異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

102.婚礼の後で

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 朱雀の背に埋もれて、香子は空の旅を満喫していた。
 ふかふかの羽はとても気持ちよく、ともすればこのまま微睡んでしまいそうである。
 かなり高いところを飛んでいるというのに、四神のおかげで風は強くないし冷たくも感じられない。守られていると実感しては身もだえ、結婚したんだ、と思っては身もだえ、それはそれで香子もたいへんだった。
 香子は百面相をしながら、遠くの山々を眺めたり、万里の長城を眺めてうっとりしたりした。香子は本当に長城が好きなのである。

(なんでこんなに城壁って萌えるのかしら……)

 長城の上に降り立ったこともある。また今度連れてきてほしいと香子は思った。

《降りるか》

 朱雀に心話で話しかけられて慌てた。そういえば本性を現した四神とくっついていると、香子の思っていることはだだ漏れになってしまうのである。

《いいえ。また今度連れてきてください》
《承知した》

 こんなやりとりも変わらない。

(でも私、結婚したんだ……)

 時間としてはたった一年なのだが、香子にはとても長く、そしてあまりにも濃い日々だった。
 なんとなく結婚がゴールのように思えていたが、そうではないということにも香子は気づいてしまった。
 結婚はゴールではなく、新たなスタートなのである。
 まだ香子は誰の領地へ向かうかも決めていないし、しばらくはまだ四神宮に留まることになっている。
 考えなければいけないことはまだまだあるが、今だけはこの雄大な景色を見ていたいと香子は思った。


 空の旅はとても長いようでいて短かった。
 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうというやつである。
 再び王城に戻り、四神が広場に降り立つ。そして瞬時に人形を取った。今度は、香子は白虎の腕の中に収まっていた。

(この早業はいったい……)

 香子は目を丸くした。
 いつものことなのだが、どうしてこうなっているのかわからないのである。
 皇帝以下、四神と香子が戻ってきたことにほっとしていたが、香子はそんなこと気づきもしなかった。その後は宴会の為に着替えをさせられ、香子はげんなりしながら侍女のおもちゃになった。
 そうして宴席で、思う存分豪華な料理に舌鼓を打った。
 皇帝の挨拶も大臣の寿ぎも、他国の招待客の囀りも香子の耳には全く届かなかった。もちろん四神には最初から香子以外は何も見えていない。
 踊り子の舞も、演舞も見たが、香子は頭がほわほわしていてまるで夢の中にいるようだった。
 そして、

香子シャンズ、参るぞ』

 青龍の腕に抱かれたまま、四神宮へ転移した。

『わっ……青龍様』

 しかも転移先はベッドの上である。

『香子……そなたが愛しくてたまらぬ……』

 優しく床に横たえられて、腰帯を解かれ、衣裳をはだけられた。香子もまたそのストレートな想いに、頬を真っ赤に染める。このまま流されてもいいように香子も思えたが、髪飾りなども取ってしまいたいし……と考えながら、やはり逃れることはできなかった。
 全て布を取り去られ、髪飾りなども丁寧に外される。そうして玄武と朱雀が来て熱を受け……香子はもう何も考えられなくなった。
 ……はっきり言ってとんでもなかった。
 香子は確かに宴席で出された料理をこれでもかと食べた。
 だがそんなものでは足りなかったらしい。
 抱かれながら空腹を覚えては泣き、食べ終えたらまた抱かれといつ眠ったのかすらわからない。そんな風に爛れた日々を過ごしていたら、いつのまにか一週間が過ぎていたようだった。

『……時間が飛んだみたいです……』

 やっとまともに朝食を食べながら、香子はしみじみと呟いた。
 結婚したら毎日の交わりがああなってしまうのか、それともこれは初夜限定なのか聞くのも恐ろしい。もし聞いたらまた寝室に連れ込まれて、今度こそ出てこられなくなるのではないかと香子は思う。
 香子は四神に抱かれることが嫌いではない。むしろ気持ちいいことは好きだ。
 だが物には限度というものがある。四神は香子が愛しくてたまらないし、結婚したことで箍が外れてしまったのか、香子が「しんじゃう」と思うほど甘く香子を愛し続けた。

(あれでも我慢してたなんて……)

 なんというかもう、香子にとって抱かれ方の次元が違った。
 いつまでも気持ちよくて降りてこられないような快楽。それに泣きじゃくれば甘い声で宥められ、また快感をたっぷり与えられて……。

(あれが毎回とか無理いいいいい)
『香子、如何した?』

 玄武に声をかけられて、香子は首を振った。
 結婚しての最初の悩みが性生活というのはどうかと香子も思う。

(でも、下手なことは言えないよね)

 今はとにかく包子(肉まん)がおいしい。
 性生活の悩みなんて誰に相談すればいいのだろうと香子は考える。皇太后とか皇后に相談するのはありえない。皇太后と先代の皇帝は仲睦まじかったと言うが、それでも側室が大勢いただろうし、皇后について言えば皇帝とはレス状態のようである。それを思い出して香子はまた皇帝への怒りがふつふつと沸いてきた。側室を愛すなとは言わない。だが皇后をないがしろにする皇帝など最低だ。
 玄武が心配そうに香子の顔を覗き込んできた。
 その麗しいかんばせを見せないでほしいと、香子は両手を前に出して玄武の顔をガードした。

『香子?』
『……顔がよすぎるんですからあんまり近づかないでください』
『香子の言葉はたまにわからぬな』
『玄武様がステキすぎて心臓が止まりそうになるんです。だから顔を近づけないで……』
『心臓が止まるのは困るが、そなたのことは四六時中見ていたい』

 玄武に抱き寄せられて、香子は口づけを受けた。
 絶対心臓に悪いと思いながら、香子はどうにか朝食を食べ終えたのだった。
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