皇太后の親戚だから結婚式を挙げるにもいろいろ手順が必要だし、時間もかかると思うわ』
『はい』
『面倒だとは思わないの?』
これは香子の純粋な興味である。青藍にはマリッジブルー的なものはないのかと野次馬的な考えが浮かんだのだ。香子の悪いクセである。
『……それが必要だからそうするのでしょう。異論はありません』
『ふうん』
『その手順さえ踏めば、夕玲を手に入れられるのですから』
『…………』
ほとんど動かない表情でそういうことを言うのだからやってられないと香子は思った。
お茶を啜る。
『結婚しても多少の親戚付き合い的なものはあるんじゃない? そういうのは四神の眷属だから免除されるのかしら』
『それは存じませんが、四神の眷属の番というものがどういう存在かは、しっかりと説明してくるつもりでおります』
『……その方がいいわね』
夕玲の両親がどんなにいい人であろうとも、親戚の全てがいい人だとは限らない。香子が予想するに、四神と渡りをつけろと言い出す者が必ず出てくるはずだ。
花嫁の長期の不在により、四神の存在は希薄になっていた。さすがに唐の皇室は四神をないがしろにすることはないが(昭正公主や皇后については例外とする)、それ以外の者たちにとって四神がどういう存在というのはイメージしにくいはずである。だからどんな要求をしてくるのか読めない部分もある。
(四神に渡りをつけたくて四神宮の周りをうろついている者たちとかね……)
神様は誰かの願いを叶えるとか、そういう存在ではないはずなのだけどと香子は嘆息した。
『香子、如何した?』
『……なんでもないです。青藍、ありがとう』
青藍は拱手すると居間の隅に下がった。
『青龍様、神様って、人の願いを叶えたりするのでしょうか?』
青龍の黒い瞳が何事かと揺れた。
『すまぬが……』
『あ、ええと……。青龍様のずっと前の青龍様がこの国と契約をしたのですよね? 領地を得て、花嫁を確実に得る為にこの国を守護するみたいなことを……』
『ああ、おおむねそのようなものだな』
厳密には違うのだが、そのようなことをしたという。
『だとすると、四神に頼めば己の願いを叶えられるかもしれないと考える人もいるかもしれませんね……』
『それが如何か?』
香子も質問がうまくない。うーん、と頭を悩ませた。
『王城の中だけかもしれませんけど、贈物といい、面会希望といい、四神に己の願いを叶えてほしい人ばかりだなぁと思いまして』
元々王城の中というのはそういった欲望が満ちている。その嫌なかんじを香子はなんとなく感じ取れるようになっていた。
(鈍感な方がきっと楽だったよね)
青龍は口元をクッと上げた。
『そなたが気に病むことではない。我らが叶えるのはそなたの望みのみ。もし表に出たいならばいつでも連れ出してやろう』
空を飛んでどこまでも香子が行きたいところへ向かってくれるということだろうか。あれはあれでとても楽しいのだが、香子は正直言うと飛ぶよりも街で買物や食べ歩きのようなことがしたかった。とはいえ北京では無理だろうということもわかっている。
(久しぶりに都一処の焼売が食べたい……)
紅夏と紅児のデートでそこへ連れて行ってあげたら? と以前伝えたことを香子は思い出した。
『そろそろよいか?』
『あ、はい……』
青龍はよく耐えてくれたと香子は思う。青龍の首に両腕を絡める。
そうして香子は寝室に運ばれた。
ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
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