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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
22.影響があったようです
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(よく寝た……)
目覚めた時に香子が思ったのはそんなことで。昨日の朝ももちろんそうだったのだが、何よりも倦怠感がないのが嬉しかった。
もそっと体を起こすと、両脇に朱雀と玄武がいる。二神は香子の方を向いて横になっていて、目を向けると彼らはゆっくりと瞼を開いた。
(ううう……朝からなんという眼福……)
美しすぎる二神の姿に香子は目が潰れそうだと思う。玄武の艶やかな長い黒髪、朱雀の鮮やかな少しウェーブがかった赤い長髪が朝の光の中で眩しく映る。
『……あれ?』
香子は首を傾げた。そして手を伸ばし、朱雀の髪にそっと触れる。
『朱雀様の髪ってまっすぐじゃないんですか?』
朱雀は己の髪を眼前に持ってきて、まじまじと見た。どうやら朱雀自身にとっても当り前の状態ではないらしかった。
『これは……』
呟いて香子を抱き込む。香子はびっくりした。
『朱雀様……!?』
首を巡らせて玄武を窺うと先程の格好のまま優しい笑みを浮かべている。一体どういうことなのかと聞こうとした時、
『お休みのところ申し訳ありません。朱雀様、領地から使いが参りました』
紅夏の声が届いた。
(領地?)
朱雀は唐突に香子を離し、『着替えをせねばならぬな』とひどく嬉しそうに言った。香子もそれに異存はなかったが一体何がどうなっているのかわからなかった。
『我が運ぼう』
玄武が起き、香子を抱いて部屋まで送ってくれた。
『あの……何があったのですか?』
『我の時と似たようなことだ』
そう言ってひどく嬉しそうに笑む。香子は頭の中が?でいっぱいだったが、素直に着替えをした。そこに朱雀が迎えに来て謁見室に運ばれる。正直香子が行く必要があるのかわからないが、別段断る理由もないので朱雀の首に腕を回した。
謁見室では朱雀と同じ赤い髪をした者が跪いていた。
『紅炎か』
『是』
『なおれ』
『ありがとうございます』
立ち上がったのは男性だった。おそらくは朱雀の眷族なのだろうと当たりをつける。紅夏と同じぐらいだろうか、若々しい容姿なのにその目だけがひどく落ち着いているのに違和感があった。
(眷族って美形しかいないのー?)
四神を追いかけてきた眷族といい、今回やってきた朱雀の眷族も秀麗な面をしている。おそらく唐装(漢服)の下もいい体つきをしているに違いない。これは人間の好みなのかそれとも神様の好みなのか悩むところではある(悩んでも仕方ない)
『何用か?』
『はっ、昨夜のことでございますが、領地全域の植物が一斉に芽吹きました。例年より花も鮮やかに咲いており、田畑に豊作の兆しが現れているとのことでございます』
『そうか』
報告する声は穏やかながらも興奮が含まれているように聞こえた。紅炎と呼ばれた男性は朱雀と香子を見つめながら続けて言う。
『して、花嫁様はいつ頃いらっしゃられるのでしょうか? 領地での準備がございますので……』
(え?)
『紅炎、気が早いぞ』
紅炎の言葉を朱雀が遮る。
『ですが……』
『香子は未だこちらに来たばかり。まだ心の準備が整ってはおらぬ。気軽にそのようなことを口にするでない』
『たいへん申し訳ありません』
紅炎はさっと平伏した。
香子が困ったような表情をしたのに朱雀は笑んだ。
『そなたが気にすることではない。だが、我にも気持ちがあることは確かであろう?』
『はい、それは……』
困惑しながらも即答すれば朱雀に抱き上げられたまま頬を寄せられた。
『今はそれでよい』
謁見室には四神が集まっていたし、眷族もいた。そして当然のことながら趙文英も侍女たちも控えている。四神も眷族も気にしてはいないだろうが香子はその甘さに恥ずかしくなって朱雀の胸に顔を伏せた。
それを紅夏と紅炎が喜色を浮かべて見ていたことに香子は気付かなかった。
どうしたらいいのかわからない。
それが香子のその時の心境であった。
例によって紅炎は少し紅夏と話をした後すぐに領地へ帰ったらしい。四神が不在の今眷族はできるだけ領地にいるようにしているのだという。
北の玄武の領地で吉報と、南の朱雀の領地での吉報は瞬く間に付近の村々に伝わった。四神の領地が潤えば他の土地も影響を受ける。これも花嫁が降臨したおかげだと恩恵を受けた民たちは涙を流して喜んだという。
そしてその報に喜んだのは民草のみではなかった。
西の地から北京の王城を目指す皇太后も嬉しそうに目を細めたのだが、それはまだ誰も預かり知らぬことであった。
目覚めた時に香子が思ったのはそんなことで。昨日の朝ももちろんそうだったのだが、何よりも倦怠感がないのが嬉しかった。
もそっと体を起こすと、両脇に朱雀と玄武がいる。二神は香子の方を向いて横になっていて、目を向けると彼らはゆっくりと瞼を開いた。
(ううう……朝からなんという眼福……)
美しすぎる二神の姿に香子は目が潰れそうだと思う。玄武の艶やかな長い黒髪、朱雀の鮮やかな少しウェーブがかった赤い長髪が朝の光の中で眩しく映る。
『……あれ?』
香子は首を傾げた。そして手を伸ばし、朱雀の髪にそっと触れる。
『朱雀様の髪ってまっすぐじゃないんですか?』
朱雀は己の髪を眼前に持ってきて、まじまじと見た。どうやら朱雀自身にとっても当り前の状態ではないらしかった。
『これは……』
呟いて香子を抱き込む。香子はびっくりした。
『朱雀様……!?』
首を巡らせて玄武を窺うと先程の格好のまま優しい笑みを浮かべている。一体どういうことなのかと聞こうとした時、
『お休みのところ申し訳ありません。朱雀様、領地から使いが参りました』
紅夏の声が届いた。
(領地?)
