156 / 653
第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
2.いろいろ複雑なんです
しおりを挟む
その日はさすがに御花園に行くのは無理だった。
王英明から話を聞いたのがすでに巳の三刻(午前十時頃)を過ぎていたからである。
だが香子は楽観視していた。髪の色が定着したなら、もう朱雀に熱を与えられることはないと思っていたのだ。抱かれる時に熱を与えられなければ朝起きられないなんてことはないはず! と考えていたのだが……。
『朱雀様のバカーーーーーー!!!』
翌朝目を覚ました香子は顔を真っ赤にして朱雀を罵倒した。
『香子……』
『やだって言ったのに! もう髪の色は定着したって言ったじゃない!?』
起床時刻はとっくに辰の刻を過ぎて、もう巳の刻にさしかかっているようだった。玄武の室に射し込む光がそれを教えてくれる。
『香子、我はそなたと熱を共有したいのだ』
『う……』
真面目な表情で色気ダダ漏れの甘いテノールでそんなことを言わないでほしいと香子は思う。
(でも引きさがっちゃいけない!)
なし崩しであんな熱を与えられ続けるのは勘弁してほしかった。
『で、でも髪の色を定着させる為だって……』
だからあの狂おしさも耐えたのに。
朱雀はそれに少し切なそうな表情をした。香子ははっとする。朱雀にとって香子に熱を与えることは”特別”なことなのだと唐突に理解した。
(だけど、でも……)
あの熱のおかげで毎朝香子は起きられないのだから納得はできない。
御花園にどうしても行きたいというわけではない。ただ普通に起きてみんなとごはんを食べて、日が出ている間は普通に暮らしたいだけなのだ。もちろん週に二日ぐらいは自堕落に過ごしてもいいのかもしれないけれど。
『香子、朱雀はそなたがたまらなく愛しいのだ』
玄武が諭すように言う。
わかっている、わかっているけれども毎晩二人を受け入れている身にもなってほしい。もちろん香子だって嫌がっているわけではないからその点については何も言う気はないのだが。
(私だって朱雀様が好きだけど、でも……)
いくつもの”でも”が頭に浮かぶ。
ただ、香子は四神の花嫁で。
だから本当は四神の言うことを聞かなくてはいけない?
香子はそれに身震いした。
『香子?』
そんな香子の様子に異変を感じたのか、朱雀が声をかける。
「う……」
『香子、どうした?』
「……やだ……出てって……お願い……出てってー!!」
その悲痛な感情をいきなり浴びて二神は戸惑った。側に寄ろうとする二神を香子は押しのけようとする。
『1人になりたいの! お願いだから、今は出てって!』
こちらの言葉で改めて言われて二神は仕方なく立ち上がった。顔には出ていなかったが二神はひどくうろたえていた。
『なれば……落ち着いたなら呼んでおくれ。朝食は如何する』
玄武の科白に香子は首を振った。正直おなかはものすごくすいていたが(だからこういう思考になったのかもしれない)、一人では食べたくないし、かといって今は二神と一緒にいたくなかった。
床に横たわりそっぽを向くと、二神が寝室を出ていく気配がした。背中越しでも感じる躊躇するような動きに香子は罪悪感を覚えた。
二神は寝室から出、少しの間居間にいたようだがまた扉の開く音がした。どうやら室から出て行ったらしい。
香子はそこでやっと息をつく。
そして、「おなかすいたなぁ……」と呟いた。
体が動かなくて、おなかがすいていて、そばに誰もいなくて。
「どーしよ……」
自分が招いた結果なのだが、香子は途方に暮れた。
室の外に出た二神が香子と同じように途方に暮れているとも知らずに。
王英明から話を聞いたのがすでに巳の三刻(午前十時頃)を過ぎていたからである。
だが香子は楽観視していた。髪の色が定着したなら、もう朱雀に熱を与えられることはないと思っていたのだ。抱かれる時に熱を与えられなければ朝起きられないなんてことはないはず! と考えていたのだが……。
『朱雀様のバカーーーーーー!!!』
翌朝目を覚ました香子は顔を真っ赤にして朱雀を罵倒した。
『香子……』
『やだって言ったのに! もう髪の色は定着したって言ったじゃない!?』
起床時刻はとっくに辰の刻を過ぎて、もう巳の刻にさしかかっているようだった。玄武の室に射し込む光がそれを教えてくれる。
『香子、我はそなたと熱を共有したいのだ』
『う……』
真面目な表情で色気ダダ漏れの甘いテノールでそんなことを言わないでほしいと香子は思う。
(でも引きさがっちゃいけない!)
なし崩しであんな熱を与えられ続けるのは勘弁してほしかった。
『で、でも髪の色を定着させる為だって……』
だからあの狂おしさも耐えたのに。
朱雀はそれに少し切なそうな表情をした。香子ははっとする。朱雀にとって香子に熱を与えることは”特別”なことなのだと唐突に理解した。
(だけど、でも……)
あの熱のおかげで毎朝香子は起きられないのだから納得はできない。
御花園にどうしても行きたいというわけではない。ただ普通に起きてみんなとごはんを食べて、日が出ている間は普通に暮らしたいだけなのだ。もちろん週に二日ぐらいは自堕落に過ごしてもいいのかもしれないけれど。
『香子、朱雀はそなたがたまらなく愛しいのだ』
玄武が諭すように言う。
わかっている、わかっているけれども毎晩二人を受け入れている身にもなってほしい。もちろん香子だって嫌がっているわけではないからその点については何も言う気はないのだが。
(私だって朱雀様が好きだけど、でも……)
いくつもの”でも”が頭に浮かぶ。
ただ、香子は四神の花嫁で。
だから本当は四神の言うことを聞かなくてはいけない?
香子はそれに身震いした。
『香子?』
そんな香子の様子に異変を感じたのか、朱雀が声をかける。
「う……」
『香子、どうした?』
「……やだ……出てって……お願い……出てってー!!」
その悲痛な感情をいきなり浴びて二神は戸惑った。側に寄ろうとする二神を香子は押しのけようとする。
『1人になりたいの! お願いだから、今は出てって!』
こちらの言葉で改めて言われて二神は仕方なく立ち上がった。顔には出ていなかったが二神はひどくうろたえていた。
『なれば……落ち着いたなら呼んでおくれ。朝食は如何する』
玄武の科白に香子は首を振った。正直おなかはものすごくすいていたが(だからこういう思考になったのかもしれない)、一人では食べたくないし、かといって今は二神と一緒にいたくなかった。
床に横たわりそっぽを向くと、二神が寝室を出ていく気配がした。背中越しでも感じる躊躇するような動きに香子は罪悪感を覚えた。
二神は寝室から出、少しの間居間にいたようだがまた扉の開く音がした。どうやら室から出て行ったらしい。
香子はそこでやっと息をつく。
そして、「おなかすいたなぁ……」と呟いた。
体が動かなくて、おなかがすいていて、そばに誰もいなくて。
「どーしよ……」
自分が招いた結果なのだが、香子は途方に暮れた。
室の外に出た二神が香子と同じように途方に暮れているとも知らずに。
24
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる