554 / 653
第4部 四神を愛しなさいと言われました
102.婚礼の後で
しおりを挟む
朱雀の背に埋もれて、香子は空の旅を満喫していた。
ふかふかの羽はとても気持ちよく、ともすればこのまま微睡んでしまいそうである。
かなり高いところを飛んでいるというのに、四神のおかげで風は強くないし冷たくも感じられない。守られていると実感しては身もだえ、結婚したんだ、と思っては身もだえ、それはそれで香子もたいへんだった。
香子は百面相をしながら、遠くの山々を眺めたり、万里の長城を眺めてうっとりしたりした。香子は本当に長城が好きなのである。
(なんでこんなに城壁って萌えるのかしら……)
長城の上に降り立ったこともある。また今度連れてきてほしいと香子は思った。
《降りるか》
朱雀に心話で話しかけられて慌てた。そういえば本性を現した四神とくっついていると、香子の思っていることはだだ漏れになってしまうのである。
《いいえ。また今度連れてきてください》
《承知した》
こんなやりとりも変わらない。
(でも私、結婚したんだ……)
時間としてはたった一年なのだが、香子にはとても長く、そしてあまりにも濃い日々だった。
なんとなく結婚がゴールのように思えていたが、そうではないということにも香子は気づいてしまった。
結婚はゴールではなく、新たなスタートなのである。
まだ香子は誰の領地へ向かうかも決めていないし、しばらくはまだ四神宮に留まることになっている。
考えなければいけないことはまだまだあるが、今だけはこの雄大な景色を見ていたいと香子は思った。
空の旅はとても長いようでいて短かった。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうというやつである。
再び王城に戻り、四神が広場に降り立つ。そして瞬時に人形を取った。今度は、香子は白虎の腕の中に収まっていた。
(この早業はいったい……)
香子は目を丸くした。
いつものことなのだが、どうしてこうなっているのかわからないのである。
皇帝以下、四神と香子が戻ってきたことにほっとしていたが、香子はそんなこと気づきもしなかった。その後は宴会の為に着替えをさせられ、香子はげんなりしながら侍女のおもちゃになった。
そうして宴席で、思う存分豪華な料理に舌鼓を打った。
皇帝の挨拶も大臣の寿ぎも、他国の招待客の囀りも香子の耳には全く届かなかった。もちろん四神には最初から香子以外は何も見えていない。
踊り子の舞も、演舞も見たが、香子は頭がほわほわしていてまるで夢の中にいるようだった。
そして、
『香子、参るぞ』
青龍の腕に抱かれたまま、四神宮へ転移した。
『わっ……青龍様』
しかも転移先は床の上である。
『香子……そなたが愛しくてたまらぬ……』
優しく床に横たえられて、腰帯を解かれ、衣裳をはだけられた。香子もまたそのストレートな想いに、頬を真っ赤に染める。このまま流されてもいいように香子も思えたが、髪飾りなども取ってしまいたいし……と考えながら、やはり逃れることはできなかった。
全て布を取り去られ、髪飾りなども丁寧に外される。そうして玄武と朱雀が来て熱を受け……香子はもう何も考えられなくなった。
……はっきり言ってとんでもなかった。
香子は確かに宴席で出された料理をこれでもかと食べた。
だがそんなものでは足りなかったらしい。
抱かれながら空腹を覚えては泣き、食べ終えたらまた抱かれといつ眠ったのかすらわからない。そんな風に爛れた日々を過ごしていたら、いつのまにか一週間が過ぎていたようだった。
『……時間が飛んだみたいです……』
やっとまともに朝食を食べながら、香子はしみじみと呟いた。
結婚したら毎日の交わりがああなってしまうのか、それともこれは初夜限定なのか聞くのも恐ろしい。もし聞いたらまた寝室に連れ込まれて、今度こそ出てこられなくなるのではないかと香子は思う。
香子は四神に抱かれることが嫌いではない。むしろ気持ちいいことは好きだ。
だが物には限度というものがある。四神は香子が愛しくてたまらないし、結婚したことで箍が外れてしまったのか、香子が「しんじゃう」と思うほど甘く香子を愛し続けた。
(あれでも我慢してたなんて……)
なんというかもう、香子にとって抱かれ方の次元が違った。
いつまでも気持ちよくて降りてこられないような快楽。それに泣きじゃくれば甘い声で宥められ、また快感をたっぷり与えられて……。
(あれが毎回とか無理いいいいい)
『香子、如何した?』
玄武に声をかけられて、香子は首を振った。
結婚しての最初の悩みが性生活というのはどうかと香子も思う。
(でも、下手なことは言えないよね)
今はとにかく包子(肉まん)がおいしい。
性生活の悩みなんて誰に相談すればいいのだろうと香子は考える。皇太后とか皇后に相談するのはありえない。皇太后と先代の皇帝は仲睦まじかったと言うが、それでも側室が大勢いただろうし、皇后について言えば皇帝とはレス状態のようである。それを思い出して香子はまた皇帝への怒りがふつふつと沸いてきた。側室を愛すなとは言わない。だが皇后をないがしろにする皇帝など最低だ。
玄武が心配そうに香子の顔を覗き込んできた。
その麗しい顔を見せないでほしいと、香子は両手を前に出して玄武の顔をガードした。
『香子?』
『……顔がよすぎるんですからあんまり近づかないでください』
『香子の言葉はたまにわからぬな』
『玄武様がステキすぎて心臓が止まりそうになるんです。だから顔を近づけないで……』
『心臓が止まるのは困るが、そなたのことは四六時中見ていたい』
玄武に抱き寄せられて、香子は口づけを受けた。
絶対心臓に悪いと思いながら、香子はどうにか朝食を食べ終えたのだった。
