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第4部 四神を愛しなさいと言われました
136.ちょっと寄り道をしてみます
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早めに夕飯を用意してもらい、食べ終えたらもう香子は囚われてしまった。
玄武と朱雀によって、である。
さすがに白虎と青龍は遠慮したが、『玄武兄の領地から戻ってきたら、な』と言われてしまい、香子は震えた。
拒否することはできない。香子の言は、四神を傷つけてしまった。
それがわかっているから、香子は玄武の胸に顔を伏せた。恥ずかしくて頷くこともできなかった。
玄武の寝室に運ばれて、床にそっと降ろされる。
それはまるで大事な宝物に対するようで。
「あぁあっ……!」
朱雀の熱を受けてしまえば、もうその後は二神に翻弄されるだけだった。玄武の愛はどこまでも甘やかで、朱雀の愛は少し意地が悪い。けれどそんな彼らが好きでたまらなくて、香子は身を委ねることしかできなかった。
そうして翌朝、朝食の後出かける支度をした。
香子は玄武の領地へ移動する。
一泊だけだが、どんな場所なのか香子はとてもわくわくしていた。黒月も共に向かうことになっている。
今回は途中、秦皇島の紅児の義理の両親に手紙などを届けることになっていた。紅児は花嫁様に運ばせるなどとんでもないと恐縮していたが、どうせ玄武の移動は一瞬なのだからかまわないと香子は思った。
もちろん紅児の伴侶である紅夏が向かってもいいのだが、往復でどうしてもそれなりに時間がかかる。一日で往復できないことはないが、朝早く出て行って、夜戻ってくるような状態だ。それでは紅児が切ないだろうと、今回は香子が買って出た。
『花嫁様、ありがとうございます』
珍しく紅夏に礼を言われてしまい、香子は微妙な顔になったがそれは余談である。
そんなわけで黒月に紅児と紅夏からの荷物を持たせた。香子は玄武の腕に抱かれ、黒月の漢服の袖を掴む。そうすることで黒月も共に跳べるからだ。
『花嫁様、お気をつけて』
見送りには紅児もいて、泣きそうな顔をしていた。今生の別れではないのだから止めてほしいと香子は思ったりした。
みなに見送られて、玄武が移動する。
一瞬で全然別の場所に着いたので、香子は目を白黒された。
わかっていても、この移動方法はどうなっているのかと思うのだ。
『ここは……』
『そなたの侍女が住んでいた村のはずだ』
『探して参ります。しばしお待ちを』
黒月は大きな荷物を抱えたまま、どこかの家の扉を叩いた。家は点在していて、隣接はしていない。そしていくつか畑が見えた。
如何にも田舎という風情である。土の道は広い。人があまり住んでいないことが窺えた。
『聞いて参りました。ここは村の端で、もう少し西へ向かうと店が並んでいる通りがあるそうです』
『黒月、ありがとう』
黒月が戻ってきて伝えた。
『では参ろう』
『はい』
玄武が香子を抱いたまま悠然と歩く。視線を感じて香子がそちらを見れば、家の扉から人の顔が覗いている。いったい誰が来たのかと思ったに違いない。家は点在しているとは狭い村である。どの家からも好奇の視線が届いて、香子は少しむずがゆかった。
しかも彼らはこっそりではなく、しっかりこちらを見ているのだ。
(そういえば、内モンゴルに行った時もこんな視線を浴びたなぁ……)
友人と旅行に行った時、旅行会社の段取りが非常に悪くて駅でかなり待たされたのだ。その間じーっと人々に見られていたことを香子は思い出した。
そっと、ではなくじーっと見ているのが面白いと香子は思う。玄武も黒月も気にしてないようなので、香子も気にしないことにした。
とても天気のいい日だった。
ちぎれたパンのような雲がところどころ浮かんでいる他は、真っ青な空が広がっている。高い建物がないから360°見渡せた。
『キレイな空……』
『香子は空が好きだな』
『はい、好きです』
自然が好きというわけではないが、香子は空を見上げるのが好きだった。
雑草が生えている。花も咲いていたりして、春から夏に向かう頃なのだなと香子は思ったりもした。
玄武が歩いていくと、やがて建物が少し集まっているような場所が見えた。紅児の義両親が営んでいる店は村の端にあると聞いていた。
金物屋や雑貨屋などがポツンポツンとある通りをまっすぐ進めば、ごはんを食べさせる店も見つけた。
『一番端の、あの店ですかね?』
『そうやもしれぬな』
店の外にも椅子と卓が置かれていて、客が一人腰かけていた。
小吃店(軽食のある店)だと紅児から聞いていたその店は、本当に小さかった。紅児の義両親は店を広げたりはしなかったらしい。
店の中から少年が椀を持って出てきた。
その少年に客が金を渡す。
『まいど~』
そう言って店内に戻ろうとする少年に、黒月は声をかけた。
『すまぬが、この店は馬紅児が住んでいたところだろうか?』
『えっ!?』
少年は振り向いて黒月を見ると絶句した。
きっとその美貌に驚いたのだろうと香子は思う。少年の顔はみるみるうちに赤くなった。
『? どうした? 具合でも悪いのか?』
黒月は困ったように首を傾げた。
『い、いえ! そ、そうです! て、ててて店主を呼んできます!』