朱雀は唐突に香子を離し、『着替えをせねばならぬな』とひどく嬉しそうに言った。香子もそれに異存はなかったが一体何がどうなっているのかわからなかった。
『我が運ぼう』
玄武が起き、香子を抱いて部屋まで送ってくれた。
『あの……何があったのですか?』
『我の時と似たようなことだ』
そう言ってひどく嬉しそうに笑む。香子は頭の中が?でいっぱいだったが、素直に着替えをした。そこに朱雀が迎えに来て謁見室に運ばれる。正直香子が行く必要があるのかわからないが、別段断る理由もないので朱雀の首に腕を回した。
謁見室では朱雀と同じ赤い髪をした者が跪いていた。
『紅炎か』
『是』
『なおれ』
『ありがとうございます』
立ち上がったのは男性だった。おそらくは朱雀の眷族なのだろうと当たりをつける。紅夏と同じぐらいだろうか、若々しい容姿なのにその目だけがひどく落ち着いているのに違和感があった。
(眷族って美形しかいないのー?)
四神を追いかけてきた眷族といい、今回やってきた朱雀の眷族も秀麗な面をしている。おそらく唐装(漢服)の下もいい体つきをしているに違いない。これは人間の好みなのかそれとも神様の好みなのか悩むところではある(悩んでも仕方ない)
『何用か?』
『はっ、昨夜のことでございますが、領地全域の植物が一斉に芽吹きました。例年より花も鮮やかに咲いており、田畑に豊作の兆しが現れているとのことでございます』
『そうか』
報告する声は穏やかながらも興奮が含まれているように聞こえた。紅炎と呼ばれた男性は朱雀と香子を見つめながら続けて言う。
『して、花嫁様はいつ頃いらっしゃられるのでしょうか? 領地での準備がございますので……』
(え?)
『紅炎、気が早いぞ』
紅炎の言葉を朱雀が遮る。
『ですが……』
『香子は未だこちらに来たばかり。まだ心の準備が整ってはおらぬ。気軽にそのようなことを口にするでない』
『たいへん申し訳ありません』
紅炎はさっと平伏した。
香子が困ったような表情をしたのに朱雀は笑んだ。
『そなたが気にすることではない。だが、我にも気持ちがあることは確かであろう?』
『はい、それは……』
困惑しながらも即答すれば朱雀に抱き上げられたまま頬を寄せられた。
『今はそれでよい』
謁見室には四神が集まっていたし、眷族もいた。そして当然のことながら趙文英も侍女たちも控えている。四神も眷族も気にしてはいないだろうが香子はその甘さに恥ずかしくなって朱雀の胸に顔を伏せた。
それを紅夏と紅炎が喜色を浮かべて見ていたことに香子は気付かなかった。
どうしたらいいのかわからない。
それが香子のその時の心境であった。
例によって紅炎は少し紅夏と話をした後すぐに領地へ帰ったらしい。四神が不在の今眷族はできるだけ領地にいるようにしているのだという。
北の玄武の領地で吉報と、南の朱雀の領地での吉報は瞬く間に付近の村々に伝わった。四神の領地が潤えば他の土地も影響を受ける。これも花嫁が降臨したおかげだと恩恵を受けた民たちは涙を流して喜んだという。
そしてその報に喜んだのは民草のみではなかった。
西の地から北京の王城を目指す皇太后も嬉しそうに目を細めたのだが、それはまだ誰も預かり知らぬことであった。
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