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第4部 四神を愛しなさいと言われました
118.四神の嫉妬と溺愛、そして胸について
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『どうして、張老師はあのようなことを……』
『遠慮したのだろう』
張錦飛を見送ってから、香子は首を傾げて疑問を口にした。玄武が喉の奥でクククと笑う。珍しいと香子は思った。
『遠慮、ですか……』
『我らは四神同士には嫉妬はせぬが、人には向ける故な』
『張老師はお年寄りですよ』
『それでも”男”には違いあるまい』
それはそうだけど、と香子は苦笑した。
そういえば香子も、七十過ぎても八十過ぎても男性は現役の人もいると聞いたことはあった。まして玄武は千歳を数えている。人とは見た目も身体の衰えも寿命も違うが、張のことは年寄りとは見ていないのかもしれなかった。
『そうですね。でも、私が書を習うことを止めないでいてくれる玄武様方はとても優しいです』
四神の嫉妬がどれほどのものかは香子にはわからない。だが四神宮の主官である趙にも香子を合わせたくないほどだ。張に対しても言いたいことはあろう。
だからそう言って、香子は玄武に微笑みかけた。
『香子、そなたが愛しくてならぬ……』
『まだ夕飯前です……』
玄武の室へ移動する途中の渡り廊下で、香子は玄武に口づけられた。こんな、誰に見られるかわからないところで唇を合わせるなんてそうそうない。
「んっ……」
しかもただ唇を重ねるだけの口づけではなかったから、香子は身を震わせた。
『……そなたが愛しくてならぬ。夕飯には間に合わせる故、舐めさせよ』
『やっ……』
玄武は強引に香子を室に運び、床に押し倒すと宣言通りに香子を愛でたのだった。
四神の愛は重い。
香子はしみじみそう思う。
胸の大きさは固定してもらわないといけないし、まだ玄武の領地へも行っていない。白虎の眷属である白風は女官である延夕玲や楊芳芳に教育され、四神の花嫁という存在がどういうものなのか理解し始めたようである。正しく認識できていなかったというのはよろしくはないが、眷属は元々己の神が一番である。花嫁を見たことがない者も多いので、それはしかたがないことなのかもしれなかった。
黒月が扉の前に控えていてくれて本当によかったと香子は思う。
そうでなければ白風と喧嘩になっていたかもしれない。黒月は香子の守護であると自分で決めているから、他の者が香子に失礼な物言いをすることが耐えられないのだ。
(黒月自身、私にはけっこうな塩対応だけどなー……)
黒月がショックを受けそうなので、香子は口には出さない。
『どうしよう……』
人のことなど気にしている場合ではなかった。
目下の悩みはたわわな胸である。
胸が脂肪の塊だということを香子も知ってはいるが、こんなに重いものだとは知らなかった。そうでなくても白虎がたわわな胸を好きすぎるということもあって、すでにとんでもない大きさになっていると香子は思う。おかげで衣裳も多少仕立て直すことになってしまったみたいだ。
(何事にも限度ってものがあるよね)
夕飯の後茶室でお茶をした際、香子は思い切って聞いてみた。
『三日か』
『そなにかかるのか?』
『長いですな』
胸の大きさの固定について話せば、玄武、朱雀、青龍がそれぞれ反応した。四神同士でも知らないことはあるらしい。
白虎は元々嫉妬深く、先代も先々代も花嫁を得た後は決して領地から出さなかったから、事情を知らないのも無理はなかった。そう、四神同士は嫉妬をしないという話ではあったが白虎は例外なのである。
『三日は抱き続けぬと決めることができぬ』
白虎が当たり前のように言う。
『どなたかが付いていてもいいのですよね?』
香子は不安になって白虎に聞いた。
『それはかまわぬ。むしろ共にいてくれねば困るな』
『そうだな。我と朱雀とで交替して見守ろう』
玄武と朱雀は頷いた。青龍もそれでいいらしい。正直香子としては勘弁してほしかったが、更に胸が大きくなってしまうのは困るのだ。ため息をつき、香子もまた了承した。
一番の問題は香子の食事である。
それらの問題もどうにかクリアし、とうとう白虎の室に籠ることとなった。
香子としては逃げ出したい心境である。白虎のことは好きだし、本性ももふもふで美しいとは思っているが、その虎の姿に抱かれるのはどうしたって恐ろしいのだ。これはもう人の本能であるからしかたない。
床に優しく降ろされる。香子の身体は震えていた。
『白虎様』
『如何した?』
『本当に……三日も抱かれ続けないといけないのですか?』
『何度も伝えたであろう?』
『そうですけど……』
『……そなたが怖がる理由もわかっているつもりだ。できるだけ優しくする故、我に身を委ねよ』
香子はポロリと涙をこぼした。
『香子』
朱雀に声をかけられた。
『熱を』
『はい』
朱雀の熱を受けなければ、とても白虎を受け入れることはできない。先代の花嫁はとてもたいへんだっただろうと思う。白虎に攫われて囚われ、虎に食われるかもしれないという恐怖にさいなまれながら白虎に抱かれていたなんて。
想像しただけで香子は泣きたくなった。
『香子』
朱雀に顔を覗き込まれる。
『大丈夫だ。そなたは張燕ではない』
先代花嫁の名を出され、香子は戸惑った。
