異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
577 / 652
第4部 四神を愛しなさいと言われました

125.四神全ての花嫁なのです

しおりを挟む
 侍女たちがやってきて、嬉々として香子の髪型や衣裳を整えて戻っていった。
 居間でお茶を淹れてもらい、ほっと一息ついたところで白虎が迎えにやってきた。
 それなりにいいタイミングである。四神間で連絡をしているのか、それとも侍女や眷属が香子の動きをよく見て報告しているのかどうか、香子は知らない。知ったところでどうするのだという思いもあり、香子も特に聞いたりはしなかった。

『白虎様』
香子シャンズ

 白虎は一度香子を抱き上げ、そのまま長椅子に腰かけた。
 侍女が白虎にも茶を淹れる。白雲は長椅子の脇に控えた。
 香子は無意識で白虎の胸に顔を擦り寄せた。

『……そなにかわいいことをすると、襲ってしまうぞ』
『……だめです』

 すぐにエロい方向へ持っていこうとする、と香子は膨れた。その頬を白虎が撫でる。
 こういう、穏やかな甘い時間が香子は好きだ。四神も香子とくっついていることで満たされるようで、やはり四神と花嫁というのは対なのだなと香子も思う。

(でも四神は四人で、花嫁は一人なんだよねぇ)

 花嫁の負担が大きすぎるのではないかと常々香子は思っている。だが香子の身体もまた人ではなくなっているので、四神の愛を存分に受け止めることができてしまう。
 それに、四神はまっすぐだ。
 本当に香子以外見ていないから、溢れんばかりの愛情で満たされるのがわかってしまう。

(以前は……こんなに素直に受け取れなかったのに……)

 お茶を啜りながら、香子はこの一年をぼんやりと振り返った。四神はずっと香子以外見ていない。気持ちが変化したのは香子の方である。
 よくわからないまま触れられて、混乱し、元の世界の倫理観に翻弄され、だが香子は四神を受け入れた。
 香子はため息を吐いた。

『香子、如何した?』
『……私の身は一つですから悩みが多いのです……』

 白虎が喉の奥でクククと笑った。

『ならば……攫ってしまうか』

 部屋にいる者たちがぎょっとした顔をする。
 香子は笑った。

『白虎様、だめですよ。そんなことをしたら嫌いになってしまいます』
『……それは困るな』

 実際には嫌いになどならないだろうと香子は思う。攫われたら攫われたで納得して白虎の領地にいるに違いない。ただ、領地の料理事情だけは改善してもらいたいとは思う。

『……白虎様に攫われたら、花嫁様は白虎様をお嫌いになるのですか!?』

 それに反応したのは白風だった。そういえば面倒くさいのがいた、と香子は思い出した。

『白風、控えよ』

 白雲が窘める。

『いいえ、黙ってはいられませぬ。花嫁様は白虎様と愛し合っていらっしゃるはずです。なのにどうして……』
『黙れ』

 白虎が低い声を発した。

『……白雲、その粗忽者を領地に帰らせろ』

 それは眷属にとってクビ宣言に他ならない。白風は青ざめた。

『白虎様』

 香子は白虎の腕に触れた。

白風バイフォンは白虎様の眷属ですからそう思ってしまうのもしかたありません』
『香子』
『ですが私は四神の花嫁です。私の夫は白虎様だけではないのですよ』

 これは白風に伝えた。

『……そ、それは重々承知して……』
『そなたが納得しようがしまいが、私が四神の花嫁であることに代わりはない。これ以上白虎様に恥をかかせるつもりなら領地へ帰りなさい。私にしっかり仕えるつもりなら、その軽率な言動を改めなさい。いいですね?』
『た、たいへん申し訳ありません!』

 白風はその場に伏した。
 眷属は己の神が一番であるが故に暴走してしまうものである。暴走しなくても己の神をけしかけるようなこともあるので注意が必要だ。
 楊芳芳は静かに平伏した。白風を止められなかったことを詫びているのだろう。香子は気にするなと手をひらひらした。
 例えここに延夕玲がいたとしても白風を止めることはできなかっただろうと香子は思うのだ。彼女たちはよく白風を教育してくれているようだが、眷属と人というのはのである。まして女性の眷属は数が少ないので特に蝶よ花よととても大事に育てられている。
 黒月は今でこそ香子の守護であると香子を一番に考えてくれているが、そんなことはめったにないのだ。

『白虎様、室に連れて行ってくださいませ。もふもふしたいです』
『そなたは……』

 白虎は苦笑したが、香子を抱いたまま立ち上がり、香子の望むようにした。


 白虎の室に移動して、香子は深くため息を吐いた。

『玄武兄を呼んだぞ』
『ありがとうございます』

 昼間であっても、白虎がその本性を現わすと理性を保つのが難しい。その為、必ず誰かが側にいるようにしている。その気遣いがありがたいと香子は思っていた。
 寝室に移動して、白虎はそっと香子をベッドに下ろす。そうしてから本性を現わした。

『……素敵です……』

 香子はうっとりと呟いて、その美しい真っ白の毛皮にダイブした。

(はー……もふもふ……もふもふー……)

 香子にとって至福のひと時である。この姿の白虎に抱かれるのはいつだって怖いが、こうして寄り添ってくっついて撫でさせてもらうのは幸せだった。

『なかなかに複雑ではあるな……』

 本性を現わすと白虎の声は更に低くなる。それをうっとりと聞きながら、香子は白虎を堪能した。
 いつのまにか玄武が来ていたことも気づかなかったほどである。

(最高の癒し……)

 だがやはり、白虎の領地に向かう決心はつかなかった。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

処理中です...