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第4部 四神を愛しなさいと言われました
67.おいしいものを食べるのは至福なのです(現実逃避)
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丸一日で済むのだろうかと、香子は冷汗が止まらなかった。
(も~力の譲渡とかってなんなのよ! 本当にそれが必要かどうかなんて私にはわからないし!)
しかしそれが口実だとしたら、四神は香子をただひたすらに抱きたいということだけが残るわけで。どちらにせよ香子が身もだえるのは変わらないらしかった。
(やっぱり、嫁いだらベッドから出られる気がしない……)
そう考えると、やりたいことはここにいる間にやるしかないと香子は思うのだ。
今夜から一晩青龍たちに抱かれて、翌日も目覚めるのは夕方だろう。夕飯を食べて玄武と朱雀に抱かれて、とスケジュールを香子は考えてみた。
『ん? 三日後?』
首を傾げる。一日余る気がする。
『ああそうだ。今宵は本気で抱くからな』
青龍にそう言われて、香子はギギギと音がするようにぎこちなく青龍の方を見た。
『本気?』
『うむ。我との交わりは最低でも丸一日だと伝えたはずだ』
そんな当たり前のように言わないでほしいと香子は思う。ということは、今までのことはなんだったのか。これまでだって一日は潰れていたではないか。
『……確認をさせてください。では今までは、なんだったのですか?』
『半日だな』
『えええええ!?』
聞きたくはなかった。そんなこと、香子は知りたくもなかった。確かに以前そんなようなことを言っていた気がする。だが香子はしっかり忘れていた。
『……そんなことをされたら私、死んでしまいます』
二十四時間も抱かれ続けたら空腹と睡眠不足で死ぬ、と香子は青龍を睨んだ。
『死なぬ』
そういうことじゃなくて、と香子は思う。青龍の言う丸一日はとても無理だ。身体が持たない。
『じゃあこう言いましょう。そんなきついの嫌です』
『出会った頃であれば不可能であったやもしれぬが、そなたの身体は耐えられるよう変わっている。問題はない』
『……でも、ごはん』
どこまでも香子は香子だった。
『途中で飲み物と食べ物を用意しよう。今宵から明日の夜までだ。それは譲れない』
青龍はきっぱりと答えた。
『そんなー……』
香子は心底止めると言いたかった。実際に言葉が喉元まで出かかったが、それはあまりにも無責任だろうと飲み込んだのだ。
『香子、それが最善だ』
渋る香子の手を、青龍がやんわりと捕らえ、口づけを落とした。香子は途端に頬を染める。メンクイな己を香子は呪うことしかできなかった。
『香子、頼む。優しくする……』
縋られたら、逆らうことなんてできるはずがなかった。
……ええ、チョロインですよ。文句あっか。
散々抱き潰されて、香子はやさぐれていた。何が力の譲渡だと、もう全てを呪いたくなっていた。
確かにところどころ記憶はあり、水分も食べ物も口にしていたことは香子もわかっている。しかし夜から次の夜まで愛されて、これでやっと終わったの? と意識を失った後に気が付いた。
次に目覚めた時、四神宮の厨師たちが働いている時間なのかと。
『おなかすいたぁ……』
あまりの空腹に指先一つ動かすこともできず、香子は泣いていた。
青龍に優しく抱き起こされ、どうにか白湯を飲む。そんな少しの白湯で足りるはずもなく、香子はまた泣いた。
『香子、もうすぐ来る。今しばらく……』
『青龍様の馬鹿あああ……』
そんなひどい空腹を覚えたのは初めてだった。青龍のたおやかな指すらおいしそうに見える。しかし香子は全く身体が動かせないのだ。こんなひどい話はなかった。
『これを』
干果(ドライフルーツ)を半開きの口に押し込まれた。香子はその指ごと必死にしゃぶった。なんならもうその指ごと食べてしまう勢いだった。
青龍が苦笑する。
『さすがに我も空腹だ』
香子はキッと青龍を睨みつけながら、料理が来るまでの間干果をしゃぶっていた。
そうしてやっと料理が運ばれてきた。青龍の室の居間の長椅子に移動する。香子はもちろん青龍の膝の上だ。今回は玄武と朱雀も共にいる。
青藍が先に厨房へ用意させていたらしく、前菜もそうだが肉包(肉まん)や春巻など腹に溜まりそうな物からどんどん用意される。味わうヒマもないぐらい次から次へと食べていく三神と香子の様子を見て、侍女は一瞬目を見張った。だが侍女たちもプロである。気づかれないように表情を戻し、空いた皿を片付け、料理を何度も運んだ。
『っはー……生き返った……』
酸辣湯(サンラータン)を飲み終えて、香子はようやくため息混じりに呟いた。酸辣湯は香子の好物である。黒酢と唐辛子で味付けしているスープはクセになる。具は卵、きくらげ、人参、豆腐など様々だ。最初は細切りの肉も入っていたが、香子ができれば肉は……というようなことを言ったら入らなくなった。改めて言うまでもないが、四神宮の料理は香子の為に作られているようだった。
『このスープ大好き。いくらでも飲めるわ……』
香子はやっと胃が落ち着いたことで、思わずそんなことを呟いてしまった。侍女がスッと席を外す。
そうしてから香子は気づいた。
『あ』
『我らも飲む故問題ないぞ』
朱雀にいたずらっ子のような笑みを浮かべられて、香子はやらかしたーと肩を落としたのだった。(スープのお代わりはしっかりたいらげた)
ーーーーー
エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
(も~力の譲渡とかってなんなのよ! 本当にそれが必要かどうかなんて私にはわからないし!)