『そなたの身体だけではなく、心も守ると誓おう』
その言葉に、香子はどうしてかほっとした。
そうして、香子は白虎に身を委ねたのだった。
『遠慮したのだろう』
張錦飛を見送ってから、香子は首を傾げて疑問を口にした。玄武が喉の奥でクククと笑う。珍しいと香子は思った。
『遠慮、ですか……』
『我らは四神同士には嫉妬はせぬが、人には向ける故な』
『張老師はお年寄りですよ』
『それでも”男”には違いあるまい』
それはそうだけど、と香子は苦笑した。
そういえば香子も、七十過ぎても八十過ぎても男性は現役の人もいると聞いたことはあった。まして玄武は千歳を数えている。人とは見た目も身体の衰えも寿命も違うが、張のことは年寄りとは見ていないのかもしれなかった。
『そうですね。でも、私が書を習うことを止めないでいてくれる玄武様方はとても優しいです』
四神の嫉妬がどれほどのものかは香子にはわからない。だが四神宮の主官である趙にも香子を合わせたくないほどだ。張に対しても言いたいことはあろう。
だからそう言って、香子は玄武に微笑みかけた。
『香子、そなたが愛しくてならぬ……』
『まだ夕飯前です……』
玄武の室へ移動する途中の渡り廊下で、香子は玄武に口づけられた。こんな、誰に見られるかわからないところで唇を合わせるなんてそうそうない。
「んっ……」
しかもただ唇を重ねるだけの口づけではなかったから、香子は身を震わせた。
『……そなたが愛しくてならぬ。夕飯には間に合わせる故、舐めさせよ』
『やっ……』
玄武は強引に香子を室に運び、床に押し倒すと宣言通りに香子を愛でたのだった。
四神の愛は重い。
香子はしみじみそう思う。
胸の大きさは固定してもらわないといけないし、まだ玄武の領地へも行っていない。白虎の眷属である白風は女官である延夕玲や楊芳芳に教育され、四神の花嫁という存在がどういうものなのか理解し始めたようである。正しく認識できていなかったというのはよろしくはないが、眷属は元々己の神が一番である。花嫁を見たことがない者も多いので、それはしかたがないことなのかもしれなかった。
黒月が扉の前に控えていてくれて本当によかったと香子は思う。
そうでなければ白風と喧嘩になっていたかもしれない。黒月は香子の守護であると自分で決めているから、他の者が香子に失礼な物言いをすることが耐えられないのだ。
(黒月自身、私にはけっこうな塩対応だけどなー……)
黒月がショックを受けそうなので、香子は口には出さない。
『どうしよう……』
人のことなど気にしている場合ではなかった。
目下の悩みはたわわな胸である。
胸が脂肪の塊だということを香子も知ってはいるが、こんなに重いものだとは知らなかった。そうでなくても白虎がたわわな胸を好きすぎるということもあって、すでにとんでもない大きさになっていると香子は思う。おかげで衣裳も多少仕立て直すことになってしまったみたいだ。
(何事にも限度ってものがあるよね)
夕飯の後茶室でお茶をした際、香子は思い切って聞いてみた。
『三日か』
『そなにかかるのか?』
『長いですな』
胸の大きさの固定について話せば、玄武、朱雀、青龍がそれぞれ反応した。四神同士でも知らないことはあるらしい。
白虎は元々嫉妬深く、先代も先々代も花嫁を得た後は決して領地から出さなかったから、事情を知らないのも無理はなかった。そう、四神同士は嫉妬をしないという話ではあったが白虎は例外なのである。
『三日は抱き続けぬと決めることができぬ』
白虎が当たり前のように言う。
『どなたかが付いていてもいいのですよね?』
香子は不安になって白虎に聞いた。
『それはかまわぬ。むしろ共にいてくれねば困るな』
『そうだな。我と朱雀とで交替して見守ろう』
玄武と朱雀は頷いた。青龍もそれでいいらしい。正直香子としては勘弁してほしかったが、更に胸が大きくなってしまうのは困るのだ。ため息をつき、香子もまた了承した。
一番の問題は香子の食事である。
それらの問題もどうにかクリアし、とうとう白虎の室に籠ることとなった。
香子としては逃げ出したい心境である。白虎のことは好きだし、本性ももふもふで美しいとは思っているが、その虎の姿に抱かれるのはどうしたって恐ろしいのだ。これはもう人の本能であるからしかたない。
床に優しく降ろされる。香子の身体は震えていた。
『白虎様』
『如何した?』
『本当に……三日も抱かれ続けないといけないのですか?』
『何度も伝えたであろう?』
『そうですけど……』
『……そなたが怖がる理由もわかっているつもりだ。できるだけ優しくする故、我に身を委ねよ』
香子はポロリと涙をこぼした。
『香子』
朱雀に声をかけられた。
『熱を』
『はい』
朱雀の熱を受けなければ、とても白虎を受け入れることはできない。先代の花嫁はとてもたいへんだっただろうと思う。白虎に攫われて囚われ、虎に食われるかもしれないという恐怖にさいなまれながら白虎に抱かれていたなんて。
想像しただけで香子は泣きたくなった。
『香子』
朱雀に顔を覗き込まれる。
『大丈夫だ。そなたは張燕ではない』
先代花嫁の名を出され、香子は戸惑った。
『そなたの身体だけではなく、心も守ると誓おう』
その言葉に、香子はどうしてかほっとした。
そうして、香子は白虎に身を委ねたのだった。
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