『頼む』
少年は慌てたように店の中へ駆けこんだ。こけなきゃいいけど、と香子は思ってしまったのだった。
玄武と朱雀によって、である。
さすがに白虎と青龍は遠慮したが、『玄武兄の領地から戻ってきたら、な』と言われてしまい、香子は震えた。
拒否することはできない。香子の言は、四神を傷つけてしまった。
それがわかっているから、香子は玄武の胸に顔を伏せた。恥ずかしくて頷くこともできなかった。
玄武の寝室に運ばれて、床にそっと降ろされる。
それはまるで大事な宝物に対するようで。
「あぁあっ……!」
朱雀の熱を受けてしまえば、もうその後は二神に翻弄されるだけだった。玄武の愛はどこまでも甘やかで、朱雀の愛は少し意地が悪い。けれどそんな彼らが好きでたまらなくて、香子は身を委ねることしかできなかった。
そうして翌朝、朝食の後出かける支度をした。
香子は玄武の領地へ移動する。
一泊だけだが、どんな場所なのか香子はとてもわくわくしていた。黒月も共に向かうことになっている。
今回は途中、秦皇島の紅児の義理の両親に手紙などを届けることになっていた。紅児は花嫁様に運ばせるなどとんでもないと恐縮していたが、どうせ玄武の移動は一瞬なのだからかまわないと香子は思った。
もちろん紅児の伴侶である紅夏が向かってもいいのだが、往復でどうしてもそれなりに時間がかかる。一日で往復できないことはないが、朝早く出て行って、夜戻ってくるような状態だ。それでは紅児が切ないだろうと、今回は香子が買って出た。
『花嫁様、ありがとうございます』
珍しく紅夏に礼を言われてしまい、香子は微妙な顔になったがそれは余談である。
そんなわけで黒月に紅児と紅夏からの荷物を持たせた。香子は玄武の腕に抱かれ、黒月の漢服の袖を掴む。そうすることで黒月も共に跳べるからだ。
『花嫁様、お気をつけて』
見送りには紅児もいて、泣きそうな顔をしていた。今生の別れではないのだから止めてほしいと香子は思ったりした。
みなに見送られて、玄武が移動する。
一瞬で全然別の場所に着いたので、香子は目を白黒された。
わかっていても、この移動方法はどうなっているのかと思うのだ。
『ここは……』
『そなたの侍女が住んでいた村のはずだ』
『探して参ります。しばしお待ちを』
黒月は大きな荷物を抱えたまま、どこかの家の扉を叩いた。家は点在していて、隣接はしていない。そしていくつか畑が見えた。
如何にも田舎という風情である。土の道は広い。人があまり住んでいないことが窺えた。
『聞いて参りました。ここは村の端で、もう少し西へ向かうと店が並んでいる通りがあるそうです』
『黒月、ありがとう』
黒月が戻ってきて伝えた。
『では参ろう』
『はい』
玄武が香子を抱いたまま悠然と歩く。視線を感じて香子がそちらを見れば、家の扉から人の顔が覗いている。いったい誰が来たのかと思ったに違いない。家は点在しているとは狭い村である。どの家からも好奇の視線が届いて、香子は少しむずがゆかった。
しかも彼らはこっそりではなく、しっかりこちらを見ているのだ。
(そういえば、内モンゴルに行った時もこんな視線を浴びたなぁ……)
友人と旅行に行った時、旅行会社の段取りが非常に悪くて駅でかなり待たされたのだ。その間じーっと人々に見られていたことを香子は思い出した。
そっと、ではなくじーっと見ているのが面白いと香子は思う。玄武も黒月も気にしてないようなので、香子も気にしないことにした。
とても天気のいい日だった。
ちぎれたパンのような雲がところどころ浮かんでいる他は、真っ青な空が広がっている。高い建物がないから360°見渡せた。
『キレイな空……』
『香子は空が好きだな』
『はい、好きです』
自然が好きというわけではないが、香子は空を見上げるのが好きだった。
雑草が生えている。花も咲いていたりして、春から夏に向かう頃なのだなと香子は思ったりもした。
玄武が歩いていくと、やがて建物が少し集まっているような場所が見えた。紅児の義両親が営んでいる店は村の端にあると聞いていた。
金物屋や雑貨屋などがポツンポツンとある通りをまっすぐ進めば、ごはんを食べさせる店も見つけた。
『一番端の、あの店ですかね?』
『そうやもしれぬな』
店の外にも椅子と卓が置かれていて、客が一人腰かけていた。
小吃店(軽食のある店)だと紅児から聞いていたその店は、本当に小さかった。紅児の義両親は店を広げたりはしなかったらしい。
店の中から少年が椀を持って出てきた。
その少年に客が金を渡す。
『まいど~』
そう言って店内に戻ろうとする少年に、黒月は声をかけた。
『すまぬが、この店は馬紅児が住んでいたところだろうか?』
『えっ!?』
少年は振り向いて黒月を見ると絶句した。
きっとその美貌に驚いたのだろうと香子は思う。少年の顔はみるみるうちに赤くなった。
『? どうした? 具合でも悪いのか?』
黒月は困ったように首を傾げた。
『い、いえ! そ、そうです! て、ててて店主を呼んできます!』
『頼む』
少年は慌てたように店の中へ駆けこんだ。こけなきゃいいけど、と香子は思ってしまったのだった。
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