ふかふかの羽はとても気持ちよく、ともすればこのまま微睡んでしまいそうである。
かなり高いところを飛んでいるというのに、四神のおかげで風は強くないし冷たくも感じられない。守られていると実感しては身もだえ、結婚したんだ、と思っては身もだえ、それはそれで香子もたいへんだった。
香子は百面相をしながら、遠くの山々を眺めたり、万里の長城を眺めてうっとりしたりした。香子は本当に長城が好きなのである。
(なんでこんなに城壁って萌えるのかしら……)
長城の上に降り立ったこともある。また今度連れてきてほしいと香子は思った。
《降りるか》
朱雀に心話で話しかけられて慌てた。そういえば本性を現した四神とくっついていると、香子の思っていることはだだ漏れになってしまうのである。
《いいえ。また今度連れてきてください》
《承知した》
こんなやりとりも変わらない。
(でも私、結婚したんだ……)
時間としてはたった一年なのだが、香子にはとても長く、そしてあまりにも濃い日々だった。
なんとなく結婚がゴールのように思えていたが、そうではないということにも香子は気づいてしまった。
結婚はゴールではなく、新たなスタートなのである。
まだ香子は誰の領地へ向かうかも決めていないし、しばらくはまだ四神宮に留まることになっている。
考えなければいけないことはまだまだあるが、今だけはこの雄大な景色を見ていたいと香子は思った。
空の旅はとても長いようでいて短かった。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうというやつである。
再び王城に戻り、四神が広場に降り立つ。そして瞬時に人形を取った。今度は、香子は白虎の腕の中に収まっていた。
(この早業はいったい……)
香子は目を丸くした。
いつものことなのだが、どうしてこうなっているのかわからないのである。
皇帝以下、四神と香子が戻ってきたことにほっとしていたが、香子はそんなこと気づきもしなかった。その後は宴会の為に着替えをさせられ、香子はげんなりしながら侍女のおもちゃになった。
そうして宴席で、思う存分豪華な料理に舌鼓を打った。
皇帝の挨拶も大臣の寿ぎも、他国の招待客の囀りも香子の耳には全く届かなかった。もちろん四神には最初から香子以外は何も見えていない。
踊り子の舞も、演舞も見たが、香子は頭がほわほわしていてまるで夢の中にいるようだった。
そして、
『香子、参るぞ』
青龍の腕に抱かれたまま、四神宮へ転移した。
『わっ……青龍様』
しかも転移先は床の上である。
『香子……そなたが愛しくてたまらぬ……』
優しく床に横たえられて、腰帯を解かれ、衣裳をはだけられた。香子もまたそのストレートな想いに、頬を真っ赤に染める。このまま流されてもいいように香子も思えたが、髪飾りなども取ってしまいたいし……と考えながら、やはり逃れることはできなかった。
全て布を取り去られ、髪飾りなども丁寧に外される。そうして玄武と朱雀が来て熱を受け……香子はもう何も考えられなくなった。
……はっきり言ってとんでもなかった。
香子は確かに宴席で出された料理をこれでもかと食べた。
だがそんなものでは足りなかったらしい。
抱かれながら空腹を覚えては泣き、食べ終えたらまた抱かれといつ眠ったのかすらわからない。そんな風に爛れた日々を過ごしていたら、いつのまにか一週間が過ぎていたようだった。
『……時間が飛んだみたいです……』
やっとまともに朝食を食べながら、香子はしみじみと呟いた。
結婚したら毎日の交わりがああなってしまうのか、それともこれは初夜限定なのか聞くのも恐ろしい。もし聞いたらまた寝室に連れ込まれて、今度こそ出てこられなくなるのではないかと香子は思う。
香子は四神に抱かれることが嫌いではない。むしろ気持ちいいことは好きだ。
だが物には限度というものがある。四神は香子が愛しくてたまらないし、結婚したことで箍が外れてしまったのか、香子が「しんじゃう」と思うほど甘く香子を愛し続けた。
(あれでも我慢してたなんて……)
なんというかもう、香子にとって抱かれ方の次元が違った。
いつまでも気持ちよくて降りてこられないような快楽。それに泣きじゃくれば甘い声で宥められ、また快感をたっぷり与えられて……。
(あれが毎回とか無理いいいいい)
『香子、如何した?』
玄武に声をかけられて、香子は首を振った。
結婚しての最初の悩みが性生活というのはどうかと香子も思う。
(でも、下手なことは言えないよね)
今はとにかく包子(肉まん)がおいしい。
性生活の悩みなんて誰に相談すればいいのだろうと香子は考える。皇太后とか皇后に相談するのはありえない。皇太后と先代の皇帝は仲睦まじかったと言うが、それでも側室が大勢いただろうし、皇后について言えば皇帝とはレス状態のようである。それを思い出して香子はまた皇帝への怒りがふつふつと沸いてきた。側室を愛すなとは言わない。だが皇后をないがしろにする皇帝など最低だ。
玄武が心配そうに香子の顔を覗き込んできた。
その麗しい顔を見せないでほしいと、香子は両手を前に出して玄武の顔をガードした。
『香子?』
『……顔がよすぎるんですからあんまり近づかないでください』
『香子の言葉はたまにわからぬな』
『玄武様がステキすぎて心臓が止まりそうになるんです。だから顔を近づけないで……』
『心臓が止まるのは困るが、そなたのことは四六時中見ていたい』
玄武に抱き寄せられて、香子は口づけを受けた。
絶対心臓に悪いと思いながら、香子はどうにか朝食を食べ終えたのだった。
80
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる