異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
165 / 653
第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました

11.わけがわからなくなりました ※R13

しおりを挟む
 本能うんぬんの話をするならば夜はさすがに元の姿にはなってくれないだろう。残念だが仕方ない、と香子も思う。
 あの後二神と香子は茶室に戻った。茶室ではまだ玄武と朱雀がお茶を飲んでいた。目礼し、特に何を言うでもなくお茶を入れて香子はしばらく物思いにふけることにした。
 四神が四神同士で会話する場合別に声を出す必要はないのだからと香子は気にしないことにした。
 前の花嫁だという張燕に選択肢は与えられなかったのか。
 けれど白虎や青龍、そして三神の眷族を産んだということはそこに愛情はあったのだろう。今から約六五〇年前にトリップしてきた花嫁。彼女はどんな思いでいたのだろうか。
 考えてもせんないことだというのはわかっている。それでも少しぐらいその思いを想像することはできるはずだった。
 夕食をとる間も香子は心ここにあらずという体だった。侍女たちは心配してちらちらと黒月を見たが、黒月は気付かないふりをした。入浴の段になってやっと香子が反応した。

『あ! 今夜はあの色っぽい夜着はやめてください』

 と言う。
 侍女たちはいろいろ聞きたい気持ちをこらえ、いつもの白い夜着を用意した。
 香子はまた頭がパンクしそうだったので、侍女たちの何か言いたげな視線にはさっぱり気付かず白虎の室に入っていった。

『来たか』

 白虎が居間の長椅子に悠然と横たわった格好のまま香子を迎えた。どうやら沐浴してきたらしく白い髪が濡れているのがまた色っぽい。香子はその姿を見て「うっ」と怯んだ。

(イケメン、濡れ髪、きけん、きけーんっっ!!)

 イエローカードとホイッスルがあったら思いっきり注意したいシチュエーションである。

『……白虎様……髪、濡れてますよ……』

 かろうじてそれだけ言うと、白虎はそれでやっと気づいたように己の長い髪に触れた。すると見る間に髪が乾いていく。

(うわー、便利……)
『そなたの髪もしっかり乾いているとはいえぬぞ』

 そう言ってニヤリとし、手招きされる。香子はそれに誘われるように示された場所に腰掛けた。香子の後ろに白虎の胸部がある、いわば抱きつかれやすいポジションで香子はふわりとした風を受けた。白虎の手が確認するように香子の髪に触れた。さらさらと髪がその大きな手からこぼれていく。

(超便利……)
『ありがとうございます』
『礼を言われるほどのことでもない』

 当り前のやりとりをして、香子は場を持たせるのにお茶を入れた。

香子シャンズ
『はい?』

 名を呼ばれて白虎に顔を向けた瞬間ぐいっと引き寄せられ。

「んっ……!?」

 半開きだった唇にするりと舌が差しこまれ、無防備な香子の舌が捕えられた。香子は咄嗟に椅子に手をつく。

「んんっ……」

 その間も白虎の舌は香子の口腔内をねぶり、陥落させようとする。それは朱雀ほど苛烈ではないが、香子を屈服させようとするものだった。未知の口づけだというのに不快感を覚えない自分に香子は愕然とした。体勢が体勢だけにうまく抵抗することもできない。どうしよう、と香子が泣きそうになったところで、扉を叩く音がした。

『遅くなりました』

 涼やかな声と共に扉が開く。青龍だった。
 それと同時に唇を離され、香子の体は逃げを打った。

『香子!?』

 長椅子から転げ落ち、地板ゆかに叩きつけられるかと思ったがその手前で青龍の手が香子を支えた。

『大事ないか?』

 白虎と青龍に心配されるのがいたたまれない。香子は自分でも信じられないほどの早さで体勢を整えると、

『ご、ごめんなさい!』

 と怒鳴るように言い捨てて白虎の室から逃げ出した。

『香子!』
『花嫁様!?』

 背後から呼ぶ二神の声、扉の脇にいたのであろう黒月の声が耳に届いたがどうしたらいいのかわからない。

(どうして、どうして、どうして……)

 香子は完全にパニックを起こしていた。
 どこに行ったらいいのかわからなくて泣きそうになった時、穏やかな玄武の顔と愛しそうに自分を見る朱雀の顔が浮かんだ。こんな時どちらがより頼りになるのかといえば……。
 香子は迷わず玄武の室に向かって走っていった。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...