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第4部 四神を愛しなさいと言われました
159.愛しいと思っていることは間違いない
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香子が張錦飛に話したかったのは、主にこれまでのお礼である。
張が香子と歴史談義をしてくれたこと、書を教えてくれたこと。そして四神の神官にも関わらず四神との関係について助言をくれたことについてだった。
張はほっほっほっとまたバルタ〇星人のように笑った。
『花嫁様はほんに律儀でございますな』
『? 人として当然のことだと私は思っていますが』
『そうですな。それが人というものです。ならばこの宮廷に仕える者たちは、花嫁様にとって魑魅魍魎のように見えるでしょうな』
すごい言葉が出た、と香子は思った。
『……張老師から見て、現在の皇帝の治世はどうなのでしょう?』
四神宮以外で聞いたら不敬極まりない内容だが、香子はもう人であって人ではない。
『……また答えづらいことを聞かれますなぁ。可もなく不可もなくというところでしょうか。花嫁様のおかげで気候も安定し始めましたのでな。まだしばらく太平の世は続くと思われます』
『そうですか』
それならばいいと香子は思う。
とはいえ、香子が四神の誰かの領地に向かってしまえば、国に何が起こったとしてももう関係はない。四神は己が領地は守るだろうが、それ以外は手出しをしないだろう。香子が望まなければ。
『一月後、いえもう一月弱ではありますが、どなたかの領地へ向かう予定です』
『とうとうですか』
『はい』
『そうしていただけるとわしらも助かります』
張は嬉しそうだった。張は四神の神官だから余計にそう思うのだろう。
『ですが、もう花嫁様に会えなくなると思うとそれは寂しゅうございますな』
『私も寂しいです。残りの日々でしっかり学ばせていただきたいと思っています』
そう香子が言うと、また張は笑った。
『書を習うのもいいですが、四神と愛を育んでいただきたいものですな』
『……それはどなたかの領地に向かってからします……。今はここでしかできないことがしたいんです!』
『それもそうでございますなぁ』
今日の張はよく笑う。そして小声でこう聞いてきた。
『して……どなたのご領地へ?』
『いいませんよ!』
『それは残念』
張は肩を竦めた。
誰も彼も香子が四神の誰の領地に向かうのか興味津々である。しかし香子からすればすでに婚礼も挙げているのだから、その時に言ったからといってどうなるものでもないと思っている。皇帝や宮廷の人々がどう思っていようと、香子はもう自分には関係ないと考えていた。
侍女がお茶にお湯を足した。
『……そんなに知りたいものですか? 私はもう四神に嫁いでいますよ』
『そうでしたな』
神官は神官で数々の思惑があるのかもしれないが、それも香子には関係ないことである。
『わしの、ただの好奇心でございますよ』
『申し訳ないのですが、当日まで言うつもりはありません』
『慎重ですな』
『ええ』
香子はため息を吐く。
『張老師は理解してくださると思いますが、きっと私がだれだれの元に行くと言った瞬間にその方の領地に連れ去られる未来しか見えないのですよ』
『言い得て妙ですな』
張はなるほどと言うようにうんうんと頷いた。
『……ここでもいろいろありまして、私はまだこの王城内を堪能していないと思うんです』
『王城内を堪能、でございますか……』
『ですから回れるところは回ってそれなりに満足してから覚悟を決めたいのです!』
張はまた笑い出した。香子としてはそんなにおかしなことを言ったつもりはないのだが、張にとってはおかしかったらしい。爺さんの笑いのツボというのは香子には不明である。
『……花嫁様らしいですな』
張はひとしきり笑った後、目じりの涙を拭ってからそう言った。それもまた香子にとっては疑問だった。
『花嫁様、四神の想いは変わりません』
『はい』
張の改めての言葉に、香子は居住まいを正した。
『花嫁様に対する愛が深くなることはあっても、決してなくなることはございません』
香子は頷く。
『ですから、安心して愛されてください。花嫁様と四神の幸せをわしは願っています』
『……ありがとうございます』
香子は頭を下げた。この老爺にはいろいろ助けてもらった。四神との関係に悩んだ際、助言もしてもらった。香子は張にとても感謝していた。
張を四神宮の出口まで香子は見送った。
まだ張に会う時間はある。少なくとも、1,2回は間違いなく会えるだろう。
『香子』
張を見送ってから振り向くと、そこで青龍が佇んでいた。その姿に香子は胸がわななくのを感じた。
待っていてくれたということが嬉しかった。
『青龍様』
青龍の腕が香子を抱き上げる。香子は嬉しくなって青龍の胸に顔を摺り寄せた。
香子は四神が好きだ。とても選べそうもなかったから、まず四神全員に嫁いだ。それがどれだけ不誠実か香子はわかっていたが、心が千々にちぎれてしまいそうだったから。
そしてそれを四神は受け入れている。
『待っていてくださり、ありがとうございます……』
『ああ……なかなかつらかったぞ』
青龍はそう言ってククッと喉を鳴らした。そして香子を己の室に運ぶ。
居間を通り過ぎ、そのまま寝室へ運ばれるのももう香子は慣れた。気持ちの上ではまだ恥ずかしさは抜けないが……。
床に優しく下ろされ、覆いかぶさってきた青龍の口づけを受ける。
「んっ……」
