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第4部 四神を愛しなさいと言われました
69.青龍の領地に着きました
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いつもこの”跳ぶ”という感覚に香子は慣れない。
青龍の腕の中にいるだけなのだが、一瞬で景色が変わるのだ。この時は目を閉じる方がいいのではないかと香子は思う。今回も目を閉じるのを忘れた為、景色がいきなり変わり香子は目を瞬かせた。
『香子、着いたぞ』
『……はい』
少し俯いてしまった頭を持ち上げる。おそるおそる見れば、
「ひゃっ!?」
目の前で緑の髪の人々が一斉に傅いていた。
そこは広間であった。青龍から念話で通達があったからだろう。青龍の眷属たちはずっと青龍と花嫁の訪れを待っていたようである。
青龍は嘆息した。
『……こなに仰々しく出迎える必要はない。香子が驚いている』
前列の真ん中にいた眷属が顔を少し上げ、一歩近づいた。
『青龍様、おかえりなさいませ。花嫁様との帰還、おめでとうございます。玄武様、朱雀様におかれましてはお心安うお過ごしくださいませ』
『青沙、貴様何を言っている?』
香子は眷属の言葉に頭が痛くなるのを感じた。それと同時にそうだよね、とも思う。花嫁を連れてきたということはそういうことだと思うのが普通だろう。花嫁が各領地を見学して、それから総合的に判断してどこに嫁ぐか決めるなんていうのは前代未聞に違いない。
『我は伝えたはずだ』
『わかっております。ですが、青龍様の領地にいらっしゃるということは、青龍様に嫁がれるつもりがあるということではありませんか』
眷属の気持ちもわかるから、香子は何も言えなかった。
『……いずれ香子が我に嫁ぐこともあるだろうが、それは今ではない。此度は領地の見学と一晩泊まるだけだ。香子を困らせるな』
『……たいへん失礼いたしました』
青沙と呼ばれた眷属は平伏した。青藍よりも貫禄がある男性である。
『香子、すまない。街を見たいのだったか』
玄武と朱雀が共にいるということもあるのだろうか、青龍が気を遣ってくれていることが香子にはわかった。慣れないことをして大丈夫だろうかと香子は少し心配になってしまう。(ある意味失礼)青龍の腕に抱かれたまま、香子はそっと青龍の頬に触れた。
『ご領地の様子も見せていただけると嬉しいですが、先に少し休みたいです』
『お茶の用意を』
控えていた青藍が眷属たちに指示を出した。途端に眷属たちがスススッと流れるように去っていく。すごい動きだと香子は目を丸くした。
『花嫁様、たいへん失礼しました』
青藍が頭を下げた。
『謝ることはないわ。嫁ぐ前に四神の領地が見たいなんて、そんなことを言う花嫁はいなかったでしょう?』
『おそらくは』
青藍が同意した。青龍の眷属としてその態度はどうかと思うが、このように気安く口が利けるというのは大事である。
『……青藍、控えよ』
『青龍様、大丈夫です。私こそ我がままを言って申し訳ありません』
香子は青龍の逞しい胸に頭をそっとすり寄せた。知らない場所が不安で、本当はもっとくっつきたいのだが結い上げられた髪には飾りや簪が付いているからそっとしかできない。それが香子には不満だった。
青龍は大きく息を吐いた。
『玄武兄、朱雀兄、我が暴走しそうな時は止めてください……』
『うむ』
『そうだな』
香子はきょとんとした。暴走とはなんだろう。聞き間違えたかな? と香子は思った。
『お待たせしました』
青沙ともう三人女性の眷属が戻ってきた。
『どうぞこちらへ』
青沙に促されるまま別室へ案内される。渡り廊下へ出ると、庭の様子が見えた。草木や花が色鮮やかで、香子は思わず「わぁ……」と声を発した。
四神宮の庭もキレイに整えられてはいるが、ここまで広くはない。池があり、それを渡る為の石造りの橋がかかっていたりと、思わず散歩したくなるような庭である。
『青龍様、とても素敵な庭ですね』
『そうか。気に入ったか?』
『はい』
館の大きさがどれぐらいあるのかわからないが、庭の向こうに見える白い壁はかなり遠い。もしかしたら北京の王城の御花園ぐらいの広さがあるのではないかと香子は思った。
『では明日にでも案内しよう』
『ありがとうございます』
今回香子は自分の足では歩けないが、抱いて回ってもらうのも楽しそうだと素直に思った。
広間から少し離れた室に案内される。
応接間のようなところだった。ここもそれなりに広い。
蓋碗で用意されたお茶は龍井だった。青龍が香子を抱いたまま長椅子に腰掛ける。朱雀の領地に行った時もそうだったが、青龍も香子を下ろす気は全くなさそうだった。香子はなんだか心配になった。
『青龍様』
『如何か』
『あの……私重くないですか?』
今更な愚問だということは香子もわかっている。それでも聞かないではいられなかった。
なんというか、当たり前に抱き上げられているということが恥ずかしいのである。四神宮ではみな見慣れた光景だが、ここは青龍の領地だ。しかも青藍以外に知らない眷属が四人も控えている。
だからちょっと、香子は気になってしまった。
しかし言ってすぐに香子は後悔した。頬がカーッと熱くなり、誰が見てもわかるぐらい真っ赤になった。
『そなたが重いわけないだろう。いつだって羽のように軽いぞ。いくらでも重くなればいい』
それはそれでどうかと思うが、香子は『ソウデスカ』と返事をすることしかできなかった。
照れ隠しにお茶を啜る。
龍井は好きだ。少しキツい味もするのだが、飲み口はさっぱりである。質のいいものを用意してくれているのだなと香子は笑顔になった。
