異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
156 / 652
第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました

2.いろいろ複雑なんです

しおりを挟む
 その日はさすがに御花園に行くのは無理だった。
 王英明から話を聞いたのがすでに巳の三刻(午前十時頃)を過ぎていたからである。
 だが香子は楽観視していた。髪の色が定着したなら、もう朱雀に熱を与えられることはないと思っていたのだ。抱かれる時に熱を与えられなければ朝起きられないなんてことはないはず! と考えていたのだが……。

『朱雀様のバカーーーーーー!!!』

 翌朝目を覚ました香子は顔を真っ赤にして朱雀を罵倒した。

『香子……』
『やだって言ったのに! もう髪の色は定着したって言ったじゃない!?』

 起床時刻はとっくに辰の刻を過ぎて、もう巳の刻にさしかかっているようだった。玄武の室に射し込む光がそれを教えてくれる。

『香子、我はそなたと熱を共有したいのだ』
『う……』

 真面目な表情で色気ダダ漏れの甘いテノールでそんなことを言わないでほしいと香子は思う。

(でも引きさがっちゃいけない!)

 なし崩しであんな熱を与えられ続けるのは勘弁してほしかった。

『で、でも髪の色を定着させる為だって……』

 だからあの狂おしさも耐えたのに。
 朱雀はそれに少し切なそうな表情をした。香子ははっとする。朱雀にとって香子に熱を与えることは”特別”なことなのだと唐突に理解した。

(だけど、でも……)

 あの熱のおかげで毎朝香子は起きられないのだから納得はできない。
 御花園にどうしても行きたいというわけではない。ただ普通に起きてみんなとごはんを食べて、日が出ている間は普通に暮らしたいだけなのだ。もちろん週に二日ぐらいは自堕落に過ごしてもいいのかもしれないけれど。

『香子、朱雀はそなたがたまらなく愛しいのだ』

 玄武が諭すように言う。
 わかっている、わかっているけれども毎晩二人を受け入れている身にもなってほしい。もちろん香子だって嫌がっているわけではないからその点については何も言う気はないのだが。

(私だって朱雀様が好きだけど、でも……)

 いくつもの”でも”が頭に浮かぶ。
 ただ、香子は四神の花嫁で。
 だから本当は四神の言うことを聞かなくてはいけない?
 香子はそれに身震いした。

『香子?』

 そんな香子の様子に異変を感じたのか、朱雀が声をかける。

「う……」
『香子、どうした?』
「……やだ……出てって……お願い……出てってー!!」

 その悲痛な感情をいきなり浴びて二神は戸惑った。側に寄ろうとする二神を香子は押しのけようとする。

『1人になりたいの! お願いだから、今は出てって!』

 こちらの言葉で改めて言われて二神は仕方なく立ち上がった。顔には出ていなかったが二神はひどくうろたえていた。

『なれば……落ち着いたなら呼んでおくれ。朝食は如何する』

 玄武の科白に香子は首を振った。正直おなかはものすごくすいていたが(だからこういう思考になったのかもしれない)、一人では食べたくないし、かといって今は二神と一緒にいたくなかった。
 ベッドに横たわりそっぽを向くと、二神が寝室を出ていく気配がした。背中越しでも感じる躊躇するような動きに香子は罪悪感を覚えた。
 二神は寝室から出、少しの間居間にいたようだがまた扉の開く音がした。どうやら室から出て行ったらしい。
 香子はそこでやっと息をつく。
 そして、「おなかすいたなぁ……」と呟いた。
 体が動かなくて、おなかがすいていて、そばに誰もいなくて。

「どーしよ……」

 自分が招いた結果なのだが、香子は途方に暮れた。


 室の外に出た二神が香子と同じように途方に暮れているとも知らずに。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...