甘い声が鼻から抜けた。
『……香子、今宵は我と過ごせ。兄らの許可は得た』
『……え……』
青龍を愛しいと香子は思う。けれどまだ夜を共に過ごすことを考えると躊躇してしまうのだった。
張が香子と歴史談義をしてくれたこと、書を教えてくれたこと。そして四神の神官にも関わらず四神との関係について助言をくれたことについてだった。
張はほっほっほっとまたバルタ〇星人のように笑った。
『花嫁様はほんに律儀でございますな』
『? 人として当然のことだと私は思っていますが』
『そうですな。それが人というものです。ならばこの宮廷に仕える者たちは、花嫁様にとって魑魅魍魎のように見えるでしょうな』
すごい言葉が出た、と香子は思った。
『……張老師から見て、現在の皇帝の治世はどうなのでしょう?』
四神宮以外で聞いたら不敬極まりない内容だが、香子はもう人であって人ではない。
『……また答えづらいことを聞かれますなぁ。可もなく不可もなくというところでしょうか。花嫁様のおかげで気候も安定し始めましたのでな。まだしばらく太平の世は続くと思われます』
『そうですか』
それならばいいと香子は思う。
とはいえ、香子が四神の誰かの領地に向かってしまえば、国に何が起こったとしてももう関係はない。四神は己が領地は守るだろうが、それ以外は手出しをしないだろう。香子が望まなければ。
『一月後、いえもう一月弱ではありますが、どなたかの領地へ向かう予定です』
『とうとうですか』
『はい』
『そうしていただけるとわしらも助かります』
張は嬉しそうだった。張は四神の神官だから余計にそう思うのだろう。
『ですが、もう花嫁様に会えなくなると思うとそれは寂しゅうございますな』
『私も寂しいです。残りの日々でしっかり学ばせていただきたいと思っています』
そう香子が言うと、また張は笑った。
『書を習うのもいいですが、四神と愛を育んでいただきたいものですな』
『……それはどなたかの領地に向かってからします……。今はここでしかできないことがしたいんです!』
『それもそうでございますなぁ』
今日の張はよく笑う。そして小声でこう聞いてきた。
『して……どなたのご領地へ?』
『いいませんよ!』
『それは残念』
張は肩を竦めた。
誰も彼も香子が四神の誰の領地に向かうのか興味津々である。しかし香子からすればすでに婚礼も挙げているのだから、その時に言ったからといってどうなるものでもないと思っている。皇帝や宮廷の人々がどう思っていようと、香子はもう自分には関係ないと考えていた。
侍女がお茶にお湯を足した。
『……そんなに知りたいものですか? 私はもう四神に嫁いでいますよ』
『そうでしたな』
神官は神官で数々の思惑があるのかもしれないが、それも香子には関係ないことである。
『わしの、ただの好奇心でございますよ』
『申し訳ないのですが、当日まで言うつもりはありません』
『慎重ですな』
『ええ』
香子はため息を吐く。
『張老師は理解してくださると思いますが、きっと私がだれだれの元に行くと言った瞬間にその方の領地に連れ去られる未来しか見えないのですよ』
『言い得て妙ですな』
張はなるほどと言うようにうんうんと頷いた。
『……ここでもいろいろありまして、私はまだこの王城内を堪能していないと思うんです』
『王城内を堪能、でございますか……』
『ですから回れるところは回ってそれなりに満足してから覚悟を決めたいのです!』
張はまた笑い出した。香子としてはそんなにおかしなことを言ったつもりはないのだが、張にとってはおかしかったらしい。爺さんの笑いのツボというのは香子には不明である。
『……花嫁様らしいですな』
張はひとしきり笑った後、目じりの涙を拭ってからそう言った。それもまた香子にとっては疑問だった。
『花嫁様、四神の想いは変わりません』
『はい』
張の改めての言葉に、香子は居住まいを正した。
『花嫁様に対する愛が深くなることはあっても、決してなくなることはございません』
香子は頷く。
『ですから、安心して愛されてください。花嫁様と四神の幸せをわしは願っています』
『……ありがとうございます』
香子は頭を下げた。この老爺にはいろいろ助けてもらった。四神との関係に悩んだ際、助言もしてもらった。香子は張にとても感謝していた。
張を四神宮の出口まで香子は見送った。
まだ張に会う時間はある。少なくとも、1,2回は間違いなく会えるだろう。
『香子』
張を見送ってから振り向くと、そこで青龍が佇んでいた。その姿に香子は胸がわななくのを感じた。
待っていてくれたということが嬉しかった。
『青龍様』
青龍の腕が香子を抱き上げる。香子は嬉しくなって青龍の胸に顔を摺り寄せた。
香子は四神が好きだ。とても選べそうもなかったから、まず四神全員に嫁いだ。それがどれだけ不誠実か香子はわかっていたが、心が千々にちぎれてしまいそうだったから。
そしてそれを四神は受け入れている。
『待っていてくださり、ありがとうございます……』
『ああ……なかなかつらかったぞ』
青龍はそう言ってククッと喉を鳴らした。そして香子を己の室に運ぶ。
居間を通り過ぎ、そのまま寝室へ運ばれるのももう香子は慣れた。気持ちの上ではまだ恥ずかしさは抜けないが……。
床に優しく下ろされ、覆いかぶさってきた青龍の口づけを受ける。
「んっ……」
甘い声が鼻から抜けた。
『……香子、今宵は我と過ごせ。兄らの許可は得た』
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