『おいしい……』
お茶菓子は基本甘い乾き物である。なんとなく、ポテトチップスが食べたいと香子は思った。
青龍の腕の中にいるだけなのだが、一瞬で景色が変わるのだ。この時は目を閉じる方がいいのではないかと香子は思う。今回も目を閉じるのを忘れた為、景色がいきなり変わり香子は目を瞬かせた。
『香子、着いたぞ』
『……はい』
少し俯いてしまった頭を持ち上げる。おそるおそる見れば、
「ひゃっ!?」
目の前で緑の髪の人々が一斉に傅いていた。
そこは広間であった。青龍から念話で通達があったからだろう。青龍の眷属たちはずっと青龍と花嫁の訪れを待っていたようである。
青龍は嘆息した。
『……こなに仰々しく出迎える必要はない。香子が驚いている』
前列の真ん中にいた眷属が顔を少し上げ、一歩近づいた。
『青龍様、おかえりなさいませ。花嫁様との帰還、おめでとうございます。玄武様、朱雀様におかれましてはお心安うお過ごしくださいませ』
『青沙、貴様何を言っている?』
香子は眷属の言葉に頭が痛くなるのを感じた。それと同時にそうだよね、とも思う。花嫁を連れてきたということはそういうことだと思うのが普通だろう。花嫁が各領地を見学して、それから総合的に判断してどこに嫁ぐか決めるなんていうのは前代未聞に違いない。
『我は伝えたはずだ』
『わかっております。ですが、青龍様の領地にいらっしゃるということは、青龍様に嫁がれるつもりがあるということではありませんか』
眷属の気持ちもわかるから、香子は何も言えなかった。
『……いずれ香子が我に嫁ぐこともあるだろうが、それは今ではない。此度は領地の見学と一晩泊まるだけだ。香子を困らせるな』
『……たいへん失礼いたしました』
青沙と呼ばれた眷属は平伏した。青藍よりも貫禄がある男性である。
『香子、すまない。街を見たいのだったか』
玄武と朱雀が共にいるということもあるのだろうか、青龍が気を遣ってくれていることが香子にはわかった。慣れないことをして大丈夫だろうかと香子は少し心配になってしまう。(ある意味失礼)青龍の腕に抱かれたまま、香子はそっと青龍の頬に触れた。
『ご領地の様子も見せていただけると嬉しいですが、先に少し休みたいです』
『お茶の用意を』
控えていた青藍が眷属たちに指示を出した。途端に眷属たちがスススッと流れるように去っていく。すごい動きだと香子は目を丸くした。
『花嫁様、たいへん失礼しました』
青藍が頭を下げた。
『謝ることはないわ。嫁ぐ前に四神の領地が見たいなんて、そんなことを言う花嫁はいなかったでしょう?』
『おそらくは』
青藍が同意した。青龍の眷属としてその態度はどうかと思うが、このように気安く口が利けるというのは大事である。
『……青藍、控えよ』
『青龍様、大丈夫です。私こそ我がままを言って申し訳ありません』
香子は青龍の逞しい胸に頭をそっとすり寄せた。知らない場所が不安で、本当はもっとくっつきたいのだが結い上げられた髪には飾りや簪が付いているからそっとしかできない。それが香子には不満だった。
青龍は大きく息を吐いた。
『玄武兄、朱雀兄、我が暴走しそうな時は止めてください……』
『うむ』
『そうだな』
香子はきょとんとした。暴走とはなんだろう。聞き間違えたかな? と香子は思った。
『お待たせしました』
青沙ともう三人女性の眷属が戻ってきた。
『どうぞこちらへ』
青沙に促されるまま別室へ案内される。渡り廊下へ出ると、庭の様子が見えた。草木や花が色鮮やかで、香子は思わず「わぁ……」と声を発した。
四神宮の庭もキレイに整えられてはいるが、ここまで広くはない。池があり、それを渡る為の石造りの橋がかかっていたりと、思わず散歩したくなるような庭である。
『青龍様、とても素敵な庭ですね』
『そうか。気に入ったか?』
『はい』
館の大きさがどれぐらいあるのかわからないが、庭の向こうに見える白い壁はかなり遠い。もしかしたら北京の王城の御花園ぐらいの広さがあるのではないかと香子は思った。
『では明日にでも案内しよう』
『ありがとうございます』
今回香子は自分の足では歩けないが、抱いて回ってもらうのも楽しそうだと素直に思った。
広間から少し離れた室に案内される。
応接間のようなところだった。ここもそれなりに広い。
蓋碗で用意されたお茶は龍井だった。青龍が香子を抱いたまま長椅子に腰掛ける。朱雀の領地に行った時もそうだったが、青龍も香子を下ろす気は全くなさそうだった。香子はなんだか心配になった。
『青龍様』
『如何か』
『あの……私重くないですか?』
今更な愚問だということは香子もわかっている。それでも聞かないではいられなかった。
なんというか、当たり前に抱き上げられているということが恥ずかしいのである。四神宮ではみな見慣れた光景だが、ここは青龍の領地だ。しかも青藍以外に知らない眷属が四人も控えている。
だからちょっと、香子は気になってしまった。
しかし言ってすぐに香子は後悔した。頬がカーッと熱くなり、誰が見てもわかるぐらい真っ赤になった。
『そなたが重いわけないだろう。いつだって羽のように軽いぞ。いくらでも重くなればいい』
それはそれでどうかと思うが、香子は『ソウデスカ』と返事をすることしかできなかった。
照れ隠しにお茶を啜る。
龍井は好きだ。少しキツい味もするのだが、飲み口はさっぱりである。質のいいものを用意してくれているのだなと香子は笑顔になった。
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