異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

158.花嫁の部屋にいる面々もたいへんです(後半は香子視点)

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 白虎に送られて戻ってきた香子の様子に、白風はご機嫌だった。
 けれど青龍が香子を迎えに来たことで、白風は少し不機嫌になった。
 四神の花嫁が四神全ての花嫁だということを白風も知っている。だがそれに納得がいくかと聞かれれば答えは否だった。
 白風は白虎の眷属であるから、白虎びいきなのはしかたがない。しかしそれが態度に出るのは問題である。紅児は部屋付きの侍女の立場なのでそんな白風を見ても何も言わないが、延夕玲は違った。
 青龍が香子を抱いて部屋を出た後、夕玲は白風に向き直った。

白風バイフォン、貴方のその振舞いは目に余ります。青龍様が寛大な御方でなければ、苔刑(鞭打ち刑)にされてもしかたない不敬ですよ』

 それに白風はフンと鼻を鳴らした。
 大した態度である。

『青藍様に愛されているからといって随分な態度ですね』

 それを言いたいのはこちらだと夕玲と楊芳芳は思う。四神の眷属は確かに治外法権だが、四神宮で香子に仕えると決めた時点で序列というものが生まれる。
 黒月は香子の守護だと明言しているので、香子に仕えているわけではないというのが黒月の主張である。黒月は香子に仕えているのではなく、自分の意思で以て玄武に一生香子を守ると誓っているのだ。
 だが白風はそうではない。香子に仕えることで白虎の素晴らしさや白虎の領地のよさを伝えるという目的がある。かくして、筆頭女官である夕玲と、女官である楊に逆らってはいけないのだ。紅児やもう一人の部屋付きの侍女はそれをよく理解しているので黙っていた。
 が、内心紅児は、

(どうしよう……)

 と冷汗は搔いていた。

『青藍様は関係ありません。ここは四神宮であり、貴方は花嫁様に仕える身です。立場はそこな部屋付きの侍女と同等です。何度も伝えているはずですが、まだ理解できないのですか?』
『……我は白虎様の眷属ぞ……』
『そのことを主張されるのでしたら白虎様にお仕えなさい』
『……そのようなこと、許されるはずがなかろう』
『ならば眷属の立場を主張してはなりません』

 白風は立場というものがあまりよく理解できていなかった。そもそも白風は女子であり、眷属の中では蝶よ花よと大事に育てられている。四神の眷属は館を出て人と交流する者もいるが、基本は館から出ず一生を四神の世話に費やす者がほとんどだ。
 だから白風はどこまでも箱入りで、世間知らずであった。
 故に、何度夕玲に窘められても白風は理解できなかったのである。
 その会話は当然ながら香子の部屋の外に丸聞こえであった。
 香子が青龍と過ごすのであれば黒月が付いていく必要はない。なので黒月は香子の部屋の前に控えているのだが、白風と夕玲のやりとりを聞き、頭が痛くなった。

(我も、一歩間違えばあのようになったのだろうか)

 黒月は考える。
 そして、さすがにヒートアップし始めた彼女たちを止める為に香子の部屋に足を踏み入れたのだった。

 *  *

 そんなことになっているとは全く知らない香子は青龍によって書のスパルタ指導をされ、へろへろになっていた。
 昼食の前にまた着替えをする為に部屋に戻された香子は、居間が険悪な雰囲気に包まれていることに気が付いた。

夕玲シーリン、どうかしたの?』
『何もございません』

 珍しく夕玲は笑みを浮かべきっぱりと答えた。それを聞いて、香子は触れてはいけないことらしいと理解した。
 夕玲も楊も女官としてのプライドはとてつもなく高いのである。
 そして珍しく、白風の表情は凪いでいた。それを見て香子はピンと来たが、もちろん何も言わなかった。
 着替えの後一度室に戻っていた青龍がやってきて、香子を抱き上げて食堂へ向かった。香子が自分の足で歩くことはもうできそうもなかった。
 午後は張錦飛が来て、青龍が見守る中香子は書を習った。さすがに張が指導している際、青龍が口を挟むことはなかった。

『ほう……上達しておりますな』

 張は感心したように言うと顎鬚を撫でた。

『青龍様が付き合ってくださいますので……』

 香子は正直に答えた。どうしてもお手本を見ながら一人で練習するのは限界がある。

『それはよろしゅうございました!』

 張はほっほっほっと笑った。その笑い声を聞いて、香子はやっぱりバ〇タン星人なのかなと思う。
 書を習った後、香子は青龍に席を外してほしいと頼んだ。

『何故か?』
『張老師と話がしたいのです。この場に四神がいられると都合が悪いので、少しの間室に戻っていてください』

 香子はきっぱりと答えた。

『我は片時もそなたと離れていたくはないのだが』
『私は元々人なので、そんなにずっとくっつかれていたら嫌になってしまいます』

 その会話を聞きながら、張は笑いが止まらないようだった。香子は内心失礼な、と思ったが、張が笑う理由もわからなくもないので咎めはしなかった。
 どうにか青龍を追い出し、香子は侍女にお茶を淹れさせた。

『見苦しいところをお見せしました』
『いやいや、四神の愛は深うございますな』
『そうですね……』

 張が言っていることは間違ってはいない。香子もそれが四神という存在だということも理解している。
 それでもたまにため息を吐きたくなってしまうのだった。
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