142 / 653
第1部 四神と結婚しろと言われました
142.狼さんを押さえる方法が知りたいです
しおりを挟む
香子はそのまま自分の部屋に戻るものだと思っていたが、残念ながらそうはならなかった。朱雀が自分の室へ通じる廊下を通りすぎたから安心したのにそのまま香子の部屋まで通り過ぎるとは思わなかった。
そしてその足が玄武の室に向かっていると気付いた時、なんだか嫌な予感がして思わず朱雀を仰ぎ見てしまった。それに気がついた朱雀が楽しそうに笑む。香子の背を冷汗が伝った。
そういえば昨夜言質を取られたような気がしないでもない。
『す、朱雀様……』
どうにか思いとどまらせようと声をかけた時には、朱雀はすでに玄武の室の扉を叩いていた。
『入れ』
中からの応えに、後ろに付き従っていた黒月が扉を開く。そして朱雀が中に入ると外から扉を閉めた。
長椅子に寝そべるような格好をしていた玄武が顔を上げた。襟元は少し寛げられており、鎖骨が覗いている。その男の色気が感じられる格好に香子は思わず頬を染めてしまった。
朱雀が玄武に笑んだ。
『着飾るとまた格別でございましょう』
『そうだな。香子なればどのような格好でも愛らしいが、今日はまた一段と綺麗だ』
優しい笑みを浮かべて真正面から言われた科白に香子は真っ赤になった。四神は基本誠実で正直だからそこに社交辞令など存在しない。それがわかっているだけに香子はあまりの恥ずかしさにどうしたらいいのかわからなかった。
褒められるのは嬉しいことだが、ここまで手放しで褒められたことはめったになかったので玄武の顔をまともに見られない。
目をそらし、
『……ええと……ありがとうございます……』
消え入りそうな声でどうにか言葉を紡ぐと玄武が居住まいを正した。
『香子、ここへ』
朱雀が玄武の膝に香子を下ろす。顔がどんどん熱くなってきて、香子は思わず両手を頬に当てて俯いた。
玄武の隣には当然のように朱雀が腰を下ろした。そうして香子の顔を上げさせる。
『恥らうそなたも愛らしい』
香子は顔から火が出そうだった。
(だからなんで玄武様も朱雀様もそんな歯が浮くような科白を普通に言えるわけっっっ!?)
穴があったら入りたい。別の意味で恥ずかしくてたまらない。
『あ、あの……お茶を入れますね……』
眷族が室の外に控えているので、自分でお茶を入れようと立ち上がろうとしたがそれは玄武の腕に阻まれた。
『かまわぬ。それよりもそなたを愛でたい』
(だーかーらーーーーーーーーーー!!)
脳が沸騰しそうだと香子は思った。
『わ、私が飲みたいのです! 淹れさせてください!』
せめてお茶でも飲んで少しでも落ち着きたいというのが香子の本音である。
『ならば我が入れよう』
そう言って朱雀が立ち上がった時、香子は自分の耳を疑った。
(朱雀様がお茶を入れる!?)
四神は自分のことが大体できるようだがお茶を自分で入れる、ということは想像がつかなかった。
朱雀は茶器の置かれたところへ行くと、茶筒を開け、考えるように首を傾げた。そして香子を見る。
『どれぐらい入れればいいのだ?』
『……やっぱり私が淹れます……』
勝手に自分でしないところはポイントが高いと思ったが、茶葉の量は自分の感覚で入れているので人に教えられるようなものでもない。しぶしぶという体で玄武の膝から下ろされ、香子はやっとお茶を淹れた。
長椅子に戻れば当然のように再び玄武の膝に乗せられる。もはや諦めの境地である。
自分で淹れたお茶を一口飲んで、香子はほうっと息を吐いた。
玄武の手は当り前のように香子の身体に触れており、昼ということを無視してことに及ばれそうな雰囲気である。
だが香子としては、それだけは回避したかった。
(いいかげん太陽の光を浴びないと溶けるかも!)