しかしそれが口実だとしたら、四神は香子をただひたすらに抱きたいということだけが残るわけで。どちらにせよ香子が身もだえるのは変わらないらしかった。
(やっぱり、嫁いだらベッドから出られる気がしない……)
そう考えると、やりたいことはここにいる間にやるしかないと香子は思うのだ。
今夜から一晩青龍たちに抱かれて、翌日も目覚めるのは夕方だろう。夕飯を食べて玄武と朱雀に抱かれて、とスケジュールを香子は考えてみた。
『ん? 三日後?』
首を傾げる。一日余る気がする。
『ああそうだ。今宵は本気で抱くからな』
青龍にそう言われて、香子はギギギと音がするようにぎこちなく青龍の方を見た。
『本気?』
『うむ。我との交わりは最低でも丸一日だと伝えたはずだ』
そんな当たり前のように言わないでほしいと香子は思う。ということは、今までのことはなんだったのか。これまでだって一日は潰れていたではないか。
『……確認をさせてください。では今までは、なんだったのですか?』
『半日だな』
『えええええ!?』
聞きたくはなかった。そんなこと、香子は知りたくもなかった。確かに以前そんなようなことを言っていた気がする。だが香子はしっかり忘れていた。
『……そんなことをされたら私、死んでしまいます』
二十四時間も抱かれ続けたら空腹と睡眠不足で死ぬ、と香子は青龍を睨んだ。
『死なぬ』
そういうことじゃなくて、と香子は思う。青龍の言う丸一日はとても無理だ。身体が持たない。
『じゃあこう言いましょう。そんなきついの嫌です』
『出会った頃であれば不可能であったやもしれぬが、そなたの身体は耐えられるよう変わっている。問題はない』
『……でも、ごはん』
どこまでも香子は香子だった。
『途中で飲み物と食べ物を用意しよう。今宵から明日の夜までだ。それは譲れない』
青龍はきっぱりと答えた。
『そんなー……』
香子は心底止めると言いたかった。実際に言葉が喉元まで出かかったが、それはあまりにも無責任だろうと飲み込んだのだ。
『香子、それが最善だ』
渋る香子の手を、青龍がやんわりと捕らえ、口づけを落とした。香子は途端に頬を染める。メンクイな己を香子は呪うことしかできなかった。
『香子、頼む。優しくする……』
縋られたら、逆らうことなんてできるはずがなかった。
……ええ、チョロインですよ。文句あっか。
散々抱き潰されて、香子はやさぐれていた。何が力の譲渡だと、もう全てを呪いたくなっていた。
確かにところどころ記憶はあり、水分も食べ物も口にしていたことは香子もわかっている。しかし夜から次の夜まで愛されて、これでやっと終わったの? と意識を失った後に気が付いた。
次に目覚めた時、四神宮の厨師たちが働いている時間なのかと。
『おなかすいたぁ……』
あまりの空腹に指先一つ動かすこともできず、香子は泣いていた。
青龍に優しく抱き起こされ、どうにか白湯を飲む。そんな少しの白湯で足りるはずもなく、香子はまた泣いた。
『香子、もうすぐ来る。今しばらく……』
『青龍様の馬鹿あああ……』
そんなひどい空腹を覚えたのは初めてだった。青龍のたおやかな指すらおいしそうに見える。しかし香子は全く身体が動かせないのだ。こんなひどい話はなかった。
『これを』
干果(ドライフルーツ)を半開きの口に押し込まれた。香子はその指ごと必死にしゃぶった。なんならもうその指ごと食べてしまう勢いだった。
青龍が苦笑する。
『さすがに我も空腹だ』
香子はキッと青龍を睨みつけながら、料理が来るまでの間干果をしゃぶっていた。
そうしてやっと料理が運ばれてきた。青龍の室の居間の長椅子に移動する。香子はもちろん青龍の膝の上だ。今回は玄武と朱雀も共にいる。
青藍が先に厨房へ用意させていたらしく、前菜もそうだが肉包(肉まん)や春巻など腹に溜まりそうな物からどんどん用意される。味わうヒマもないぐらい次から次へと食べていく三神と香子の様子を見て、侍女は一瞬目を見張った。だが侍女たちもプロである。気づかれないように表情を戻し、空いた皿を片付け、料理を何度も運んだ。
『っはー……生き返った……』
酸辣湯(サンラータン)を飲み終えて、香子はようやくため息混じりに呟いた。酸辣湯は香子の好物である。黒酢と唐辛子で味付けしているスープはクセになる。具は卵、きくらげ、人参、豆腐など様々だ。最初は細切りの肉も入っていたが、香子ができれば肉は……というようなことを言ったら入らなくなった。改めて言うまでもないが、四神宮の料理は香子の為に作られているようだった。
『このスープ大好き。いくらでも飲めるわ……』
香子はやっと胃が落ち着いたことで、思わずそんなことを呟いてしまった。侍女がスッと席を外す。
そうしてから香子は気づいた。
『あ』
『我らも飲む故問題ないぞ』
朱雀にいたずらっ子のような笑みを浮かべられて、香子はやらかしたーと肩を落としたのだった。(スープのお代わりはしっかりたいらげた)
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エールとっても嬉しいです。ありがとうございまーす!
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