しかし問題はどうやってその気になっている二神を説得するかである。
香子は正直頭が痛くなった。
そしてその足が玄武の室に向かっていると気付いた時、なんだか嫌な予感がして思わず朱雀を仰ぎ見てしまった。それに気がついた朱雀が楽しそうに笑む。香子の背を冷汗が伝った。
そういえば昨夜言質を取られたような気がしないでもない。
『す、朱雀様……』
どうにか思いとどまらせようと声をかけた時には、朱雀はすでに玄武の室の扉を叩いていた。
『入れ』
中からの応えに、後ろに付き従っていた黒月が扉を開く。そして朱雀が中に入ると外から扉を閉めた。
長椅子に寝そべるような格好をしていた玄武が顔を上げた。襟元は少し寛げられており、鎖骨が覗いている。その男の色気が感じられる格好に香子は思わず頬を染めてしまった。
朱雀が玄武に笑んだ。
『着飾るとまた格別でございましょう』
『そうだな。香子なればどのような格好でも愛らしいが、今日はまた一段と綺麗だ』
優しい笑みを浮かべて真正面から言われた科白に香子は真っ赤になった。四神は基本誠実で正直だからそこに社交辞令など存在しない。それがわかっているだけに香子はあまりの恥ずかしさにどうしたらいいのかわからなかった。
褒められるのは嬉しいことだが、ここまで手放しで褒められたことはめったになかったので玄武の顔をまともに見られない。
目をそらし、
『……ええと……ありがとうございます……』
消え入りそうな声でどうにか言葉を紡ぐと玄武が居住まいを正した。
『香子、ここへ』
朱雀が玄武の膝に香子を下ろす。顔がどんどん熱くなってきて、香子は思わず両手を頬に当てて俯いた。
玄武の隣には当然のように朱雀が腰を下ろした。そうして香子の顔を上げさせる。
『恥らうそなたも愛らしい』
香子は顔から火が出そうだった。
(だからなんで玄武様も朱雀様もそんな歯が浮くような科白を普通に言えるわけっっっ!?)
穴があったら入りたい。別の意味で恥ずかしくてたまらない。
『あ、あの……お茶を入れますね……』
眷族が室の外に控えているので、自分でお茶を入れようと立ち上がろうとしたがそれは玄武の腕に阻まれた。
『かまわぬ。それよりもそなたを愛でたい』
(だーかーらーーーーーーーーーー!!)
脳が沸騰しそうだと香子は思った。
『わ、私が飲みたいのです! 淹れさせてください!』
せめてお茶でも飲んで少しでも落ち着きたいというのが香子の本音である。
『ならば我が入れよう』
そう言って朱雀が立ち上がった時、香子は自分の耳を疑った。
(朱雀様がお茶を入れる!?)
四神は自分のことが大体できるようだがお茶を自分で入れる、ということは想像がつかなかった。
朱雀は茶器の置かれたところへ行くと、茶筒を開け、考えるように首を傾げた。そして香子を見る。
『どれぐらい入れればいいのだ?』
『……やっぱり私が淹れます……』
勝手に自分でしないところはポイントが高いと思ったが、茶葉の量は自分の感覚で入れているので人に教えられるようなものでもない。しぶしぶという体で玄武の膝から下ろされ、香子はやっとお茶を淹れた。
長椅子に戻れば当然のように再び玄武の膝に乗せられる。もはや諦めの境地である。
自分で淹れたお茶を一口飲んで、香子はほうっと息を吐いた。
玄武の手は当り前のように香子の身体に触れており、昼ということを無視してことに及ばれそうな雰囲気である。
だが香子としては、それだけは回避したかった。
(いいかげん太陽の光を浴びないと溶けるかも!)
しかし問題はどうやってその気になっている二神を説得するかである。
香子は正直頭が痛くなった。
33
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる